気仙沼市議会6月定例会が25日に閉会しました。選挙後初めての定例会では、45件の議案を審議しました。市役所本庁舎の建替えの議論が本格化するなど、内容の濃い定例会でした。
一般質問の結果は報告済みですが、予算の内容、質疑で分かったことなど、市民の皆さんに伝えたいポイントをまとめました。新庁舎、賛否が分かれた二十一浜の防潮堤については、後日、詳しくお伝えします。
【暮らし】
◇国民健康保険税の値下げ ― 国保制度の改正により、気仙沼市に代わって宮城県が財政運営の責任主体となったことで、県が算定した標準保険料率を参考に税率を改正した。全体的に値下げとするために財政調整基金(貯金)を毎年3億円使う見込み。財調の残高は1か月分の税収+αで6億円程度。現在は11億円ほどあるが、市の見込みでは2020年度に5億円となる。
◇18歳までの医療費無償化は国に要望 ― 18歳までの医療費無償化は県内14市のうち6市、全国の3割で導入している。現在は中学生まで無償化しているが、助成に係る年間1億3700万円のうち1億1000万円は市の負担。そのうち6500万円は過疎債で対応している。18歳まで拡大すると市の負担は6500万円増加する。「過疎債は借金であり、将来にツケを残して減免していくのは筋が通らない」と菅原市長。国に財源確保と制度創設を要望していく。
【産業】
◇ホタテの貝毒対策 ― 940t・4億1700万円相当のホタテが垂下したまま出荷規制解除の見通しが立たない。共済加入は唐桑が高く、大島が低い。情報収集に努めるとともに、共済に周知と加入促進に取り組む。市内にはホタテ専門の漁業者はいない。抜本的な対策は国県と探る方針が示される。
◇電動フォークリフトの契約議案撤回 ― 新魚市場で使用する電動フォークリフト32台の調達は、地元業者も入札に参加しやすいように3分割して発注し、財産取得の議案を提出。しかし、14台(6611万円)は落札業者のロジスネクスト東北気仙沼支店が辞退したため、委員会を通過した後に議案を撤回する異常事態となった。急速充電の仕様を勘違いし、調達できなくなったことが理由だった。
◇現水道事務所は解体 ― 被災した鹿折地区の水道事務所が再建され、7月23日から利用開始する。上田中にある現在の仮事務所は解体する。この仮事務所は2013年2月から医療法人あさひ会(おだか医院)から無償貸与されており、契約では2017年12月を越えた場合は市の負担で解体撤去することになっていたが、あさひ会の厚意で解体費は折半してもらうことになった。市の負担は1600万円程度で済む見込み。
◇スローシティ観光集客施設に市有地減額貸付 ― 気仙沼地域開発が整備した内湾の商業施設を支援するため、市有地(962㎡)貸付について、本来は月9万5238円のところを固定資産税並みの3万8095円の賃借料とする。減額の条件は①賑わい創出②良好な景観形成③観光発信の拠点④まちづくりの施策に合致⑤多くの市民が利用―などで、公益性が高い施設と判断した。
◇内湾に観光用駐車場 ― 南町には8000万円で70台分の有料駐車場を整備する。完成時期は11月末ごろ。
◇お伊勢浜の砂浜再生 ― 宮城県と気仙沼市でお伊勢浜(延長425m・幅27m)の養浜を行う。砂3.6万㎥は大和町から搬入の予定。本年度は整地、来年度は砂の投入と敷き均しを行い、2020年度に海水浴場をオープンさせる。総事業費は6憶9760万円で、市の事業費は2億1733万円だが、復興予算で充当される。シミュレーションでは50年間にわたって砂浜を確保(半量)できることが分かったと説明される。砂は湾内に滞留する。砂浜と防潮堤の間の20m区間は、林野庁の防潮堤工事で掘削するため砂は入れず、林野庁の仕上げの中で検討する。
◇本吉の三陸道PAの物販施設のこれから ― 本吉地の三陸道には国がパーキングを整備する。市はその隣接地を造成して物販施設を整備する計画だったが、運営する事業者を見つけられずに復興期間内の整備を断念。菅原市長は「早い段階で諦めれば、国のPAとトイレもやめてしまう可能性があった。PAがなくなることが最悪の結果なので決断を引っ張った。国の復興予算が出ないことも分かったので、2020年度までに無理して整備しなくていい。ここで諦めて、将来的に何も作らないとこ宣言しているわけではない。PAを生かしていきたい」と語った。
【行政】
◇副市長に留守さん ― 退任する菅沼真澄副市長に代わって、留守洋平さん(38歳)が就任した。3代続けて国交省からの人事。条例上の任期4年だが、途中で復興期間が終わるため、副市長2人制の継続時期を確認したところ、菅原市長は「4年の任期として提案したい」と答弁した。
