気仙沼市の地域おこし協力隊を分析【6月議会報告①】

気仙沼市議会6月定例会のまとめ作業がようやく終わりました。今まではどーんと公開していましたが、ボリュームが大きすぎて読みにくいと思っていたので、今回はテーマ別にお伝えします。

初回は一般質問で取り上げた「地域おこし協力隊」です。

総務省の要綱では、地域おこし協力隊制度について「地方自治体が都市住民を受け入れ、農林漁業の応援、水源保全・監視活動、住民の生活支援などの各種の地域協力活動に従事してもらいながら、定住・定着を図る取り組み」としています。隊員の任期は最長3年で、活動経費(1人当たり上限480万円)などが特別交付税措置されます。

気仙沼市の活用内容はどうなっているのでしょうか。

【気仙沼市では8プロジェクトで募集】

総務省のまとめによると、令和4年度は全国で6447人が活動しています。このうち宮城県内は241人、気仙沼市は13人でした。トップ5は北海道東川町64人、熊本県高森町59人、新潟県三条市52人、兵庫県豊岡市50人、新島根県海士町47人で、県内でも丸森町と亘理町でそれぞれ37人です。

隊員の受け入れに上限はありませんが、特別地方交付税には枠組みがあり、額面通り措置されているか確認できず、慎重になっている自治体もあります。

気仙沼市は平成28年度の制度導入から29人を受け入れ、任期終了後の定住率は全国平均(65%)並みとなっています。令和5年度も8事業14人分(下表)の予算として7613万円を計上しています。なお、モーランドは応募がなく隊員不在の状態です。

【ミッションタイプで受入団体が雇用】

地域おこし協力隊には、具体的な取り組みを用意する「ミッションタイプ」、隊員がやりたいことに取り組む「フリーミッションタイプ」、事業化を応援する「起業タイプ」がありますが、気仙沼市は「ミッションタイプ」に絞っています。

これは震災復興で生まれたプロジェクトのスタッフとして関わってもらう仕組みで、それぞれの事業を運営する団体に隊員を雇用してもらっています。受け入れ当初は市が嘱託員として直接雇用していましたが、令和2年度から受け入れ団体の雇用に形態変更しました。隊員のお世話を団体にお願いすることで、市は復興事業に専念することができました。

【受入団体の公募再開へ】

「ミッションタイプ」で成果を挙げてきた一方で、このタイプは関心を持つ人が絞られるため、公募してもなかなか期待する人材が集まらないプロジェクトが目立つようになってきました。

復興事業が落ち着き、新たなタイプで地域活性化と隊員増加を図りたいところですが、市は「今後も基本はミッションタイプを継続したい」と説明しています。ただ、受け入れ団体の公募は再開し、新たな分野で隊員採用を図っていく考えです。

受け入れ団体の公募は令和2年に行った実績があり、6団体が申請して3団体が選定されました。地域のまちづくりや高齢者支援、観光、農業や漁業などでの活用が期待されます。新たな公募時期は未定です。

なお、隊員が多い自治体では、隊員をまとめて受け入れたうえで、各事業に送り込むことを請け負う団体があり、隊員のお世話をはじめ、コミュニティづくり、地域との架け橋役となっている事例があります。今後は気仙沼市でも同様の団体が必要になるでしょう。

参考に、総務省が示している地域協力活動の例は次の通りです。

【移住政策の整理を】

総務省は地域おこし協力隊を増やすため、新たに2泊3日の「おためし地域おこし協力隊」、2週間から3カ月の「地域おこし協力隊インターン」を新設しました。いずれも住所を移さずに体験でき、ハードルを下げています。島根県海士町では「大人の島留学」として協力隊制度を活用した移住政策が功を奏しており、ふるさと納税と同じように自治体間のアイデア合戦となっています。

気仙沼市では震災後、地方創生の名のもとにさまざまな移住政策が始まりました。移住定住支援センターの開設をはじめ、2週間以内の宿泊費を補助する「お試し移住」、災害公営住宅に家賃(光熱費込み)月1万5000円で滞在できる「お試し暮らし住宅」、市内の企業での働きながら最長2カ月滞在する人に宿泊費を補助する「ふるさとワーキングホリデー」、複数の職場で働く「マルチワーク」、漁業の担い手を確保するための「漁師学校」など多岐にわたります。

