気仙沼市議会9月定例会が終わり、そのまとめ作業に集中しています。まずは一般質問の結果をまとめましたので報告します。議案関係のまとめは後日報告します。
今回の一般質問は、新月ダム計画が中止されてから取り組んできた水源開発に目途がつきましたので、水道料金の改定と合わせて状況を整理するための質問をしました。事前調査では、水源開発に48億円もかかったことが水道料金引き上げに影響しているという感触でしたが、答弁ではダムの負担金とあまり変わらないということでした。
冷静に考えれば、そもそもダムも水源開発もいらなかったのではないかと指摘もあるかもしれませんが、まもなく水源開発が終わりますので、検証にとどめ、今後は水道事業の将来ビジョンについて議論をしていきたいと思います。
【災害危険区域の見直しについても質疑】
新月ダムと同様、将来に思いを伝えていかなければならない災害危険区域の問題も取り上げました。詳細は8月22日のブログにまとめてありますが、防潮堤があってもなくても災害危険区域は変わらないという結果は信じられなく、具体例を挙げて議論しましたが、うまくかみ合いませんでした。
この問題は継続して取り上げていくつもりで、今回の答弁内容をじっくり分析していきます。
【放課後こども教室はモデル事業検討】
このほか、小学校への放課後こども教室の導入を提案したところ、モデル事業として検討することになりました。放課後、空き教室や校庭などを活用し、地域の大人が子どもたちに勉強やスポーツを教える仕組みで、それを調整するコーディネーターも配置できます。学童保育と連携して成果を挙げている市町もあり、今後も注目していきます。
一般質問の詳細は下記の通りです。
今川悟一般質問(概要) 2019.9.25
1.放課後こども教室の導入について
急激な少子化などにより、小学生の放課後の過ごし方が変化しています。同じ行政区に同級生が1人もいないというケースが増え、空き地も消えていく中、近所の友人と気軽に遊ぶ機会も場所もないという環境となっているのです。共働き世帯の増加、高齢者の就業、核家族化により、家庭での過ごし方も変わってきています。そこで、注目したいのが「放課後こども教室」です。余裕教室などを活用して放課後の居場所を提供する取り組みですが、学童保育と異なって誰でも利用でき、コーディネーターや地域ボランティアによって様々な体験やスポーツを楽しめることから、子どもの可能性を伸ばす場としても期待されています。学校統合後に運行されているスクールバスの待ち時間を過ごす場所にもなるなど、さまざまな効果が期待されることから、導入を期待して次の3点について質問します。
質問① 気仙沼市内の小学校に放課後こども教室を導入するメリットとデメリットをどのように考えているのか説明を求めます
小山教育長 放課後こども教室導入のメリットとデメリットは、地域の協力を得て放課後等に学習支援や多様なプログラムを実施することを目的とするものでありますことから、学校教育では経験できない体験活動やスポーツに参加する機会となるほか、近所に顔見知りの大人が増え、防犯面での効果も期待できます。
また、家庭の保育状況によらず、すべての児童が参加できるため、学童保育に入所できない児童にとって、放課後等の居場所となることもメリットと考えています。しかし、学童保育と異なり、必ずしも毎日実施できるとは限らないなど、安定的な保育の面で、保護者の期待に応えることができない部分も生じると捉えています。
質問② 国が策定した「新・放課後こども総合プラン」では、全ての小学校区で放課後児童クラブ(学童保育)と放課後こども教室を一体的または連携して実施することを目標としています。放課後こども教室の実施、学童保育との一体化・連携について、気仙沼市の検討状況を伺います
小山教育長 放課後こども教室の検討状況についてですが、現在、本市では放課後こども教室を補完する事業として、小学校14校のうち10校、中学校11校のうち10校で学び支援コーディネーター等配置事業による放課後学習教室を実施しているほか、協働教育プラットフォーム事業において地域住民等の参画により、地域と学校が連携・協働しながら様々な学校支援活動を実施し、地域全体で子どもを育てる環境づくりを進めています。
放課後こども教室は、活動の企画、学校・地域との連絡・調整役を担うコーディネーターの配置等、地域の方々の参画による仕組みづくりなどが課題となりますが、他の自治体の例も参考としながら、まずはモデル事業としての実施を検討し、その中で「新プラン・一体型」についても研究してまいります。
