全長1キロの新気仙沼魚市場へ【事業費190億円】

産地間競争に打ち勝つため、気仙沼魚市場が約2倍の大きさになります。増設するのは海外輸出にも対応できる高度衛生管理施設で、閉鎖型とし、低温売り場も用意します。総事業費は190億円です。

■工事の入札は9月30日

新施設整備の概要は昨年6月にも報告しましたが、さまざまな調整が進み、建設工事が公告されました。入札は9月30日です。本体工事、電気設備、機械設備、外溝などを一式にし、29年3月31日の竣工を予定しています。

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気仙沼魚市場は昭和31年に、南町から現在地へ移転した時は320mの施設でした。老朽化によって、平成7年に北側施設(300m)、19年にA棟(124m)、21年にB棟(99m)が完成。南側の上屋(100m)が津波で全壊したこともあり、新たにCD棟(195m)、E棟(135m)を整備し、浄化施設を復旧します。新しい魚市場は全長900mにもなるのです。移転当初に比べたら3倍です。

■閉鎖型のCD・E棟を増設。低温売り場も

低温売り場もあるCD棟は、主に近海マグロはえ縄船や大目流網船の丸物(マグロやカジキ類)を取り扱い、閉鎖型のE棟は棒受け網船や旋網船のサンマやカツオを取り扱う計画です。見学用通路、クッキングスタジオも用意し、ホールでは水産業の情報発信に活用します。

img098閉鎖型施設ですので、出入りが制限され、室内と室外で使用するフォークリフトを区別するなどします。衛生管理が徹底される分、作業が不便になってしまうのです。これまでのように、床の上に魚を直接並べることもなくなります。

■トラックヤード、太陽光発電も

背後地にトラックヤード、屋上には太陽光発電パネルを整備します。搬氷、清浄海水、冷海水設備、防災倉庫、陸揚げ用ホイストなどの付帯設備を計画しています。復興と合わせて背後地を広く確保するため、臨港道路を内陸側にセットバックします。魚市場と臨港道路の間に、宮城県が防潮堤(海抜5m)を計画していますが、まだ合意が得られていません。

※下図は防潮堤計画説明会の資料です。震災前より魚市場用地が広がります。

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魚市場が大きくなる一方で、水揚げはかつて300億円に迫った水揚げ高は減少を続けています。近海船の減船や資源減少などによる影響で震災前には200億円を下回り、季節もののカツオやサンマの水揚げに頼る状態でした。水産加工場などの受け入れ態勢は不十分とはいえ、漁船はほぼ復旧したのに、昨年の水揚げは170億円にとどまっています。

■総事業費160億円⇒190億円へ増加

新しい魚市場の整備費用は復興予算が充てられますが、集中復興期間を過ぎれば約1億円の地元負担が想定されています。当初160億円だった総事業費は、建設費高騰などによって190億円に膨らみました。入札の結果が注目されます。

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■維持管理費は倍増

高度衛生管理となることで、衛生基準が厳しいヨーロッパなどへ水産加工品などを輸出できるようになるなどのメリットがあります。心配なのは、維持管理費です。市が26年11月の市議会東日本大震災調査特別委員会に示した資料によると、既存施設と新施設を合わせた維持管理費は年間1億2500万円(現行は5900万円)と倍増する見通しです。このうち市が負担するのは4700万円程度。既存の施設の現行負担は2900万円程度ですから、市にとっても大きな負担増になります。

市負担を除いた7800万円は、卸売業者である気仙沼漁協をはじめ、生産者、問屋、買受人などの負担を検討します。既存施設の負担は3000万円程度ですが、新施設の低温売り場、貯氷・砕氷設備、冷海水設備によって電気料金が大幅に増加する見込みなのです。浄化施設分は計算されていないので、負担はさらに大きくなる心配もあります。市場整備とともに、漁船誘致の取り組みが大切になります。

■説明会では「防潮堤計画の見直しを」

工事入札の公告後になりましたが、今月18日に開かれた説明会では、CD棟の低温売り場を丸物以外に利用できるように、協議会を立ち上げることが提案されました。市は「使い方は常に関係者で協議する必要がある」と賛同しました。

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また、気仙沼漁協から防潮堤計画について、市場と臨港道路の間ではなく、さらに内陸側へセットバックすべきとの意見が出ました。

世界三大漁場の1つである三陸沖に近く、しけに強い天然の良港を持つ気仙沼。復興も水産業を中心に進められていますが、新魚市場の維持管理費の負担増をカバーできるように、水産物の付加価値やブランド化でさらなる成果が求められていきます。

 

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