気仙沼市の議会改革について紹介します。
あまり目立っていないかもしれませんが、特にこの4年はコツコツと改革が進みました。
すでに実施済みのもので主なのは、
・議会基本条例の検証作業
・タブレット導入によるペーパーレス化
・常任委員会の再編
・常任委員会協議会の公開
・議会報告会の改善
・議員間討議の導入
・議会だよりの改善
方向性がまとまって実施予定なのは、
・議案や一般質問通告書をホームページで公開
・委員会議事録の公開
・人事院勧告にともなう期末手当改定の議員提案化
・議会広報編集特別委員会を来期から広報広聴委員会へ
・議員定数のあり方に関する審議会の設置
いずれも議会の機能を高めるための改革で、その成果は少しずつ形になっています。ひとつひとつの取り組みを説明します。
【議会基本条例の検証作業】
改革の原点は、平成23年7月に施行した議会基本条例にあります。この条例に基づく議会の取り組みを全議員が自己採点したうえで、課題を抽出し、改革を進めています。
議員間討議の導入、協議会の公開、広報広聴委員会の設置などは、こうした検証作業の成果です。
【タブレットの導入】
タブレット端末は平成27年から検討を重ねた結果、令和2年8月に導入しました。詳細は議会だより60号にあります。
議会で配布される議案書や予算書などの膨大な資料が電子化され、ペーパレス化されるとともに、会議開催通知等の郵送を電子メールに切り替えることができ、効率化と経費節減が図られました。
今では当局側もタブレット端末を使用しています。
タブレット端末の導入に合わせて資料が電子化されたことで、議案書を等をホームページで公開する議論も進みました。また、コロナ禍に対応したオンライン会議も行えるようになりました。
【常任委員会の再編と協議会の公開】
常任委員会は「総務教育」「民生」「産業経済」「建設」の四つがありましたが、今任期の折り返しとなった令和2年5月から「産業経済」と「建設」を統合して「産業建設」に再編しました。
再編前は各常任委員会の定数は6人でした。進行役の委員長を除くと、5人で議案審議することになり、3人が賛成しただけで議案が認められてしまいます。欠員が出るとさらに少数になります。復興事業が落ち着いてきたので委員会数を減らし、議論をより深めるために定員を8人に増やしました。
常任委員会協議会は、当局から新たな取り組みなどを説明する場だったために非公開となっていましたが、議会基本条例の考えに合わせて公開することにしました。
【議会報告会の改善】
議会報告会は年に1度、3日かけて全地区で開催していました。しかし、市道整備をはじめとする当局への要望が多く、その在り方を見直すことになりました。
毎年5月に開催していた議会報告会に加えて、令和元年11月に「市民と議員の意見交換会」を初開催しました。常任委員会ごとにテーマを決めて、ワークショップ方式で市民と議員が意見交換できる仕組みです。
意見交換会には33人もの市民が参加し、8テーブルに分かれて意見を出し合いました。その後の議会としての取り組みは、常任委員会ごとに議会だよりで報告しました。(写真は市議会HPから)
令和2年、3年は新型コロナ感染拡大防止のため、議会報告会、意見交換会とも中止になりましたが、委員会を中心とした政策立案サイクルの確立へ向けて大きな一歩になったと思います。
【議員間討議の導入】
議員間討議(自由討議)とは、会議の中で議員同士が意見を出し合うことです。議会として課題や疑問点を整理する手法で、市当局に対して議会として問題提起もできます。
市長と異なり、議会の権限は個人ではなく組織に与えられています。議会基本条例では「議案審議等で結論を出すにあたっては、合意形成に向けて議員相互の議論を尽くすよう努める」と定めており、試行期間を経て、令和元年9月から常任委員会審査に導入しました。
それまでは、議員個人で質疑して当局から答弁を得た後、賛成・反対の討論を経て採決していました。質疑と賛成・反対討論の間に「議員間討議」を挟むことで、組織として附帯意見を決議したり、議案の修正を求めたりできるようになったのです。