質問③ 少子化の中、陸前高田市のように教育委員会が小学校の環境整備などを手伝う有償ボランティアを募集して成果を挙げている例もありますが、気仙沼市でも学校の維持・管理、放課後活動にボランティアを募集する考えはありませんか
小山教育長 学校の維持・管理、放課後活動へのボランティア募集については、児童の学びを支援するだけでなく、地域の方々の生涯学習や生きがいづくりに資するものであり、コミュニティの強化にもつながるものと捉えています。実施に向けては、地域の方々の参画が不可欠であり、現在実施している協働教育プラットフォーム事業の枠組みを活用することについて検討してまいります。
今川 6月の一般質問で話した通り、児童館の課題を調べるうちに放課後こども教室の必要性に気付きました。児童館が学校の近くになかったり、ない地区もあったり、そもそも下校してから閉館まで時間がなかったりしているので、学校の空き教室を活用して子どもたちが過ごせる場所づくりを提案しました。児童館の代替措置として予算を手当てしてほしいのですが、協働教育プラットフォームは復興予算に頼っていることが継続の面で心配です。なお、モデル事業はいつごろからスタートする考えですか。
熊谷生涯学習課長 ご相談したいという話をいただいいており、来月からその方たちとお話しの機会を持って、なるべく早い時期に実施したいと考えています。プラットフォームの財源は来年度までは復興予算で国から100%出ていますが、それ以降は国県市がそれぞれ1/3ずつ負担する補助事業の活用を検討したいです。
今川 学びの支援コーディネーターとかプラットフォームとか、いろいろなものを一体にすることによって財源が使いやすくなると思いますので、事業の整理をお願いします。国の資料では、コミュニティスクールの到達点であると書かれています。学校に地域が参加したあと、何をするかというときに放課後子ども教室に協力していくことができます。コミュニティスクールを導入したところでは、放課後こども教室を考えてください。コミュニティスクールとの関係はどのように整理していますか。
齋藤学校教育課長 コミュニティスクールの目指すべき形であると考えています。学校だけによる学校教育だけではなく、地域の方々の支援を受けながら参画してもらうという意味では、子どもたちのためというベクトルが一致していますので検討していきたいと思います。
今川 一つ一つを切り分けないで総合的に進めてください。最後に確認ですが、来月から話し合いをするということは、来年度を待たずに取り組める状況なのですか。また、県内では多くの学校で導入されていますが、保護者と一緒に視察して参考にするということは検討して頂けますか。
熊谷生涯学習課長 導入時期は、地域の参画が大変重要ですので、状況を見極めて判断したいです。視察は話が出れば検討します。
今川 モデル事業ということですから、その成果を発表する機会を設けて、市内のすべての小学校に広がるようにお願いします。特に学童保育との連携がうまくできると、子どもたちの可能性を伸ばせる場所となる。学校が楽しいと思ってもらえることが最終目的だと思いますので、総合的な議論をお願いします。有償ボランティアですが、プラットフォーム事業を活用するということは市内どこでも可能性があるということでよろしいか。
熊谷生涯学習課長 プラットフォーム事業は各公民館が核となって進めていますので、その中でいろいろ検討していきたいと考えています。
今川 2018年度決算ではプラットフォーム事業に執行残がありましたが、せっかくの復興予算を残さないように本年度からでも検討できますか。
熊谷生涯学習課長 学校のニーズとボランティアを担っていただける地域の方々とのマッチングもあるので、十分に把握したうえで進めていきたいと考えています。
2.水道料金改定と新月ダム計画について
復興期間終了後の水道料金改定へ向けた検討が本格化しています。今年3月に策定した気仙沼市水道事業経営戦略では、23.5%の値上げを前提とした長期収支を試算しましたが、料金改定に市民の理解を得るためには丁寧な説明と議論が必要です。また、値上げの一因には、新月ダム計画の中止に伴う水源開発などもあり、経緯を検証するとともに、一連の水源開発事業の終結に向けて、あらためてダム計画中止によって守られた渓谷や水源の森に目を向けることも大切です。そこで、次の4点について質問します。