◇地方創生は「最重要課題」 ― 市民の声の代表質問に「一定の人口規模を保つ必要がある。地方創生総合戦略の次期計画について国の方針は示されていないが、最重要課題であり、市民起点の計画を策定したい」と菅原市長。
◇公民館のまちづくりセンター化 ― 7月に先進地の一関市を視察。一関市と同じように地域協働推進計画を策定して公民館の市民センター化を進めており、同様の計画策定を進めていきたい。
◇市立病院の経営形態を検討 ― 年度内に経営形態を検討する組織の立ち上げを表明
◇私道の支援に高い壁 ― 震災後に市道と認定された私道はなく、市道整備補助も1件の利用にとどまっている。要綱に該当しないことが大きな要因。
◇会計年度任用職員制度の導入 ― 臨時・嘱託職員の安易な雇用を防ぐため、国が創設した制度がスタートする。期末手当の支給も可能になる。6月現在で臨時職員は244人、嘱託職員299人の計553人。2020年4月の施行に向けて条例を整備し、2019年8月に募集を始める。「億単位で人件費が増える可能性がある」と菅原市長。
◇新たな道路整備計画の考えとは ― 財源の見通しは精査中。2011年に策定寸前だった第二次計画のことも「考えないといけない」と答弁。あくまで路線ごとに評価する方針が説明される。
【復興事業】
◇片浜の区画整理は立地企業を公募 ― 片浜地区で進められている整序型土地区画整理事業(換地を主体とした事業)は、9月末に県の認可を受ければ事業着手となり、審議会の委員を選挙で決める。審議会の初会合は来年1月の見込み。土地利用は県の事業認可の条件のため、認可直後ぐらいに立地企業を公募する方針。企業誘致に関しては審議会設置前に始まるため、地権者会やまちづくり組織と意見交換して条件などを整理していく。
◇記録誌は年度内完成 ― 災害対応の記録誌は年度内に完成する。災害対応が中心の記録誌のため、復興誌づくりに着手するための予算確保を市長が指示している
【大島】
◇橋開通後の公共交通 ― 鹿折と大島の路線を統合する形でのバス運行を考えている。まもなく島民と勉強会を行い、年明けの地域公共交通会議に諮りたい。料金は距離制、定額制などさまざまシミュレーションしたい。なお、開通後の混乱を避けるため、大島汽船に臨時船の運航の検討をお願いしているとの説明があった。
◇亀山への車両規制 ― 日時を考えて一般車両の規制して、新設する駐車場とレストハウスの間でシャトルバスの通年運行を検討する。混雑時には浦の浜から30分間隔でシャトルバスを運行する。年度内に委託業者を決める。
◇駐車場と観光メニュー開発 ― 来年3月の橋開通に向けて、小田の浜海水浴場に70台、亀山中腹に60台の駐車場を約1億円かけて整備。このうち約9割は過疎債という借金を財源とする。亀山を舞台とした星空ガイドの育成、竜宮伝説などの資源掘り起し、周遊コースの設定、モニターツアー、情報発信にも取り組む。
◇橋両端にトイレと駐車場 ― 大島大橋の両端には県が車の転回場を整備。鹿折側にはトイレと5台分の駐車場、大島側は展望台とトイレと7台分の駐車場となる。夏ごろに説明会を予定。
【教育】
◇水梨小、月立小の統合は計画通り ― 齋藤教育長は代表質問に「地域懇談会の出席者が固定され、同じ議論が繰り返されているが、水梨は住民による意見交換が開催され、月立の地域懇談会では賛成の声もあり、状況は変化している。多くの人が地域懇談会に足を運びやすい環境づくりをして、計画通り平成31年4月の統合を目指す」と答弁。
◇大島小の小規模特認校化に否定的 ― 学区外からの通学を受け入れる小規模特認校になることで学校の存続を図ろうとする意見に対し、市教委は「月立で平成19年度から導入しているが、これまでの利用は2人にとどまる。出生の推移見ると、各校で厳しい状況が続く。塩釜の浦戸のように環境を醸成することは容易ではない」と答弁した。居住地とのつながりが薄くなることも心配した。
お疲れ様です
日頃の精力的な活動に敬意を表します
防潮堤の建設が可決されたようですが、賛成された方の議員氏名など公表する事は出来ませんか?賛成の理由など知りたいですね
二十一浜の防潮堤については詳しくまとめるつもりでした。賛成した議員、反対した議員は8月に発行される議会広報に掲載されますし、新聞でも掲載済みです。賛成した理由は「民家や道路などを守るのに必要」「計画を見直している時間はない」「地域が合意している」に尽きると思います。