気仙沼市は基金の債券運用を初めて開始します。まずは積立額が100億円を超えた市営住宅基金を活用し、20億円の債権を購入します。定期預金に比べると10倍の利息を受け取ることができます。
■残高100億円超の市営住宅基金を活用
「基金」は目的別に積み立てが必要な場合、条例の定めによって設置されます。気仙沼市では21の基金があり、令和5年度末の残高は計255億円となっています。
かつてはリアス・アーク美術館を運営する広域組合のように、基金の利息を事業費とする「果実運用型」もありましたが、低金利時代となってからは庁舎建設基金のように目的のために積み立てたり、市町合併時の地方債を活用した地域振興基金のように原資が明確なものが多くなっています。
財政が厳しい状況では基金の運用は考えにくいのですが、震災後に状況が変わりました。災害公営住宅に対する国からの潤沢な補助金により、市営住宅基金が膨れ上がり、建設時の借金を完済しても、昨年7月現在で104億円に達しました。
市営住宅基金は、災害公営住宅の将来の解体費などとして積み立てているため、しばらく大きく取り崩す予定はありません。このため、議会で再三取り上げたうえで、令和5年12月の一般質問で基金の運用を求めたところ、債券運用を検討するという回答がありました。このときの答弁では、定期預金の年利は0.002%(100億円で20万円)ですが、個人向け5年国債だと0.25%(100億円で2500万円)という大きな差が説明されました。
■安全性確保へ債券運用方針を策定
基金の運用に向けて、令和6年9月に安全性に重きを置いた債券運用指針を策定しました。運用対象とするのは国債、地方自治体が発行する地方債、政府機関が発行する政府保証債を原則とし、金利変動のリスクを平準化するために運用期間(最長20年)を分散させることとしました。また、年度ごとに運用方針を定め、副市長をトップとした基金運用会議で購入する債券を選定し、台帳によって管理して成果を議会へ報告します。
■20億円の運用で利息は1.7億円
令和6年度は市営住宅基金から20億円を運用します。年利1.242%と1.286%の10年債を5億円ずつ、年利0.912%の仙台市公募債権を10億円で購入する予定です。満期運用で得られる利息は計1.7億円で、定期預金(0.125%)の約10倍になるそうです。
毎年の利息はルール通り基金に戻しますが、市営住宅基金の積み立て方を工夫することで、利息相当額を一般財源にします。要約すると、利息相当額が自由に使える財源になるということです。
なお、債券は人気のため、事前に予約できないと購入できないそうです。しかも、事前には利率が分からないため、国債から予想して予約します。購入単位も1億円以上のため、購入のタイミングがポイントになります。
■「運用しない方がリスク」と市長
令和7年度以降も新たな債券運用に取り組みます。まだ積み立てが増えていく市営住宅基金が対象となりそうです。なお、債券運用のリスクについてですが、基本的には額面での購入になるので満期まで保有していれば問題ありませんが、途中で売却が必要になると、市場価格によっては額面以下での取引になる可能性はあります。
このことについて、菅原市長は「運用しない方がリスクだ」と説明。また、条例上は債券運用できる基金が他にもありますが、90億円超のふるさと応援基金(ふるさと納税寄付金を積み立て)については制度の趣旨からすると債券運用にふさわしくないとする考えを示しました。
※市議会への説明資料はこちらです⇒基金の債券運用について