小・中学校の新しい再編計画づくりへ準備開始【6月議会報告②】

気仙沼市議会6月定例会の報告第2弾は、小・中学校の新たな再編計画づくりについてです。準備会の予算が承認されたほか、一般質問でも子育て世代の移住視点での教育環境整備で議論しましたので、その概要をお伝えします。

【地域や保護者ら20人で準備会スタート】

急激な少子化を受け、気仙沼市は平成25年6月に策定した義務教育環境整備計画に基づいて小・中学校の統廃合を第1~3段階に分けて進めてきました。平成28年5月に計画を一部見直しています。

 

 

中井小と唐桑小、条南中と気仙沼中が来年4月に統合することが決まったことで、新計画の策定準備を始めます。現計画で残った3組(月立小と新城小、大島小と鹿折小、階上中と大谷中)は新計画で再検討することにしました。

新計画は、小中学校再編計画検討委員会で検討しますが、その準備会を8-9月に立ち上げ、検討委員会で協議すべき課題を整理します。

【検討委員会へ向けて課題を整理】

課題として考えているのは「通学距離、通学手段の確保、施設整備、統合へ向けた手続き、現計画の課題と解決策、計画立案までの手続き、体制、各校の現況と課題など」と教育長が説明しました。

準備会は、年内に3回開催する予定です。委員は学識経験者、保護者、地域代表ら20人です。その謝礼、職員の先進地視察費用として75万5000円の予算を承認しました。準備会は公開予定です。

審議会に相当する検討委員会の設置には条例制定が必要で、遅くても2月定例会に提案予定です。

【通学の手段に「市の覚悟を」】

市教委は「次の計画においては、小学校の考え方、中学校の考え方はある程度整理したい」と説明しています。教科ごとの教員確保にはクラス数が必要な中学校のさらなる統合は避けられそうにありませんが、通学距離が長くなるため、小学校については無理に統合しないという考えを示唆しています。

菅原市長も「どうしても足の問題がでてくる。そのお金がどうなるのか分からないと議論できないので、どこまで覚悟するか並行して出していきたい」と答弁しています。

現在のスクールバスは、補助金の都合もあって統合してなくなった学校の児童生徒だけを対象にしてきましたが、補助金には期限があり、利用者を他の児童・生徒に拡大したり、一般市民と混乗することも考えられます。なお、気仙沼中と統合する条南中では、登下校に循環バスを利用する準備が進められています。

現在の小・中学校は地域コミュニティと緊密な関係にあり、さらに統合を進める場合は教育だけではなく、地域の在り方についても一緒に議論していく必要があると思いますので、さらに市議会でも議論を重ねていきます。

一般質問では、移住者視点での教育環境について議論しました。詳細は下記の通りです。


【今川悟の一般質問②】

1 学校再編と教育環境の充実について                                    

急激な少子化を受けて、保育所や小・中学校の統廃合は加速し、本吉地区の県立高校では定員割れが深刻化しています。教育環境が悪化すれば、さらなる少子化を招いてしまうため、次の3点について質問します。

 

質問1 本市の保育所や幼稚園、小・中学校について、「気仙沼で子育てをしたい」と思えるように魅力を高め、情報発信することが求められています。新たに移住・定住促進の観点で長所と短所を整理したうえで、保育と教育の環境充実とPRに取り組むことを提案しますが、市の考えを伺います。

 

小山教育長 保育と教育の環境充実とPRについては、妊娠期から子育て期において、切れ目のない子育て支援を実施し、庁内関係課が連携した相談体制の整備や経済的支援等を行っており、ホームページや子育て情報サイト「ぽけっと」において、総合的な情報を発信しています。

学齢期の児童生徒に関しては、確かな学力を育成するために、全教員が教えから学びへと、学習者主体の授業づくりに取り組んでおります。また、地域に根差した子どもが世界で活躍するグローバルな視点を持つために、気仙沼ならではの教育として、持続可能な社会を創るESDや海洋教育、未来につなぐ防災教育に力を入れております。

絶えず変化する社会で、自ら考え、行動を起こす主体性と知・徳・体のバランスの取れた児童生徒の育成に向け、授業を中心とした学びの充実に一層注力するとともに、その取り組みを域外に対してもしっかり発信できるよう努めてまいります。

 

