気仙沼復興レポート023「震災5年目の防潮堤」

毎月公表している気仙沼復興レポートです。23回目は再び防潮堤問題を取り上げました。PDFデータはこちら⇒復興レポート23防潮堤の工夫と問題

震災から5年が過ぎようとしている中、気仙沼市内の防潮堤計画は9割の地区で固まりました。この1年でそのほとんどが着工することになります。その防潮堤が本当に必要なのか、必要だとしてもそのままの計画でいいのか、いまチェックしなければ手遅れになってしまいます。

レポート②で防潮堤の基本的な問題を取り上げたので、今回はその後の状況、具体的な問題を紹介します。地域との合意形成のためにさまざまな特例が認められた一方で、防潮堤の必要性そのものが疑問の地区もあります。一部の地区は市議会一般質問でも取り上げましたが、市民の関心がなければ変わらないこともあります。

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5 Comments

  1. 復興応援団

    お世話になります。
    お忙しい中、これだけの膨大な資料を整理され、的確な問題点を抽出されていることに関心しております。
    防潮堤計画に関しては、個人的に納得出来ない旨が多々あり下記に考えを整理しました。
    現時点で計画をチェックし、必要に応じて計画の見直し・検討しないと、これから施設を利用する子供達・孫達に迷惑をかけ、後世に負の遺産を残しますね。
    チェックする主眼・内容は各漁港により差異はあると思いますが、ある一定の共通指標を設定することが必要だと思っております。
    個人的には、安全面・利便面・環境面・景観面・防衛(犯罪抑止)面・維持管理面の6つ指標で大まかなチェック可能し、各結果を総合・相互に判断し計画を見直す必要があるかを判断する材料にはなると考えます。
    ・安全面:防潮堤を建設することで命・財産は守られるのか。
    ・利便面:防潮堤を建設することで、漁港施設の利便性は損なわれていなか。(今後、この漁港施設を利用する価値はあるか)
    ・環境面:生態系の影響及び高い防潮堤により風・波の反射がどのように影響するか
    ・景観面:高い防潮堤よる景観の悪化(道路から海が眺望できないなど)
    ・防衛(犯罪抑止)面:防潮堤により陸側から海が見えないことにより、防衛機能が損なわれないか
    例えば、陸から海が見えないことで密漁船や不審者の抑止効果が下がらないか及び誤った海に転落した場合の対策等
    維持管理面:年間維持管理費(立閘、水門の稼動確認及び貝などの剥離)が市単費で計上可能かなど

    各漁港において各指標の重みを調整することで、防潮堤の計画を見直す必要があるかを定量的に判断する材料にはなろうかと思います。
    最近、防潮堤に関して地元の人からこんな話を聞きました。「防潮堤建設に関して、賛成・反対の意見を述べると近所・地区が揉める種になるので、自分の意見を述べないようにしてます」
    これを聞いて、とても残念な気持ちでした。
    やはり、行政主導で事業を展開しないと住民関係が険悪になるような気がしました。
    先生が復興事業計画をご指摘頂くことが、気仙沼市の未来を明るく照らす光と信じておりますので、これからもご活躍を期待してります。
    乱文長文、失礼しました

    Reply
    1. 今川 悟 (Post author)

      アドバイスありがとうございます。
      共通指標は的を得ていると思います。気仙沼市で防潮堤ごとにチェック表をつくろうしていますので、今後の議論の参考にさせて頂きたいと思います。
      現場感覚で難しいと思うのは、安全面が優先されすぎていることです。しかも拡大解釈されています。そうした中で、メリットとデメリットをちゃんと整理していく上でも共通指標は有効だと思います。
      議論しにくい雰囲気はありますが、被災地の中で気仙沼ほど防潮堤問題と向き合っている地域はないと思います。もう残された時間はそんなにないので、より具体的な問題を提起していきたいと思います。

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  2. O.M

    先生、おはようございます。

    今回は、防潮堤というよりも、記事の後半部分、災害危険区域について質問があります。

    防潮堤と災害危険区域の関係性によって、地域住民に支援金が絡んだ無言の圧力がかかっていることは先生もご存じだと思います。
    私もこの意見に全面的に同調しますが、一方で、高台移転という、国の基本方針自体は間違っていないと感じます。

    それよりも、10年、20年先の未来ではなく、50年、100年先の気仙沼の可能性に思いを巡らすと、私が問題を感じる部分は、災害危険区域の硬直性です。
    海外にも災害危険区域という制度はありますが、その方針は「災害危険区域に住んでもいいですよ。しかし、支援金は絶対に出しません。必要な安全策はご自身で取ってください」というもので、日本のような「災害危険区域には絶対に住めません」というものではありません。

    私はこのような災害危険区域の硬直性は、街の発展性を、何よりも住民の自治意識の芽を積んでしまうのではないか、と懸念しています。
    ここは防潮堤ありなしの前提を度外視にして(残念ですが、作ることは既定路線なので…)、災害危険区域の概念の方を変更することで、住民の選択肢を増やす、街のあり方についてあらゆる可能性を残すことはできないでしょうか。

    記事では都市整備に視点があるように見えるので、今回は住民がどこに住めるかという視点から、先生のご意見を頂けないでしょうか。

    よろしくお願いします。

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  3. 今川 悟 (Post author)

    O.Mさんが指摘する「災害危険区域の硬直性」ですが、震災5年の議論の一つと感じています。
    そもそも災害危険区域による措置は「建築制限」なのに「建築禁止」のイメージで伝わっている問題もあります。1m未満の想定浸水域の中には、わすが数センチの想定のところもあるのです。1000年に1度の大津波で数センチ浸水するリスクをどう考えるかですが、このレベルなら普通の基礎で建築が認められます。
    2m以上の浸水深だと木造住宅は困難になります。憲法でいう「居住の自由」を正しく理解しているわけではありませんが、これだけ厳しい居住制限を地方自治体の条例で決めていいのかという疑問は残っています。しかも、自治体によって制限が異なっています。
    そもそも、堤防高の設定、危険区域の指定のための津波シミュレーションに対する疑問もあります。気仙沼市長は災害危険区域の見直しにあたり、シミュレーション結果に固執せずに柔軟運用する考えも示しています。

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  4. 復興応援団

    私も津波シミレーションの学術的に求められ数値は目安として扱う方が望ましいと思っております。
    今回の津波シミレーションで使用された津波の設定条件は、任意的及び不確定な要素が多く、多少の条件変更でm単位での誤差を生じないかと思っております。
    設定条件は、下記のとおりです。(参考文献:気仙沼市災害危険区域の指定等 H24.7.9気仙沼市) 
    1. 津波は東日本大震災と同じ様な震源域で同じ津波が発生したものとする。
    2. 潮位は東日本大震災の津波到達時の潮位とする。
    3. 東日本大震災で発生した地盤沈下は起こらないものとする。
    4. 現況地盤がTP+1.8m未満に沈下した地盤地域はTP1.8mまで盛土を行うものとする。
    5. 防潮堤及び河川堤防は宮城県で示している高さで整備されるものとする。
    6. 三陸縦貫自動車道が整備されたものとする。
    7. 土地区画整理事業を行う鹿折地区、南気仙沼地区住居系区域は、浸水しない高さまで盛土かさ上げを行う。

    また、本計算は防潮堤予定高のインプットのみで、防潮堤の構造(傾斜堤・特殊堤など)は考慮されていないと思われます。
    復興計画にあたっては、計算条件・過程・精度を認識した上でシミレーション結果の数字を取り扱う事が大事だと思います。

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