移転後の庁舎をおもちゃ美術館へ【気仙沼市】

気仙沼市で「おもちゃ美術館」の計画が進んでいます。令和9年度に移転した後の市役所の一部を活用して、日本で一番広いおもちゃ美術館を目指します。オープンは令和11年度の予定です。その最新情報を報告します。

【県内初、唯一のおもちゃ美術館に】

おもちゃ美術館は東京に運営本部があるNPO法人「芸術と遊び創造協会」が全国展開している木のおもちゃに特化した体験型ミュージアムです。昭和59年に東京で誕生し、現在は全国14カ所に増えました。3カ所はNPOの直営ですが、その他は自治体や企業などによって設置・運営されています。

東北では岩手県花巻市に次いで気仙沼が2例目、宮城県内では初めての施設となります。なお、NPOの方針で1県1施設となるため、気仙沼が県内唯一の施設となり、仙台圏からの集客も期待されます。

【おもちゃ美術館とは?】

「人間が初めて出会うアートは、おもちゃなのではないか」という想いのもと、芸術教育研究所の付属施設されたのが、おもちゃ美術館の始まりです。日本の郷土玩具から世界の木製玩具をはじめ、オリジナルの木製遊具で遊びながら、学び、創造力を育み、0~100歳まで多世代が交流できる施設として人気が広がっています。

おもちゃ美術館をオープンする要件は、
①ウッドスタート宣言の実施
②誕生祝い品事業の導入
③木育関連事業の展開(任意項目)
④施設整備の基本要件のクリア
です。

ウッドスタート宣言は、地域の自治体が東京おもちゃ美術館と連携し、木育推進の意思を表明することです。宣言の必須項目として、誕生祝い品事業と木育円卓会議が挙げられています。

誕生祝い品は地元の木工職人が地域材で作ったおもちゃを赤ちゃんに贈ります。おもちゃは地域の宝や文化をモチーフにしたオリジナルで、東京おもちゃ美術館が監修してデザインなどを支援します。

木育円卓会議は、林業関係者、子育て支援者、自治体職員が集まって地域の木育について議論する場です。

おもちゃ美術館の施設整備は、地域材を活用した内装、遊具、展示品を基本に、赤ちゃんから高齢者まで交流できる空間とします。ボランティアのおもちゃ学芸員制度などで市民参加型で運営すること、林業再生や子育て支援などの地域課題へ対応することが基本要件となっています。

【気仙沼との縁は東日本大震災から】

おもちゃ美術館を展開するNPO法人は東日本大震災の時、自分たちにしかできないことで被災地の子どもたちを元気づけようと「あそび支援隊」を結成。平成23年4月には気仙沼市の本吉町で避難所となっていた仙翁寺をおもちゃ満載で訪れてくれました。

あれから15年。令和8年1月10日、気仙沼市と東京おもちゃ美術館で(仮称)気仙沼おもちゃ美術館設立に向けた連携協定調印式が行われました。あいさつに立ったNPO理事長の多田千尋さんは、当時を振り返りながら気仙沼との縁についてしみじみと語ってくれました。

 

【庁舎活用とともに地域活性化も期待】

縁でつながってはいましたが、気仙沼市がおもちゃ美術館へたどり着く道のりは遠いものでした。

昭和35年に建てられた現在の市役所本庁舎の老朽化が著しく、新庁舎を田中前地区に移転新築させることを令和2年に発表(詳細は新庁舎建設基本計画)した際、市役所が無くなるエリアの活性化に取り組むことを約束しました。そして、令和3年に気仙沼まちなかエリアプラットフォームを設置し、官民で取り組む「気仙沼まちなかエリアビジョン」をまとめ、内湾で朝市開催や海上アクティビティ開発などに取り組みました。

さらに、令和5年7月には三日町八日町・市役所跡地検討ワーキンググループを設置し、令和7年3月に市役所跡地活用基本構想(案)を策定。老朽化した本庁舎(3階建て)は解体して広場にし、平成11年建築のワン・テン庁舎(4階建て+地下1階)は屋内遊び場などとして活用するなどの方針をまとめました。

しかし、ワン・テン庁舎跡施設(共有部分を除く有効面積は約2700㎡)を民間が主体となって利活用を進めていくことは難しく、市が主体性と責任を持って検討していくことになりました。そこで、本吉夢プロジェクト委員会で学校跡施設の活用策として、話題となっていたおもちゃ美術館のアイデアが浮上しました。

【市長が動いて即決】

本吉夢プロジェクト委員会での話題提供者の了解のもと、令和7年4月には市長が東京の本部でNPO理事長と会談し、5月には気仙沼の民間関係者とともに視察を行うなどして理解を深め、7月にはNPOメンバーがワン・テン庁舎などを確認し、計画を進めることで合意しました。12月には市議会に説明があり、報道によって計画が公表されました。

議会への説明(説明資料1資料2資料3)では、活用できる1、2階の半分程度となる面積1000~1500㎡程度の「日本一広いおもちゃ美術館」を視野に、10月に設置していた官民検討委員会で準備を進めます。おもちゃ美術館は公設民営の方針で、有力な運営候補者もこの委員会に加わっているそうですが、委員会メンバーは「非公表」とされています。

おもちゃ美術館だけでなく、残りのスペースの民間活用、本庁舎解体後の広場などを、一帯の整備計画を検討していきます。この跡地活用の検討費用は、令和7年6月の定例議会で4357万円(約半分は地方創生交付金)が予算化されています。

【ウッドスタート宣言も】

令和8年1月には連携協定の締結に合わせて、ウッドスタート宣言(全国66番目)の調印式、移動おもちゃ美術館のイベント開催も行われました。

令和8年度はおもちゃ美術館の構想や設計を進め、令和9年度に運営法人の設立、令和10年度に工事着手、令和11年度にワン・テン庁舎部分のオープン、令和12年度に広場を含む全体のオープンを目指します。令和11年度から誕生祝い品の贈呈も始める予定です。

【築117年の木造庁舎。利活用策なければ解体】

明治42年に建築された木造の第2庁舎は、利活用の事業アイデアを募集しています。一時は解体を決断しましたが、地域の要望を受け、最後のチャンスとして、自ら経営する意思があるものに限り、令和8年2月27日(必着)で公募しています。詳しくは市ホームページをご覧ください。

なお、解体する場合でも、部材をおもちゃ美術館に活用したり、広場に小建物として再築する可能性もあります。

【残りのスペースは地域集会所や多機能スタジオを検討】

ワン・テン庁舎の利活用策についても募集しています。こちらも自ら事業展開することが条件です。

市役所跡地活用基本構想(案)=下図=では建物の利用イメージとして、フリー学童、中高生の自習場所、地域集会所、地域食堂、気仙沼クラフト(製造+販売+体験)、地産ストアなどのアイデアが出ていました。

庁舎跡地・跡施設利活用策公募要項によると、市としては地域集会スペースの確保、子どもから高齢者まで活用できる多機能スタジオの整備などの構想を練っているそうです。

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