ないものはない宣言の海士町【視察報告】

2016年がスタートしました。年末年始は少しパソコンから離れ、家族でゆっくり過ごしましたので、約10日ぶりの更新になります。新年の最初の投稿は、市議会産業経済常任委員会で昨年11月に行った視察の報告です。12月定例会をはさんでずいぶん遅れてしまいましたが、注目を集めている海士町(あまちょう)には気仙沼に生かしたいことがたくさんありました。

■超過疎化から奇跡の逆転

001島根県隠岐郡にある海士町は、人口約2400人の小さな町です。日本海に浮かぶ離島で、本土まで60㎞、高速フェリーでも2時間かかります。島の面積は、気仙沼大島の約3倍です。約800年前に後鳥羽上皇が配流された歴史のある島ですが、人口はこの40年余りで半減。そんな「超過疎化、超少子高齢化、超財政悪化」だった町が、なぜ注目されるようになったのでしょうか。

きっかけは平成14年の町長選挙だったそうです。このままでは島が消えるという危機感から、地縁・血縁から脱却した選択で山内道雄・新町長が誕生し、役場は「住民総合サービス会社」として職員の意識改革が始まり、年功序列の廃止、適材適所、現場主義が進められました。

■「日本一安い給料で日本一働く職員」へ

財政再建団体へ転落する可能性もありましたが、平成の市町村合併には参加せず、島の生き残りをかけた「自立促進プラン」を平成16年に策定。町長が率先して給与を半額にし、それに職員(平均22%カット)が続いたといいます。そして、全国で最も職員給与の低い自治体になりました。

IMG_3720特筆すべきは「日本一安い給料で、日本一働く職員」を目指したことです。「職員が地域を変える」という意識が浸透した結果なのかもしれません。その様子を見ていた町民が、老人クラブの補助金を返上したり、バス料金の値上げを求めたりしました。町長、職員、住民が危機感を共有した結果でした。ある職員は「役所は国や県ばかり見て、楽な方へ向かっていたが、足元のまちづくり、住民の方を向き始めた。結局は役場の職員が汗をかかないと、まわりはついてこない」と振り返りました。

■「守りの改革」と「攻めの改革」

IMG_3708「守りの改革」である財政改革を進める一方で、産業振興と外貨獲得のための「攻めの改革」にも取り組みました。現場第一主義のもと、内部部局の職員を減らした分、産業振興と定住対策に重点化しました。攻めの実行部隊となる産業関係の3課を役場ではなく、島の玄関口にあるフェリーターミナルに置き、現場で答えを探しました。観光客は土・日曜日に来るので、365日いつでも職員がいるシフトを組みました。適材適所を大切にする町長は短期間の人事異動を嫌がり、10年近く移動のない職員もいました。

商品開発研修員によるさざえカレーの開発、岩ガキや隠岐牛のブランド化、税収2億円の町が2億円をと投資した新しい凍結技術「CAS」を活用した水産物の高付加価値化、海水からの塩づくり、高校の魅力化プロジェクト、公立の塾開設など、どれも紹介したらキリがない注目の取り組みばかりです。情報発信にも力を入れているので、詳しくはネット上の情報を入手して下さい。財政危機を脱し、いまは職員給与は元通りになっています。年間200団体の視察が訪れるほどの成果を上げたのです。

■注目の移住政策。引き留めなくても定着率50%

震災後に注目されているIターンの先進地でもあります。平成16年から移住対策に取り組み、体験用の住戸22戸を用意したほか、定住住宅50戸を新築。空き家のリニューアル、看護師住宅、公営住宅と合わせて計125戸を緊急整備しました。職員の給与カットで財源を捻出し、結婚祝い金(5万円)、出産祝い金(1人目10万円~4人目100万円)などの少子化対策にも力を入れました。

IMG_3691移住者は10年間で294世帯・437人に達し、定着率は50%。観光協会による視察の案内も、移住した若者が担当していました。観光協会はさまざまな事業を展開していて、特定人材派遣にも取り組み、案内した若者は観光協会から給与をもらいながら、3~5月は岩ガキ出荷、7~9月はホテルのレストランと客室係、11~12月はCAS凍結センターでイカの冷凍と加工品づくり、2~3月は干しナマコづくりをしているそうです。季節によって仕事量が変化する気仙沼でも、参考になる取り組みでした。

町の大江課長のお話では、集落支援員、地域おこし協力隊などでもたくさんの若者が移住していますが、無理に引き留めはしないそうです。「〝卒業〟して出ていくことは歓迎しています。外に出て応援団になってもらいたいです」との思いからは、移住者に対する感謝と親ののような思いやりを感じました。

トヨタの社員を辞めて移住した阿部裕志さん(36歳)は、「役場の課長、議員、移住者が一緒にいろりを囲み、地域のことを語り合っているのが面白いと思った。こんなことは都会ではない」と移住を決めた経緯を教えてくれました。イベントコンサル、企業や自治体の研修などの事業に取り組み、その経験から『都会で埋まれた仕事力×田舎で育まれた人間力=人間味のある社会+新しいチャレンジをできる田舎』という式を生み出しました。持続可能な社会のモデル、震災で加速した価値観の変化、田舎のセンスと都会のセンスをあわせ持つ人材など、いろいろなヒントをいただきました。

■「ないものはない」の2つの意味

IMG_3674海士町のキャッチフレーズは「ないものはない」です。この言葉には、「便利なものはなくてもいい」という地方で幸せになるための価値観、「生きるために必要なものはすべてある」という田舎の魅力が詰まっているそうです。

気仙沼も仙台や東京のような都会を目指さず、オリジナルな港町を目指しています。すべてを求めるのではなく、必要なものを守っていく姿勢を海士町で学びました。気仙沼は「陸の孤島」と交通の不便さを例えることがありますが、これだけ地理的に不便な海士町で移住者を増やせるのですから、気仙沼の可能性を感じました。

■隠岐の島町、境港市も

今回の視察は2泊3日の日程で、花巻空港から伊丹を経由して隠岐空港へ約5時間かけ移動し、初日は隠岐の島町で観光振興などを視察。翌日は隣島の海士町へフェリーで約1時間かけて移動。最終日は気仙沼と同じ特3漁港がある境港市で水産業のことを学びました。この視察には1人当たり約11万円の公費を使用しています。

IMG_3646隠岐の島町では、地元出身の新卒者を採用した事業者に月7万円を5年間支給する取り組みによって、地元就職者が2倍になったことに注目しました。Uターンにも奨励金10万円、6カ月間の家賃補助(月3万円)、50万円の住宅改修助成金も用意しています。

境港市は魚市場を開設しているのが鳥取県で、水産業の担い手育成のために県が基本給を補助する制度まで行っていることに驚きました。地元就職、水産業の担い手確保へぜひ気仙沼でも参考にしたいです。

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