気仙沼市は公共交通の方針などをまとめた「第2次総合交通計画」案を作成し、パブリックコメント(意見募集)を始めました。持続可能な公共交通体系を目指し、路線バスの再編によって市の負担を3割削減する施策などを盛り込んでいます。
【20年後は人口3万人台、高齢化率50%超】
一家に一台どころか一人一台の車社会である気仙沼では、路線バスをはじめとする公共交通への市民の関心は高くありません。しかし、路線維持のための市の財政負担は膨らむばかりで、高齢化によって免許返納後の高齢者の皆さんの移動手段確保も課題となっています。
新しい総合交通計画は、第1次計画が令和3年度で終了したため、令和4~8年度を計画期間として今年8月に策定する予定です。市ホームページで計画案を公表しています。
計画は公共交通の現状を分析し、公共交通空白地帯の移動手段確保、交通手段の役割分担、利用促進などの課題を抽出しました。そのうえで現在約6万人の人口が20年後には3万人台になり、その半分が65歳以上になる予測を前提に、基本方針と目標を設定しました。
【路線バスの維持に2億円。1.7億円が市の負担】
公共交通の要となっている路線バスと乗合タクシーの利用者数が減少しています。令和3年度は18.7万人で前年度の77%にとどまりました。新型コロナの影響もありますが、主な利用者である高校生が減少したことも要因となっています。
路線バスには自主運行路線と市委託路線があります。自主運行路線は採算性がある路線で、市が定額の補助金を出して唐桑と市街地を結ぶ御崎線と大沢線の2路線で運行しています。委託路線は赤字分を市が補填する仕組みです。この二つを合わせて市の負担は令和2年度で1億7568万円でした。
震災前の市の負担は6000万円ほどでした。震災直後は国の手厚い支援があって負担は軽減されましたが、国の支援が切れてから厳しくなっています。
委託路線の運行経費は2億円を超えました。自主運行路線だった三陸線(津谷~気仙沼市街地)が委託路線に格下げになったり、架橋に伴って大島への接続線が必要になったりしたことが原因です。
一方、委託路線の運行経費に占める委託料の割合は、震災前の平成21年度で42%、令和2年度で84%と激変しました。
【バス路線再編へ乗り継ぎポイントを設定】
利用者18万人で経費2億円を単純計算すると、1人当たりの経費は1100円です。そのうち155円が運賃で、残り公費負担となります。これだけの公費が投入されているのに、市民アンケートでバス運行の満足度は低い結果でした。
新しい計画では、持続可能な公共交通とするために、バス運行にかかる市の負担額を令和8年度までに3割削減(1.75億円を1.3億円に)する目標を設定しました。このため、バス路線を縮小して、市街地循環バスやBRT駅などの乗り継ぎ(交通結節点)地点までの最低限運行にとどめます。
※下図は路線バスの再編イメージです。各地域と市街地を結んでいた現行ルートを見直し、BRT駅や市街地循環バスの乗り継ぎポイントまでのルートに短縮します。コスト削減のサービス維持が大きな課題となっています。
【予約制送迎サービスの検討も】
利用者数の実態に合わせ、中型バスをワゴン車にサイズダウンすることでコスト削減を図ります。
さらにデマンド交通を導入します。デマンド交通は、決まった路線の定時運行ではなく、バスや乗合タクシーによる予約制の送迎サービスです。松岩・面瀬地区では、東北電力による予約制乗合タクシーを検討しているそうです。
唐桑地区ではトヨタ自動車の支援による新たな交通形態の導入可能性を検討しています。
パブリックコメントは8月3日までです。今回は大胆な計画となっていますので、たくさんの市民の方々に関心を持って頂きたいです。