「数字の真相」。気仙沼の出生数から考える未来

気仙沼市の2018年の出生数が297人だったことは、多くの市民に衝撃を与えたようです。ところが、その実態は正しく理解されていない面もあります。ピンチはチャンス。せっかくの機会ですので、出生数の問題について議論するためのデータを提供します。

【出生数の推移よりも流出が問題】

出生数が年々減少して15年で1/2、30年で1/3、50年で1/5となったことは以前にもお伝えしましたが、気仙沼の場合はこれに若者流出の問題が重なります。

下表をご覧ください。毎年の出生数のグラフに、その年に生まれた人の現在の人口(住民登録)を重ねてみました。例えば、私は1975年生まれですが、同じ年に生まれた子どもは1399人だったのに42年後の人口は752人と半減していることが分かります。(ただし、出生数は毎年1~12月、人口は2018年3月末なので少しずれていますが、だいたいの感覚として見てほしいです)

このグラフで分かるのは、高校を卒業してから市外に流出が始まり、そのまま帰ってこないという実態です。大学や専門学校に進学しても住所を移さない人もおり、実際は高校卒業とともに約7~8割が市外に出て、帰ってくるのはその半分以下となっています。

【このままだと30年後の出生数は110人】

もう少しハッキリいうと、気仙沼は、生まれる子どもが減ることに加え、その子どもがさらに市外に流出することで、次世代の親が減り、生まれてくる子どもがさらに減るという悪循環に入っています。

少し視点を広げると、例えば日本の出生数はここ30年で3割減って「急激な少子化」と問題になっていますが、気仙沼は7割近くも減っています。このことからも、「急激な少子化」よりも深刻な問題であることが分かるはずです。このままのペースだと、30年後の出生数は110人程度となります。

【即効薬はない。視点を変えるべし】

人口に関する分析は、過去のブログでもさまざま取り上げていますが、結局ところ、みんなが知りたいのはその解決策です。それは、若者の市外流出を防ぐこと、地元に戻ってくる若者と移住者を増やすこと、それに加えて出生率を上げることですが、現実的にはどれも難しいことばかりです。

全国的には、目覚ましい成果を挙げている地域もあり、参考にできることもありますが、そろそろ人口を増やすという意識は捨てなければなりません。戦後の高度成長と団塊世代、団塊ジュニアと続く時代は「人口のバブル期」でしたので、その時期を基準に考えること自体に無理があるのです。

【現在の人口は戦後と同じ規模】

気仙沼市の人口は現在6万4000人です。唐桑と本吉を除いた旧気仙沼市だと4万8000人になりますが、これは約70年前、戦後間もない昭和20年ごろの人口と同規模です。人数の増減ではなく、インフラに対する人口規模、世代構成、産業や教育への影響など、具体的な課題を整理して対応していくことが求められています。つまり、数字に一喜一憂せず、その中身を考えようということです。

今後もその議論に必要にデータや話題を提供していきます。

2 Comments

  1. hujita

    人口動態は最も数字の読める統計なんです。こうなることは30年前からわかっていたはずなのに、何もしてこなかったのは現実逃避としか言いようがありません。昭和20年頃と同じ人口でも、現在の年齢構成を考えると相当に深刻な問題ですね。果たして解決策などあるのでしょうか?

    Reply
  2. 斉藤仁

    いつもありがとうございます。少子高齢化は日本国内の大きな課題だと思います。
    しかし、気仙沼で生まれ育ち18歳で外に出るのはある意味しようがない現示では無いでしょうか。もっと学びたい、外の世界を感じたい、それは私もそうだったから言えるのかな?
    でも、離れてみると凄〜く感じるのが自分が生まれ育った故郷の素晴らしさだと思います。そう感じる若手にチャンスを作るのがちょい歳を取り実体験した我々だと思いますよ。その先頭に立ってもらうのが今川さん達市議の務めで有り責任かと思いますがどうでしょうか?・・
    近々行きまーす、宜しくお願いしまーす

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