【議会だよりをより見やすく】
議会だよりも様変わりしました。
かつては全ての議案を掲載して、質疑は別なページに分けていましたが、注目度の高い議案を選んで、議案内容と質疑をセットにしました。さらに必要に応じて解説文を加えました。
全議案は一覧表に整理しました。字も少し大きくしています。
事務局任せにしないで、できるだけ議員が記事を書くようにしたことで、争点をより分かりやすく伝えるようにしました。予算や決算、議会報告会などはレイアウトを工夫して、見やすくしまた。
【議案書、委員会議事録等のホームページ公開】
要望の多かった議案書のホームページでの公開は、次の2月定例会から対応する予定で準備が進められています。一般質問通告書も公開する予定です。
議事録は本会議のみ公開されていましたが、今後は委員会も公開していきます。
気仙沼市議会は「委員会主義」のため、本会議での質疑よりも、議案が付託された委員会での質疑を優先させています。しかし、肝心の委員会は議事録が公開されず、ケーブルテレビでの中継もないため、市民はマスコミの報道でその中身を知ることしかできませんでした。記録としても重要なデータになると思います。
【期末手当改定の議員提案化】
人事院勧告に基づいて市職員の給与や期末手当が改定される場合、市長や議員の期末手当も一緒に改定されています。
改定には条例改正が必要ですが、これまでは議員の分も当局から提案してもらっていました。しかし、今後は議員提案する方針でまとまりました。新型コロナの影響で令和3年度分の改定が見送られたため、令和4年度から実施される予定です。
【広報広聴委員会への改組】
議会基本条例では、議会内に広聴と広報の機能穂持つ組織を設置することになっていますが、気仙沼市議会には議会だより編集のための特別委員会しかありませんでした。
広聴機能の一つである議会報告会は、議会改革調査特別委員会で担当してきましたが、来期は広報広聴委員会を設置する方針がまとまりました。
議会だより編集の特別委員会は5人で構成していますが、新たな委員会は8人態勢とします。議会だよりの編集だけでなく、議会報告会のとりまとめ機能も担います。
【議員定数のあり方に関する審議会の設置】
震災復興と地方創生という難題、そして議会機能の強化を優先してきましたが、人口減少がどんどん進む中、議員定数の削減を求める声が聞こえてくるようになりました。
気仙沼市議会の議員定数は30人でしたが、平成26年から24人に減らしました。2年前に委員数を増やすために常任委員会を再編したぱかりで、議員の中にはさらなる削減に慎重な意見もあり、令和2年3月の会派幹事長等連絡会議では「定数見直しは時期尚早」との結論に至っています。
議会基本条例では、定数を改正する際には総合的な検討を行うよう定めています。なぜ減らすのか、人件費削減というメリットだけでなく議会機能への影響などデメリットもしっかり議論し、市民や専門家の意見も踏まえて決めるように明記してあります。
つまり、議会として定数見直しを調査・議論しなければならないのですが、現状維持と削減で議員の意見は割れていて、議論を始める糸口を見つけられそうにありません。そこで、埼玉県所沢市や滋賀県米原市の事例を参考に、市民や専門家による審議会を設置して、定数の見直しが必要かどうか諮問する仕組みにたどりつきました。
申し訳ありませんが、今期中は審議会条例の制定のみで、審議会設置は来期(令和4年5月以降)になります。まずは一歩前に進むことを評価して頂ければ幸いです。
なお、審議会設置条例案に対するパブリックコメント(意見募集)を1月21日から2月10日まで実施しています。審議会の委員数は8人、遅くても改選1年前まで結論を出すために任期は令和7年3月末となっています。
これまで紹介した議会改革は、議会運営委員会、議会改革調査特別委員会でまとまりました。何度も会議を重ねた結果です。改革によって議会の機能が発揮されるとともに、市民に開かれた議会づくりが実現していきます。