今後は事業の関係性を整理し、事業の効果を上げていくことにしています。

一般質問の詳細は下記の通りです。


【今川悟の一般質問】

本市で地域おこし協力隊を導入して8年目になりました。重点プロジェクトを中心に隊員を配置することで、復興と地方創生に貢献してもらっていますが、震災から落ち着きを取り戻す中、地域おこし協力隊についても関連事業と合わせて成果を検証し、今後の在り方を考えるタイミングにありますので、次の4点について質問します。

 

質問1  地域おこし協力隊の活用方針、成果と課題、今後の在り方について市の考えを伺います。また、現在は市の課題解決に取り組む団体に対して、隊員の受け入れを委託する「プロジェクト参加タイプ」で成果を挙げています。さらなる隊員拡大へ向けて、新たな取り組みを生み出す「ミッション創生タイプ」、高齢化が進む地域の課題など解決する「地域密着タイプ」、技術継承を目的とした「専門家育成タイプ」、起業へのスタートを応援する「起業支援タイプ」、地元出身者が利用しやすい「Uターン促進タイプ」、そして島根県海士町で始まった「大人の留学タイプ」など、受け入れタイプを増やす考えはありませんか。そのためには、まちづくり協議会の活用、新潟県十日町市の一般社団法人里山プロジェクトのような受け入れ団体の育成、そして受け入れ団体の公募再開も必要です。市の考えを伺います。

 

菅原市長 地域おこし協力隊の活用方針、成果と課題、今後の在り方についてでありますが、本市においては平成28年度に制度を導入して以来、地方創生事業や第一次産業の振興、地域ブランド・地場産品の開発など、震災からの復興の過程における主要プロジェクトを中心に、活動内容を示した形で隊員を募集してきました。これは、県が示す「ミッションタイプ」「フリーミッション」「起業タイプ」の3つのカテゴリーでいうと「ミッションタイプ」に該当し、隊員はミッション・プロジェクトの達成を目標に活動しています。

隊員の身分については、制度導入当初は市の嘱託員でありましたが、令和2年度からは任用形態を変更し、受入団体の被雇用者として、隊員の給与、福利厚生等は各団体の就業規則等に基づき、活動していただいているところであります。この間、隊員の積極的な参画を得て、市が目指す将来像に向けた市内各プロジェクトが進んでいるということはまぎれもなく地域おこし協力隊の成果です。一方、最近は学生の休学期間の終了などから任期途中での退任も見られることから、より一層定住率を上げていくことが課題であると認識しています。

このことから、隊員が今後もこの地で就労し、暮らし続けられるというイメージを持ってもらえるよう、活動報告会や隊員交流会等で仲間とつながり、多くの隊員が興味を持つ地域活動の機会を増やすように努め、定住率の増加に繋げてまいりたいと考えております。

次に、地域おこし協力隊募集に係る受入れの拡大についてでありますが、本市では現在7事業のミッション・プロジェクトで隊員に活躍していただいておりますが、今後も基本はミッションタイプを継続してまいります。また、市の将来像に沿った民間や地域団体の活動も活発化していることから、その分野については、かつて行ったように受入団体の一般公募を行い、更なる隊員の募集を進めてまいります。

 

今川 最初に確認しますが、この地域おこし協力隊は特に上限が定められてはいないと認識しています。特別交付税措置がされる制度であり、県内ではもう30人、40人規模で隊員を雇用している町もあります。そういうことを考えて、もっと気仙沼が増やせる可能性があると思っているのですが、人数についてどういう考え方を持っているのですか。

 

小野寺震災復興企画部長 上限はありません。戦略的にこの制度を使っている市町は全国にはあります。100人を超えるところはどうかと思いますが、60人、80人いるところもあります。この地域おこし協力隊については、その財源については特別交付税の方に算入ということになりますが、特別交付税は必ずしもその人数かける上限金額で算定されるというものではなく、人数を増やしたから、その分、確実に来るという保証がありませんので、市の財政と相談しながら適切に人数を確保していくか検討しながらやっていきたいと思います。

 

菅原市長 私が気にかけているのは、お金と人数のこともそうですけど、結果、人数のこともありますが、都合よく使ってないかということです。元々の地域おこし協力隊のタイプはこうではありませんでした。農業をやりたい、漁業をやりたいという人たちがいきなり農家や漁師になれないところを橋渡しした制度でした。