今川 今回は新しい小中学校再編計画の再編計画について質問しようと思っていたのですが、補正予算に準備経費が出てくるので、そちらで議論することにして、それ(新しい再編計画づくり)を前提に移住の視点での教育環境について質問を考えてみました。教育長からの答弁でしたが、(移住に関することなので)市長部局側とも話をしたいです。

教育に関しても子育て支援サイトで発信しているということですが、移住定住支援センターのホームページをチェックしたところ、教育環境のコーナーはあるのですが、今年度から始めた小中学校の給食無償化や第2子以降の保育完全無償化がまだ紹介されていませんでした。せっかくやっていることを発信した方がいい。情報発信についてもっと具体的に検討するべきではありませんか。

 

小野寺震災復興企画部長 ホームページは早速点検して修正したいと思います。PRに関しては、首都圏とか関西圏での子育てに関するPRと私たち地方におけるPRは若干趣が異なるので、誰にという対象をある程度は見えていないと、例えば流山のように霞が関まで30分というエリアの中で行われている内容と、気仙沼が誰に向かってPRしていくのかということは同じスタイルではないと思うので、そこは考えながら取り組んでいきたいです。

 

今川 けせんぬま未来人口会議が始まっているので、そちらでも同じようなことがテーマになると思いますので、私の考えを話します。子育て世代を呼び込むために教育環境はすごく重要です。ある調査では、子育て世代の5人に1人が子育てを目的に移住に関する情報収集をしたことがあり、さらにその半数が実際に移住したということが分かりました。部長の言う通り、首都圏から長野や千葉へ移住するのに必要なことと、気仙沼がターゲットとすることが違うのは分かりますが、子育て目的の移住が全国的なトレンドになっているので、考えてほしいなと思って質問しています。

統合計画と絡めて質問したのは、移住先としてのメリットが気仙沼の場合、小さな学校だからこそ少人数で学べるとか、自然豊かな環境の中だから伸び伸びと生きる力を学べるとか、地域コミュニティの中で子育てができることです。これは子育て世代が移住の際に考える三つのメリットと同じですが、学校統合を進めることで失われていくことが心配です。新しい計画づくりでは、大人数で教育を受けさせたいということも大切ですが、気仙沼のメリットが失われないようにしてほしいです。

例えば、この自然環境の中で伸び伸び生きる力を学べるっていうところを見ていくと、どうしても中心部の方に学校が統合していく流れにあるので、しっかり考えなければなりません。地域コミュニティの中で子育てができるっていう部分も、やはり統廃合を進めていくと地域との関わりがどうしても難しくなっていく部分もあります。少人数で学べるところも、なるべく多くの友達と一緒にという思いがあっても、都会から見ると少人数で学べるってことはメリットでもあるっていうことですので、その視点でも考えてほしいです。教育委員会がこれから新しい再編計画づくりの準備会を立ち上げるということなので、そういったことも検討材料に考えてください。

 

三浦教育部長 準備会を今後設置したいということで予算を計上しております。今後の検討になるわけですが、教育委員会としても次の計画においては、小学校の考え方、あるいは中学校の考え方っていうのは、ある程度整理をして、今いただいたような内容についても検討していく必要があると考えています。

 

今川 子育てを目的に移住する際に考えるデメリットとしては、学力や受験への不安、選択肢の少なさと不便さです。それはまさしく統合を進めている気仙沼の理由でもあります。今までは学校と学校の組み合わせでしたが、組み合わせたことによって教育環境は良くなるということをPRできなければ、子育てのために移住してくる方々はなかなか増えていかないと思いますので、ぜひ新しい計画の中では組み合わせだけではなくて、統合したことによるプラス効果、統合先への投資って部分をしっかりしていかないと、子育て環境はますます悪化する一方です。組み合わせだけでなく、教育環境の充実という本来の趣旨に従った新しい計画づくりを考えてほしいと思います。その辺についても考えを伺います。

 

小山教育長 教育はまさに未来への投資です。子どもたちの未来のカギを握ると言うのは言い過ぎかもしれませんが、そういう長い目で見ながら考えていかなければいけない問題であると思います。そういう意味では移住定住につながる部分もそれは多面性の中で考えていかなければいけないことと考えています。私としてはやはり子どもたちの将来のために今何が必要なのかということを改めて真剣にもう一度考え、検討を進めてまいりたいと思います。そういう意味で、教育環境の改善は当然、最重視をしながら考えていかなければいけないものと考えています。

 

