漁師が山に木を植える「森は海の恋人運動」の活動拠点である気仙沼市舞根湾は、災害復旧にもこだわりました。海沿いを走る市道の復旧に、地下水を通す「透水性鋼矢板」を導入するのです。
矢板は、土砂が崩れないように押さえるために打ち込む板です。水際の堤防工事には不可欠な資材ですが、矢板によって地下水の流れまで遮断されるという弊害がありました。
■矢板に直径8㌢の透水孔
透水性矢板を導入するのは、津波と地盤沈下の被害を受けた林道日向貝線です。復旧延長407㍍のうち97.2㍍の区間で行われる擁壁工事の矢板に採用します。透水層がある部分の矢板(幅90㌢・厚さ1㌢)に、直径8㌢の透水孔を3カ所に開けます。
矢板をワイヤーで支えるために打つ「控え矢板」にも透水孔を開けます。
■干潟保全に配慮。希少生物が条件
市によると、目的は「(津波でてきた)干潟保全への配慮として、地下水を遮断しないため」です。ただし、通常の矢板よりコストがかかるため、希少生物が確認されるなどしないと認められないそうです。
林道の復旧工事は気仙沼市が2億2896万円で発注しました。竣工期限は28年2月29日です。
なお、森は海の恋人運動の畠山重篤さんの著書「日本〈汽水〉紀行」(文藝春秋)に、干潟や汽水域の大切さが紹介されています。