超少子化時代。県立高校はどうなるの?

これまで何度も取り上げてきた県立高校の再編問題。いよいよですが、宮城県の審議会で少子化時代に合わせた高校の在り方について、本質的な議論が始まっています。定員割れが深刻化している気仙沼・本吉地区(気仙沼市と南三陸町)の公立4校はどうなるのか。現状と見通しを報告します。

■気仙沼・本吉地区は定員割れ200人超

高校再編は、県立高校将来構想に基づいて進められます。現在の構想は第3期(2019-2028年度)で、これから蔵王高校や一迫商業高校の分校化、大崎地区の3高校(松山、鹿島台商業、南郷)を統合した職業教育拠点校の新設を計画しています。

気仙沼・本吉地区では2018年度に気仙沼西高校を気仙沼高校へ統合して以降、再編の計画は示されていません。しかし、生徒数の減少は県下でも際立っており、今春は全日制課程の4校合わせて600人の定員に対し、合格者は395人(充足率65.4%)にとどまりました。特に本吉響高校は定員120人に対して入学者は33人、全国募集で成果を出している南三陸高校は2学科の定員計120人に入学者48人でした。

■14年後の中学卒業者は230人。私立、通信制が人気に

気仙沼・本吉地区の中学校卒業者数は2023年で535人でしたが、2038年には230人まで減る見込みです。しかも、授業料無償化によって私立高校の人気が高まり、230人のうち公立高校に進む人は限られてしまいます。

さらに、情報技術の進化や中学校不登校の増加から通信制の進学者が年々増えている影響も受けます。県教委のまとめによると、昨年3月に県内の中学校を卒業した1万9973人のうち921人が通信制に進学しており、14年前の約4倍に増えています。

少子化はさらに進み、全日制の公立高校への進学者が100人程度になる未来はそう遠くはなさそうです。もはや学級数の減少や分校化、統廃合は避けて通れないのです。

なお、生徒の減少はこれまで気仙沼・本吉地区が際立っていましたが、今後の見通しは変化が見られます。中学校卒業者数を2023年と2038年で比較すると、気仙沼・本吉地区はマイナス57%と高いことに変わりありませんが、栗原地区はマイナス64%と上回り、南部地区もマイナス56%と大差なく、全県的な課題となっています。

■新構想は20年後を見据えた指針に

少子化がさらに進む中、宮城県教育委員会は第3期構想の期間を残して、第4期の策定に着手しました。今年2月に県立高校将来構想審議会に諮問し、2026年2月の答申を目指して検討を進めることにしています。

5月30日に開かれた2回目の審議会では、新たな構想の位置づけを「20年後を見据えた学びの姿・高校教育の在り方の指針」と説明。策定に向けた考え方を下記の通り示しました。

①学校の適正規模の考え方をどのように整理するのか
・地域の実情に合わせた適正かつ柔軟な学校規模の検討
・遠隔教育やオンライン学習の導入による場所にとらわれない学習機会の確保
・学校関連携や地域間連携による教育資源の共有による質の高い教育の維持 など

②それぞれの地域の特色を持った学校をどう配置するか
・学際領域や地域社会等に焦点を当てた普通科木養育の強化
・先進的な技術や地域特有の産業に重点を置いた専門教育の強化
・産業界、大学、行政との連携を強化して地域に根差した教育の充実 など

③どんな教育を提供できるか、そのためにはどのような学校が必要とされるのか
・20年後の宮城県の将来像に合致した教育の提供
・技術革新等による就業環境の変化や気候変動などによる環境問題に対応できる教育内容の充実
・生徒の学習意欲を高める教育内容の充実 など

■来年9月に中間案をとりまとめ

審議会で学校配置の考え方について整理した後、4つの部会(学校配置、小規模校の学びの在り方、高校魅力化、多様な学びの在り方)に分かれて検討を進めます。

注目したいのは、重点べきに審議すべき事項として、私立高校との役割整理、中高一貫校の在り方、遠隔教育、スクールバス運行の可能性、市町村立高校の設置の可能性、小規模校における部活動の在り方、学級規模の特例の検討、定時制と通信制の在り方などが示されたことです。

高校の適正規模は1学年4学級以上ですが、県内の県立高68校のうち17校は3学級未満となっており、統廃合だけで課題は解決できないため、小規模校の在り方について踏み込んだ議論が行われるものと思われます。

中間案は来年9月までにとりまとめて公表し、パブリックコメントの募集、地区別意見聴取会を予定しています。

■まさかの転入超過。私立高校に可能性あり

審議会では、私立高校への進学状況、全県一学区制に伴う地区間の流出入に関するデータも明らかにされました。

気仙沼・本吉地区は、2023年の公立高校進学者419人の場合、他地区からの流入は2人だけでしたが、流出は24人(中部と石巻各5人、登米12人など)でした。ところが私立高校も加えた進学者486人で見ると、流入42人、流出35人と逆転しました。転入超過になったのは気仙沼・本吉地区と中部地区だけという快挙でした。

これは地区内唯一の私立である東陵高校の頑張りによるもので、スクールバスを運行したり、寮を用意したりすることで、他地区から生徒を呼び込んでいる成果と考えられます。

私立高校は公立高校に比べて、時代の変化への対応が早く、生徒や保護者のニーズも大切にする傾向があり、今後も人気を維持するものと思われます。その可能性をどのように伸ばしていくのか、地元自治体の支援の在り方についても考えなければなりません。

※【参考】宮城広瀬高校を新しいタイプの学校へ転換する計画は下記の通りです

Leave a Comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *

CAPTCHA


*