毎月11日に発表している気仙沼復興レポート第17弾です。PDFデータはこちら⇒復興レポート⑰復興事業の地元負担
今回は復興事業の地元負担を取り上げました。復興予算の問題は以前にも取り上げているのですが、震災から4年が過ぎて世論が変わり始めていることを感じたので、あらためて現在の状況をまとめました。 いろいろ不安はありますが、こうした議論ができるようになったのは、復興が進んでいるからです 。
レポートを通して、東日本大震災からの復興がどのような仕組みで支えられているか考えるきっかけになればうれしいです。
先生、失礼ではありますが、また質問させていただきます。今日、お聞きしたいのは、「首都圏vs東北」の構図から外れた地域が、今の東北をどう見ているか、という部分をお聞きします。
東北にいる限り、仮想敵として常に「政府」であったり「首都圏」を想定して、論を進めます。そこには、震災と今回の安保法制を無理矢理にこじつけた論調も存在します。ある意味では二項対立的な観念にとらわれているためと考えていますが、私はもう少し冷静な議論が必要だと感じています。
なぜなら、東北に対して直接声をあげることがない他地域の地方自治体がどう思うか、を敏感に感じ取らなければ、東北がかなり危うい立場になるのではないでしょうか。例えば…
阪神淡路大震災に比べて、比較にならないほど莫大な復興費用が当てられたことを、大阪・神戸の人はどう思うか。
まともに道路をつくれる状況にない地方自治体が多い中、東北が復興名目で震災前にはない道路をつくることをどう思うか。
そのような状況で、ある知事のように「全額国費負担が自立への唯一の道だ」と発言すれば、他地域の首長はどのように思うでしょうか。政争の駆け引きだから仕方がない、と納得してくれるでしょうか。
復興大臣の「他の地域では小さな道路さえつくれない」や、村井知事の「ケンカの仕方を間違えてはいけない」という類の発言も、そのような状況を察しているように思います。
私は、先生の活動のすべてを把握しているわけではありませんが、先生が知るかぎりでの首都圏以外の地方自治体の声というものを教えていただけないでしょうか。お願いします。
マスコミも地方自治体も、被災地に対して批判や不満を言えない状況がずっと続いていたと思います。いまだにたくさんの方々が行方不明だし、仮設住宅暮らしも長引いているのですから、それは当然のことだったのかもしれません。
そもそも被災地の復興の計画は複雑すぎて、私たち被災地の人間でも分かりにくいです。防潮堤問題は分かりやすかったので批判もありましたが、ようやく計画が形になってくると、批判にさらされる事業も少なからずあります。
首都圏以外の自治体からの本音は聞いたことはありませんが、阪神淡路大震災を経験して被災地を支援してくれる専門家の皆さんからはいろいろな声を聞いています。一番多いのはやはり防潮堤ですが、災害公営住宅の立派さも驚いています。戸建てとか間取りの広さとか、坪単価とか、いろいろな特例があったことが要因です。
これから心配なのは、道路です。避難道としての役割もあることから、交通量の割には広めの計画になっています。いまは渋滞だらけですが、三陸道もできると、一般道は閑散とすること間違いなしです。
被災地の財政事情も、被災地外ではよく分かっていないと思います。そういうところは、被災地は正直にオープンにしていくことが大切だと思い、今回のレポートでも取り扱いました。大臣の発言が取り上げられましたが、私にはだいぶ我慢してくれているという印象です。そのことに被災地も気づかなければなりません。
今回の震災は、衰退期の地方を襲ったという位置づけだけでなく、言論に対して過剰に反応する世相の中で発生した災害でもあります。東北人の気質もあって、本音を言わないまま復興が進むことに不安を抱いています。
今川先生、いつも丁寧な返答ありがとうございます。
私は、被災地で現在声をあげていない人々の思い、被災地外の空気を敏感に感じ取ることが重要と考えています。「権力対反権力」という図式に囚われてしまうのは危険と感じています。
『今回の震災は、衰退期の地方を襲ったという位置づけだけでなく、言論に対して過剰に反応する世相の中で発生した災害でもあります。』
この先生の言葉について、私も考えていました。過剰に反応する世相だからこそ、扱いにくいものに対するネグレクトや自粛のような状況も生まれます。私は、東北がそのような状況に陥っていないか心配です。
もし、首都直下型地震が今起これば、おそらくは東北に予算は回ってこない。そういう想像も私の中でよぎりましたので、繰り言かもしれませんが、先日のような質問をさせていただきました。
丁寧な回答本当にありがとうございました。