それが本市も典型例かもしれませんが、まちづくりにお願いをして、非常に効果があったということで、総務省もそれがいい例として取り上げて、それをどんどん使った町があります。我々はそれはありがたいのですが、その人の人生は、その人のご自身のリスクではありますが、しかしながらまちに呼んでおいて、その人たちが30代、40代になった時に、どうしてこのまちで暮らせるか、形が描けるのかっていうことを同時に考えていかなくてならないと、常に私は自問自答して、なかなか答えがでない中で、頑張ってもらっています。ですから、ここから市内でこういう風な暮らし方ができて、都市部にいるより良かったなっていうモデルケースを1人でも2人でもつくっていくことによって、自信を持ってそのほかの人たちを誘って行きたいと考えています。

 

 

質問2 プロジェクト参加タイプを中心としているためか、隊員の顔や活動が市民に見えにくくなっています。居住する地域のまちづくりやイベントに参加することで、知り合いが増え、定住につながることも期待されます。地域コミュニティにつなげるための仕組みづくり、地域ぐるみのサポート体制構築など、定住へ向けた支援策について、市の考えを伺います。

 

菅原市長 地域おこし協力隊の地域への浸透と定住に向けた支援策についてですが、気仙沼まち大学運営協議会において、隊員同士の活動報告会を開催し、お互いの活動を知る場を設けることで、その後の交流が生まれております。この交流をきっかけに市内で開催されるイベントや地域活動などを隊員間で共有し参加する事例もあり、このような機会を多く作ることで、地域との交流、まちづくりの参画にも繫がっていくと考えております。今後とも地域団体の活動やコミュニティで開催される行事への参加を促してまいります。

また、その参加を通じて、隊員と地域との関係性が広まり、地域ぐるみのサポートに繫がっていくことも期待するものであり、市としては隊員の受入団体にその機会創出への協力を呼び掛けするとともに、関係するまちづくり協議会等に声掛けしてまいります。

 

今川 震災ボランティアを経験した若者が移住をしてくれたことで、地域おこし協力隊に頼らなくても、移住者が増えた時期がありました。しかし、時間が経ってきますと、そういった方々も減ってきて、いよいよ移住に力を入れないと、若者は簡単に移住してくれないだと思いました。地域おこし協力隊も全国でやっていますから、気仙沼だけではありませんので、魅力を高めていかないと集まらなくなります。実際、気仙沼市も募集しても集まらない事業が増えてきていると伺っております。

そこで今回提案したのが、新たなタイプっていうことで、今まではミッションタイプということで既存の事業応援してもらうということで助けてもらっていました。しかし、市長がおっしゃったとうり、都合よく使ってなかったかってところでは少し反省が残るのではないかなと思います。そこで協力隊になりたい方々がやりたいことを応援するため、3年間は報酬が出ますので、その中で生活基盤を作ってもらって起業するなり、あるいは自分がやりたいミッションを自分でやってもらうなりってことが、本来の制度になるのではないかなと思って今回の提案をしております。

さっきの答弁だと、やっぱりミッションタイプをしばらく継続していくってことでしたので、そこにこだわる理由と、受け入れ団体がないとこの新たなタイプは難しくなっていくと思いますので、受け入れ団体の育成というところが重要だと思います。そこのあたり、もう少しの考え方を整理して伺いたいと思います。

 

小野寺部長 基本的に今のやり方、受け入れ団体があって、その団体に隊員をお願いして、受け入れ団体が持っている市が目指す将来像と合っているミッションに貢献をしていただきながら、自らの起業であったり、あるいは就職、身の振り方を3年間考えてもらうということは非常に良いやり方と私たちは思っております。議員ご提案の一般公募も最初の質問でありましたが、当然ながら将来像に向かう事業でなければなりませんけど、受け入れ団体が手を挙げていただいて、そこに隊員をお願いすると、こういう形は今後、もう一回の考えてみてもいいかなと思っておりますので、検討させていただきたいと思います。

 

 

質問3 震災後に始まった移住定住支援センター、お試し移住補助金、災害公営住宅を活用した移住体験、宿泊費等を補助するふるさとワーキングホリデー、ローカルベンチャー推進事業、漁師学校、気仙沼まち大学構想、そして新たにスタートするマルチワークのほか、地域づくりを応援するための地域活性化支援員、起業を支援するチャレンジオーナー制度や創造的産業復興支援など、地域おこし協力隊に関連する事業は多岐にわたります。さらに、総務省も隊員増加に向けて、地域おこし協力隊にお試し制度とインターン制度を創設しましたが、本市ではまだ利活用できていません。そこで、観光や教育と同じように推進組織を設立し、これらの事業を移住者目線で分かりやすく整理し、効果を最大限発揮できるようにすることが必要です。市の考えを伺います。