質問① ダム計画の中止により、舘山から新月浄水場への送水施設整備、松川の地下水開発などに計48億円ほどの事業費がかかることになりました。その費用は市の負担でほとんどが借金のため、水道経営を圧迫しています。計画中止の段階で、これほど市の金銭的負担が大きくなることは想定していましたか。また、新たな水源開発の費用と水道水の生産コストは水道料金改定にどれほど影響しているのか説明を求めます
菅原市長 新月ダムの建設中止を受け、水道事業では水源開発施設整備事業を計画し、平成18年度から事業を実施しております。ダム計画中止の段階で、これほどの金銭的負担を想定していたかについては、水源開発施設整備事業の総事業費は当初で既に約43億円でありました。これまでに物価上昇や設計の一部見直し等により、5億円増額し、現在の計画における総事業費は約48億円となっています。また、仮にダム計画が中止されなかった場合は、新月ダム建設事業の総事業費340億円のうち、宮城県と締結した協定により、13.2%、44億8800万円が本市水道事業の負担額とされていました。
新たな水源開発の費用と水道水の生産コストは水道料金改定にどれほど影響しているのかについては、水源開発施設整備事業のこれまでかかった総事業費が、ダム負担金より小さく、その発生も遅いことから、今までのところ影響がなかったと言えます。
水道料金の改定への影響でありますが、現在の水道料金は昭和58年10月以来、料金改定を行っていないことから、この間に生じた企業債の償還分は現預金額の変動も含め現行料金内で賄ってきたということになります。
令和3年度からの改定を予定している水道料金の改定作業においては、今後の5年間程度の収支見込みに基づき、料金の改定率を算定していくことから、水源開発施設整備事業の実施のために発行した企業債の令和3年度から令和7年度までの元利償還見込額や、供用開始後に建設仮勘定から資産化する当該資産分の減価償却費が影響することになります。ただし、その影響分はダムができていた場合でも、時期にズレはあるにせよ近い規模で発生していたものであります。
なお、気仙沼市水道事業経営戦略において、水道料金改定率を23.5%と仮定した試算を行っておりますが、この改定率は経営利益が生じる水準であるほか、減価償却費等の非現金支出費用も加味したうえで、投資の回収を通じた内部資金の留保が可能な、将来の更新投資に備えることができる水準を前提として算出したものです。
質問② 新月取水口の暫定豊水水利権は本年度までの期限ですが、延長について県との交渉の状況をお尋ねします。最終的に権利を失った場合の新月取水口とポンプ場は撤去することになると思いますが、舘山からの標高差50mの送水コストを考えると、主力化を目指している新月浄水場近くの安定水利権を諦めることはできません。安定水利権確保へ長期的なビジョンを持って取り組むとともに、効率的な取水と送水のための水道施設の将来的な配置を示すことが大切ですが、市の考えを伺います。
菅原市長 新月取水口での暫定豊水水利権の許可期限延長については、平成31年2月22日付で宮城県に延長申請を行い、同年3月27日付で令和5年3月31日までの期限延長について許可されております。
新月取水口での安定水利権の確保については、河川管理者との協議では現在取水しております新月取水口地点での河川流量では、下流域で使用している既存の慣行水利権使用者に影響することや河川維持水量が不足することから、安定水利権とすることについて、認められておりません。そのため、新月取水口及びポンプ場については、暫定豊水水利権の失効により撤去することとなりますが、河川管理者との協議を行い、水源開発施設整備事業の終了後に行う予定としております。
また、水源開発施設整備事業では、老朽化が進んでいる舘山浄水場の負担軽減も含め、新月浄水場を主力とする計画で現在整備を行っています。舘山浄水場から新月浄水場までの導水については、新月浄水場が高台あるため導水ポンプの動力費が増加しますが、新月浄水場から配水することにより、舘山浄水場の緩速ろ過施設の廃止及び既存の増圧ポンプ施設の統廃合が可能となることから、維持管理経費の削減が図られます。他の施設についても更新時期等において現状に見合った施設整備を検討してまいります。
