「子どもたちの未来へ苦渋の決断」大島中学校の統合に合意【気仙沼市】

気仙沼市立大島中学校を鹿折中学校へ統合することについて、大島の住民が同意しました。2022年4月の統合へ向けて、市議会6月定例会へ条例改正が提案される予定です。

急激な少子化を受けて、気仙沼市では義務教育環境整備計画を2013年6月に策定(2016年5月改定)し、第1~3段階に分けて小・中学校の統合を進めてきました。詳しくは2016年7月の気仙沼復興レポート「小・中学校再編の行方」を見てほしいのですが、5年間で第1・第2段階の対象校9校のうち、月立小を除く8校が閉校となりました。

大島中と鹿折中の統合は、「適正規模と適正配置」を目指す第3段階の対象です。第3段階の対象校の中でも、児童・生徒の少人数化が著しい大島中と鹿折中をはじめ、中井小と唐桑小、小泉小と津谷小などを優先して進めています。

【全校生徒数は26人。60年前の1/17】

大島中での具体的な話し合いは、大島大橋開通4カ月後の2019年8月に保護者からスタートし、大島小5・6年生の保護者、島内の自治会長へとステップアップし、2020年12月からは保護者と地域を対象にした地域懇談会で理解を求めてきました。

橋が開通したことにより、約7㎞離れた鹿折中へ統合する計画で、最初は統合時期を2021年4月と示していました。

統合の理由は生徒の減少です。大島村時代の1947(昭和22)年に開校した大島中は、1962(昭和37)年には全校生徒454人でしたが、2020年には26人まで減りました。毎年の島内の出生数から推計すると、これから10人以下の学年が目立ち始め、2030年には全校でも9人になります。市教委は、集団活動に支障をきたしていること、社会性を磨き、切磋琢磨する環境が弱まっていること、新しい学習が小規模では対応できなくなることなどを統合理由に挙げました。

【部活動も限界に】

地域懇談会では、こうした状況に保護者、地域ともに統合そのものに理解を示す意見が最初から多かったです。

特に部活への影響は深刻で、男子は卓球か野球、女子はテニスとバスケで、団体球技はメンバーの確保が難しくなっています。「娘が吹奏楽をしたいといっているのに1人ではできない」という母親もいました。鹿折中には、男子ならサッカー、バスケ、女子ならソフトテニス、ソフトボールも選択でき、吹奏楽部もあります。

それでも地域から中学校がなくなる不安があり、地域からは「さまざまな体験ができる大島側へ統合することも考えてほしい」「(学区外から入学できる)小規模特認校に指定してほしい」「橋が開通したばかり。移住が増えるかもしれないので少し様子を見てほしい」と存続の可能性を問う意見も多く出ました。

【保護者は苦渋の決断】

地域から慎重論が出る中、統合を後押ししたのは保護者たちでした。

昨年12月の地域懇談会でPTA会長は「全校で26人だけでは大きな行事に参加できず、専門の先生も配置されない。せめて40~50人いてくれれば思う。苦渋の決断だ。学校がなくなる寂しさよりも子どもたちの未来にかけてほしい」と訴えた。副会長も「いつまでも子どもたちを宙ぶらりんにしてはおけないし、後輩に押し付けてもいけない」と早期決断を求めました。

今年に入って1月12日、3月12日と地域懇談会を開き、早期統合へ向かう保護者の意見に賛同する住民が増えていきました。

【人生には多くの友が必要だ。菅原市長が統合決断】

そして年度末ギリギリの3月29日、保護者と住民ら約50人が集まった地域懇談会で、菅原市長が「人生には多くの友が必要だ。その機会をつくることは私たちの責任なのに、機会を失っている状態であることに私は耐えられない。子どもたちの笑顔が大きくなる統合を進めたい」と統合のための条例改正を6月議会に提案することを宣言しました。

これから統合準備会の立ち上げ準備に入るとともに、統合前の子どもたちの交流にも取り組みます。統合準備会ではスクールバスの運行経路をはじめ、校名、校歌、制服などについて話し合います。

大島の名前を校名に残してほしいという意見もあり、市教委は「統合準備会で協議が整えば、その経費は市の負担になる」と説明しています。

このほか、1977年に建設された校舎をはじめとする跡施設の利活用については、統合準備会とは別に地域と話し合っていきます。地域が記念事業実行委員会を立ち上げて記念誌発行や記念碑建立に取り組んでいる事例もあります。

※統合までのスケジュール案は下表の通りです

なお、大島小と鹿折小の統合も計画の第3段階に位置づけられています。大島小は2022年度から複式学級が必要になり、2025年には全学年に拡大する予測となっています。中学校に続いて小学校も統合することには強い反発があると考えられることから、その解決策についても早めに話し合っていくことが必要です。

市教委は地域向けに「地域懇談会だより」を作成して配布し、説明や質疑の内容を報告しています。

 

 

1 Comment

  1. Mr.Peki-chan

    統合しても鹿中は人数規模としても部活の選択肢も淋しいですよね。部活の全員加入制も早晩に是正を求められるはずです、官(文科省・県教委)からも民(生徒・保護者・スポーツ団体・文化団体)からも…。条南→気中の統合は既定路線なのでしょうが、気中→鹿中のほうが…と思えてしまいます。

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