気仙沼市議会の臨時会が9日に開かれ、条南中学校(生徒数162人)を来年4月に気仙沼中学校(生徒数122人)へ統合する議案を可決しました。重要議案のため、可決には2/3以上の必要でしたが、賛成は18人、反対は5人でした。私は学校統合議案に初めて反対しました。
【中学生36人が署名簿を提出】
統合の経緯は、4月13日のブログ「条南中学校も令和6年4月統合へ前進」にまとめてあります。地区懇談会は反対の雰囲気から賛成に一転したため、もう少し丁寧に合意確認すればいいのにと思っていたら、臨時会の直前になって条南中の生徒36人が反対の署名簿を市長、教育長、議長に送付したことで、くすぶっていた不満や不安が表面化しました。
署名簿の提出を受け、市教育委員会はPTA役員と対応を協議し、10日に条南中で全校集会を開催し、統合の必要性について初めて生徒に説明しました。これまで市教委は「大人の責任で決めるべき」とし、子どもの意見は聞かない方針を貫いてきたので、異例の対応といえます。
臨時会での議案審査にあたり、まずは署名の内容などを確認しなければと思いました。ところが、議運で確認したところ、議長宛てに届いた署名簿について議長は「個人に届いた郵便物なので出すつもりはない」として議会としての共有を拒否したため、市長、教育長宛てに届いた分を説明資料として求めることにしました。
しかし、中学生の署名簿ということもあり、市長、教育長側からは「出すべきではない」との回答だったため、最終的には議長宛てに届いたものをコピーして配布するものの、最後には回収し、会議ではその文面を読まないようにという条件が付いてしまいました。
【保護者と地域の理解を得たというが】
本会議では、市教育委員会から「新たな学校づくりの展望を示して懇談を重ねる中で、多くの仲間と切磋琢磨できる環境に期待を寄せる保護者の声が多く聞かれるようになった」「保護者や地区の理解をいただいた」との説明がありました。説明資料はこちら⇒条南中統合議案資料2023.5.9
議案は総務教育常任委員会に審査を付託されるので、本会議では委員会以外の議員が質疑できます。内容を考えるとたくさんの質問があると思っていたのですが、質問したのは1人だけでした。
この質疑で、朝の全校集会で発言した生徒は2人で、別に書く時間を設けた意見用紙は(全校生徒160人の)半数以上から提出されたことが分かりました。その7割は通学方法に関することで、新たな校則、体操着などの不安もありましたが、「統合前の交流や準備会で解消できる内容だ」との説明がありました。
このほか、気仙沼中の体育館は補助金との兼ね合いがあって改築の可能性を含めて耐力度調査を進めますが、菅原市長は「基本的には新築の方向で進めたい」と答弁しました。
【常任委員会では自由討議も】
総務教育常任委員会での質疑は約2時間でした。主な質疑は下記の通りです。
質問)統合によって不登校が増えませんか
答弁)学校ごとの不登校者数は公表できませんが、統合した学校の出現率が飛びぬけて高いわけではありません。統合で環境が変わることで登校できるようになった例もあります
質問)統合を決めるのに子どもの意見は聞かないという方針は変わったのですか
答弁)市と保護者、地域の人たちで決めることで、子どもの同意を得て進めるものではない。新たな統合計画づくり検討組織の中で、合意の取り方、子どもへ説明や声の聴き方、反映のさせ方も議論してもらいたいと考えてます
質問)条南中、九条小の児童生徒数は計400人ほどですが、条南中側の合意を得たと判断した7回目の地区懇談会に、保護者は何人出席しましたか
答弁)条南中、九条小合わせて13人です
質問)登下校に活用する循環バスは雨の日でも大丈夫ですか
答弁)補助席込みで定員は28人です。全員乗れなければ2台出すこともできます。今後再編する路線バスの活用も考えたいです
質問)小泉小と津谷小の統合では、校舎整備は新たな統合計画ができたから検討すると説明されました。どうして気仙沼中体育館だけ先行するのですか
答弁)条南中と気仙沼中の統合は新計画にふれて説明したからです。特別古いこともあります
なお、最後に議員間討議(自由討議)を行い、「生徒から出された不安を払拭することについて」をテーマに、十分な対応を求めるべきとの意見が出ました。
【統合は不安や疑問を解消してから進めよう】
私は記者時代から小・中学校の再編を追い続け、気仙沼市の再編計画づくり、そして統合の議論を見続けてきました。さまざまなケースがありますが、強引に統合を進めて事例はなく、議員になってから提案された統合議案に反対したことはありません。
しかし、今回は初めて反対しました。
理由は、統合に理解を得たと判断した4月12日の条南地区懇談会は、保護者の出席が13人だけで、それまでは反対意見も多く、中学生の署名からも完全合意に至っていないことは明白だからです。もっと不安や疑問を解消してから統合を進めるべきで、1年延ばしだと混乱するので、今年度中に着手する新たな統合計画づくりの中で、あらためて検討することを求めました。また、新計画では合意形成、子どもへの説明についても検討するということなので、より深い話し合いができるとと考えました。
準備期間も1年を切っており、令和6年4月の統合は時期尚早と判断しました。
もともと疑問が残っていたのですが、中学生の署名が後押ししてくれました。
ほかに反対した議員は「生徒の意見はまだ取りまとめ中である」「子どもとの対話を優先すべき」と主張したので、同じように署名の影響を受けたと思います。
【生徒の不安とは】
中学生の署名については、議会の中でも「市教委は右往左往すべきではない。もっと毅然とした態度をとるべき」「前例になるので取り上げなくていい」という意見がありました。統合議論に子どもを巻き込むことで、トラブルになることを心配したからです。
一方で、議会へ請願を出せる権利は年齢や国籍に関係ないので、中学生でも議会に対して請願を提出することができます。子どもが意見を言う権利を守らなければならないという法律もあり、市が設置する人口減少対策の市民会議には中学生代表も参加するので、この件を通して子どもの権利について考えさせられました。
私も中学3年生の時に面瀬中学校ができたので、統合と同じような経験をしました。多感な中学生にとって、統合への不安は当然ですので、署名簿が提出されなくても、十分な説明やケアを早くから進めるべきだったのです。
条南中は各学年2クラスを維持しており、どうしても急いで統合しなければならない理由はありません。しかし、計画に盛り込まれたことで、いずれ統合されるなら早くした方がいいと考える保護者も少なくありません。特に中学校入学前の保護者からしてみれば、あいまいな状態は不安を膨らませてしまいますので、統合に賛成した議員の皆さんの気持ちもよく分かります。
教育環境をより良くするための決断ですので、子どもたちが抱くのは「不安」ではなく「期待」であるべきです。来年4月の統合が決まったからには、できるだけ不安や疑問を解消して新しい学校づくりが進められるようにサポートしていきたいです。