菅原市長 次期統合計画のことでは、教育委員会と私は個人的に話をもう2年ぐらいしています。今川議員のいうポイントも今まで教育委員会とも共有してきたところです。新しい準備会が始まって、その次に本委員会が始まるでしょうが、そこで当局の方の覚悟を示さないといけないと思います。それは「足」だと思います。小学校、中学校の特徴によって、先ほど言っていた地方のメリットを生かし、地方のデメリットを減らすということの中で、どうしても足の問題が出てきます。いわゆるお金です。お金のことがどうなるか分からないと多分議論ができなくなると思っているので、そこは我々もどこまで何がかかって、どこまで覚悟するかっていうのは並行して出していかなくてはならない。そういう意味では、今、宮城県市長会だけじゃなくて、すでに給食費の無償化をやっている市町村も含めて、国で給食費の無償化をするという発言を政府与党がしていますので、当たり前のことのように進めてもらうような運動は強く展開していかないと、一方でかかるお金を地方が捻出できないということになってくるので、そういう観点で教育委員会の準備会議がスムーズに進める環境整備を、市の方で遅れないでやっていきたいと思っています。

 

今川 市の覚悟を確認しましたので、よろしくお願いいたします。あと、情報発信の中ではやはり気仙沼の特色のある教育を、外から視点で一回整理した方がいいと思っています。気仙沼市が東北2位に選ばれた「住みたい田舎ランキング」のアンケート項目の中には、例えば森の幼稚園はあるかという項目があり、それは気仙沼にはあるので得点できました。そういった部分でチェックして行くと、気仙沼にできること、できないことってある程度見えてくるので、その視点もお願いしたいと思います。

あと、移住を考える人たちが読む情報誌の中で、気仙沼のユネスコスクールが特色のある教育として紹介されました。鹿折小学校が紹介されたと思うのですが、気仙沼も全国各地のユニークな教育事例として紹介されるくらい、実は面白い先進的な取り組みをしていますので、積極的にPRすることを考えていただきたいと思います。先ほど域外にももっと情報発信するという話がありましたが、もっと情報発信する仕組みを考えませんか。

 

佐々木学校教育課長 今川議員がお話した通り、本市ではユネスコスクールに全小中学校が加入して活動しております。特に海が地元にあるので環境教育を絡めて、海のことを学習している学校も多い状況です。そういった特徴を発信する方法として、これまで宮城教育大学連携センターなどをハブに教員研修等ではだいぶ広く全国規模で発信をしておりますが、今後一般向けにどのような方法ができるのか検討していきたいと思っています。

 

菅原市長 情報発信については、移住者向けということを意識した情報の出し方、出す場所のメリハリをつけていきたいです。まさしくマーケティングであり、セールスなのでメリハリをつけてしっかりとやっていこうという意味では、移住定住支援センターについては、これまでどちらかというとセンターの担当者と同じような年代の人たち分かりやすいように発信しているところが多く、もちろんほかの年代にアプローチしていないということではないですが、やはり家族帯同や子育てが終わったところに対する対応が不十分だと思います。そこは充実していかなくてなくて、実は次の菊田議員の質問にあるのですが、例えば、市民農園がありますっていうのはアピールです。

また、休耕田がありますっていうのもアピールです。それは仕組み化しなくてはいけないのですが、市民農園は仕組みになっていますが、休耕地は仕組みになっていません。そういうようなこともしっかりとやっていかないといけません。さっき47人に移住したと答弁しましたが、実際は何百人も気仙沼市は入って出て行ってます。だからほとんどチェックできていないということです。そこを埋めていくことによって、もっと成果を上げられる可能性があって、その時に宝島社の雑誌等は、ジャンプ台に本当はなったのではないかと、そういう反省をしながら政策を進めたいと思います。

 

今川 午前中の一般質問でありましたけれども、子育て世代の移住は即効性がありますので、力を入れてほしいです。特色ある教育の中で今注目されているのが、感性を大切にする「シュタイナー教育」、子どもの成長を継続的に見つめられる「幼小中学校の一環教育」、これは地方の小さな学校でやりやすく、あと異年齢グループで学ぶことを重視した「イエナプラン」があります。いずれも我々が目指す気仙沼らしさの中で求めて行くもので、特にこの異年齢グループで学ぶのは、まさしく気仙沼が得意としている分野ですので、名前はたぶん違うかも知れませんが、そういったこともPRしていてほしいです。

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