 

菅原市長 移住者目線での移住・定住施策の整理とその効果についてでありますが、震災後に様々な移住・定住施策の事業をきっかけとして、20代、30代の若者を中心に市外から本市へ転入し、企業等への就職や個人での起業、地域おこし協力隊員としての地域貢献など、各セクションで活躍されている現状を見るにつけ、移住者がもたらしてくれる効果は大きいものと捉えております。

一方で、移住に係る相談や体験の流れ及び支援については、都度の事業新設で、結果として多くの事業を複数の機関が運営することとなり、その関係性を整理したものが必要であることは認識しているところであります。今後、事業実施団体とも検討の機会をつくり、移住事業の効果を上げられるよう取り組んでまいります。

 

今川 十日町市の里山プロジェクトのような団体が一般公募に手を挙げて、その中で隊員がある程度やりたいことを実現させるって仕組みができあがる。そういった方法で今の話が解決すると確認したいと思います。

この地域おこし協力隊ですが、お試し協力隊とかインターン協力隊が生まれてきて、ますます複雑になってきているなと感じています。市長がおっしゃった通り、その人の人生を背負うような気持で協力したいと思っていたのですが、一方でお試し制度ができてきて、あるいは海士町で始まった大人の留学タイプは、まさしくお試し的な内容ですが、地域に入るきっかけづくりという部分でこの制度ができたみたいです。そこを考えてみますと、気仙沼市がやっているお試しや体験は、災害公営住宅を使った体験は、これに近いような部分やっていると思います。

最後に言いたかったのが、その制度を整理して、例えばこの地域を知ってみたいっていうところから気仙沼に入ってくる人もいるし、明確にこんなことやりたいっていう人もいると思いますし、あるいは市が募集しているミッションの中で、これに関わりたいって人もいるので、多様性を持ってほしいです。地域おこし協力隊も移住者を受け入れる仕組みの一つですから、地域おこし協力隊に向く人もいれば、お試し移住に向く人もいるし、ワーキングホリデーに向く人もいますので、この制度を整理して、どういうタイプの人はこの制度がおススメですよみたいなことをひと目で分かるフローチャートみたいなのがあったらいいなと私も考えました。整理してくださるってことでしたので、もっとわかりやすくしていくってことを最後に確認したいと思います。

 

菅原市長 ある程度数をこなすというか、いろんな人の話を聞かないとどう整理していいかが分からないという状態だと私は思いますので、どういうタイプの人がいて、どういう受け皿を作ればいいのかっていうことを少し勉強しないといけないなと思います。それは、他のまちを見ればいいだけでもなく、実際来ている人たちからのヒアリングが随分大きな意味を持つかもしれないなというふうにも考えていますので、我々の地域おこし協力隊の活用だとか、ふるさとワーキングホリデーだとか、お試し移住の質だとか、確率を上げるための作業したほうがいいよっていう話だと思いますので、そこは整理したいと思います。

 

今川 けせんぬま未来人口会議の方でそういったことも議論されているのかなと期待しております。制度が震災後にいろいろ出てきて、整理するタイミングがなかったのかもしれません。ここで一回立ち止まって整理した方が良いのかなというのが、今回の話しでした。推進組織の部分で答弁があったかどうか確認しますが、観光推進機構、教育の産官学コンソーシアムのように、整理をするために皆さんが集まれる会議体がないと、なかなか難しいと思いますので、そこはもう少し確認させてもらいます。

 

菅原市長 簡単に言うと、なかなか手が回らないなぁというのは、今川議員が一番感じられていると思います。どのように手を回すかっていうことをまず考えたいと思います。

 

今川 今回の質問は、全般で子育て世代が移住しやすい気仙沼という部分を考えて設計しました。特に子連れで移住したいっていうところで考えると、ミッションタイプだと難しいのかなと思います。のんびり生活をしたいという方にとっては、このミッションがあることによって地域おこし協力隊のハードルが上がってしまいますし、例えば農業をしたいという人も、子育て世代の多いと思います。そういったところを整理していただきたいと思います。気仙沼の魅力を高めることは、気仙沼に住んでいる人たちの誇りを高めて、ここに住み続けたいと思うようになっていくと思います移住政策に力を入れるということは、結局は定住の方につながっていくということになります。次回以降もいろいろ確認を進めたいと思います。

 

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