水道料金 改定案公表から1カ月で即決【緩和策提案】

気仙沼市の水道料金の値上げ案が固まりました。

これまでは平均23.32%の引き上げ案が示されていましたが、大幅な値上げに市民や事業所から不安の声が出たため、2段階に分けて引き上げる内容に修正しました。さらに大口利用者のための緩和策として、引き上げ率を1/4~1/2に抑えることにしました。

この内容は4月26日のガス水道事業運営審議会で承認されました。市議会で承認されれば、今年11月請求分から適用されます。

内容が分かりにくいのに、市民や事業所への説明会がないまま、案の公表からわずか1カ月で決まったので、その経過などを含めて報告します。審議会資料は市のホームページに掲載されています。

【大幅値上げを緩和する修正案を提示】

料金改定の当初案は3月17日の審議会で示されました。一般家庭だと月1000円前後の値上げとなる内容でした。当初案や値上げの理由などは、3月20日のブログをご覧ください。

この審議会での意見、経済団体からの要望を受けて再検討し、市は4月26日の審議会で修正案を示しました。

修正の理由を①23.32%を一度に引き上げると市民が抱く負担感が大きい②新型コロナの影響で地域経済が停滞している、と整理しました。そして、段階的な値上げと大口利用者への配慮策を加えました。

【23%の引き上げ幅を半分ずつ段階的に】

段階的な値上げとは、今年11月請求分から半分値上げして、残りは令和5年4月分から値上げする方法です。

平均的な家庭(口径13㎜・使用水量20㎥)だと現行は月3278円(税込み)ですが、11月請求分から3674円、令和5年4月から4059円となります。

この緩和策により、令和7年度末までの期間で当初案よりも2億2567万円の減収となります。

【1000㎥超の使用量には緩和策】

大口利用者を対象にした緩和策は、二段階目の値上げとなる令和5年4月から使用水量について、月1000㎥を超える分の引き上げ率を半分まま据え置きます。

例えば、口径100㎜の水道管を利用する事業所が月3000㎥使用した場合の従量料金は、現行だと1㎥当たり261円(税抜き)です。10月からは段階的値上げの考えと同じように約11%引き上げて292円にします。令和5年4月以降は323円に値上がりしますが、1000㎥を超える分は値上げしないで292円に据え置くという内容です。

当初案だと使用量に関わらず、今年10月から1㎥当たり323円に値上げする方針でした。この緩和策によって4606万円の減収となります。

【当日提案で緩和策を拡充】

4月26日の審議会では、さらに緩和策を拡充する案が市から示されました。

1000㎥超の使用料について、第一段階の今年11月請求分から令和4年3月までの値上げ幅も抑えるという内容です。第一段階の値上げは当初考えていた値上げ率の1/4にあたる277円に抑え、第二段階で1/2の292円へと引き上げます。

これで約1000万円の減収となります。

 

【緩和策で2.8億円の減収。令和8年度の見直しが条件】

これらの緩和策によって、目標としていた令和10年度末の現金残高「5億円(運転資金を借り入れなくてもよくなる額)」は「1200万円」に、令和10年度の経常損益が「赤字」になる見通しになりました。

今後の経営が圧迫されるため、市は「今回の水道料金改定は令和7年度末までの料金とし、令和8年度からの料金については余裕を持って見直すことを条件に提案した」と説明しました。

その思いは諮問内容にも込められ、改定後の料金表の期限を「令和8年3月請求分まで」と明記しました。それ以降の料金を据え置くにしても引き上げるにしても、再び条例改正が必要になります。

※以下は緩和策を反映させた経営見通しの資料です

【大口と小口のバランスの研究を約束】

審議会では「(従量料金は)家庭よりも企業の負担が大きい」との指摘があり、市は「差を縮めていく必要性は感じている。今回は1000㎥超の部分で配慮した。令和8年度の見直しへ向けて研究したい」と答弁しました。

産業界代表の委員からは「累積した赤字を7年で減らすことに無理がある」「令和5年度以降の改定率はいま決めなくてもいいのではないか」「決まる前に説明会や意見交換をしてほしい」と要望しましたが、菅原市長は「水源開発は決まった費用で、人件費を削るのも容易ではない。小口と大口のバランスの案作りも簡単ではない。水道事業を続けていくために、令和4年度までしか決めないことは無責任」と理解を求めました。

答申には付帯意見として、「過度な業務用大量使用者への依存は、地元企業の競争力低下につながり、雇用や企業誘致への影響も懸念されることから、次回の水道料金の見直しにおいては、逓増度(※注 たくさん使うほど単価が高くなる割合)について調整の検討を行うこと」としました。

【審議会の次第「その他」で諮問答申という珍事】

記者時代を含めて多くの審議会を経験してきましたが、今回は初めて見る出来事がありました。

審議会では、当局案を諮問する前に説明があり、参考資料に対して質疑をする形になりました。いわゆる諮問前の事前調整です。

調整ができたので、正式に諮問を受けるのですが、その日のうちの諮問は想定していなかったのか次第になかったため、「その他」で料金改定案が諮問されました。

しかし、諮問書は委員に配布されず、質疑もないまま、答申したのです。

修正案は審議会で初めて明らかになりました。大事なことなので、即決せずに、市民や事業者向けの説明会や意見交換会を開いた方が丁寧だろうと思っていたのですが、そのスピードにビックリしました。

3月に案が示されて、わずか1カ月ほどで決めるのは強引です。素案づくりが遅れて、今年4月に予定していた改定が11月請求分に先延ばしになりましたが、ここは丁寧に進めてほしかったです。

今回のことで審議会の在り方や運営にいろいろ疑問を感じたので、別な機会に問題提起したいと思います。

※以下の資料は、料金改定の詳細です

 

 

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