質問③ 新月ダム計画の議論は、水源流域の自然や文化の大切さを見直すきっかけになりました。新たな水源開発事業は2022年度末に完了する見通しが立ち、新月ダムに関連した問題に半世紀を経てようやく終止符を打つことになります。賛否はありましたが、先人が守った新月の渓谷と森林を気仙沼市の財産として大切にすることが、我々の使命であり、水道料金改定とともに議論しなければならないことだと思います。「新月地区新しい郷づくり計画」はダムの中止とともに棚上げされましたが、市民の水源として新たな保全・活用策を検討することについて市の考えを伺います
菅原市長 新月の渓谷と水源の森については、大川水系は市民生活にとってかけがえのない財産であり、水源保護や環境保全に積極的に取り組むべきものと考えております。
新月ダム計画の中止に伴い、新月地区新しい郷づくり計画策定の話はありましたが、実現には至りませんでした。その思いを受け継ぐ形で平成16年には地元自治会や用水路組合、PTAのほか、大川漁協やJR東日本、商工会議所、観光協会、市などにより新月渓谷環境保全整備検討委員会が組織され、大川の中流域に位置する新月渓谷の環境保全や活用について検討されています。同委員会の提言による新月渓谷への散策路の設置については、増水時の安全性や費用等から見送られましたが、渓谷の美しい景観をJRの車窓からゆっくりと眺められるよう、JRにより樹木の伐採や運行速度を落としていただく配慮がなされたところであります。
このようなことから、市民をはじめ多くの人々に新月渓谷の美しさとともに、環境保全の大切さが伝わったものと推察され、今も変わらず、自然そのものの景観が維持されております。今後も、地域や学校、事業者等と連携し、大川水系を含む水道水源の水質保全管理の徹底や環境保全活動の推進を図ります。また、適正な森林施業を実施することで、水源涵養に努めてまいります。
質問④ 「復興期間終了後」としていた水道料金改定について、今後の手続きの流れと具体的なスケジュールを示してください
菅原市長 水道料金改定の今後の手続きの流れと具体的なスケジュールについては、料金改定作業についてはガス水道部内に設置する経営改善検討チームを軸として進めることとしており、そのスケジュールは復興期間終了後の令和3年4月から改定することを目標として、令和2年1月末をめどに、今般策定した経営戦略からさらに踏み込んだ経営改善項目の設定、財務分析、経営分析、収支推計を行い、事業経営のための必要額を確定します。
この推計をもとに令和2年2月から7月までの6カ月間で複数の改定パターンを作成し、比較・検討を行い、翌8月に本市の内部決定、9月に市議会への説明を行い、10月に運営審議会への諮問・答申を経て、12月開催の市議会定例会へ水道料金改定に係る条例改正議案を提出し、可決いただいて令和3年4月1日に料金改定を目指すものです。
この間の作業について少し加えますが、きのう臼井議員とのやりとりでもありましたが、本市が行っているさまざまなハード事業が合理的と判断されるものなのかということは、我々はそのつもりでやっていますけど、市民の皆さん方に分かりやすく説明できるということが必要だと思います。なぜここにポンプ場が必要なのか、なぜここに水を一回貯めなければいけないのか、市民の皆さんに確認してもらう必要があると思います。そのことに加えて、老朽管について施設更新を先送りするという提案もあったが、先送りした後にその地に誰も住まなくなるのであれば構わないが、そのことを検証しないわけではありませんが、いずれするということになれば、それは先送りの先送りになってしまいます。内部検討はしてみたいと思いますが、そこに大きな比重はおけないのかなと思っています。
今川 内容が多岐に渡るので一つ一つ確認していきます。最初に新月ダムとの関連ですが、ダムをつくるよりもコストが下がっているというのは意外な答弁でした。そういうことを検証していくために今回質問しましたので、いまの答弁をあとでゆっくり考えたいと思います。暫定水利権についてもダムありきで新月浄水場をつくりましたので、それも送水コスト増加に影響すると思っていたのですが、それも高いところから配水した方がコストがかからないという答弁も意外でした。それでも、できるだけコストを下げるために近くから取水したいはずです。答弁ではそれを諦めているという内容でしたが、時間が経過し、諦めずに活動する猶予はないのですか。
菅原市長 水源開発に48億円が最終的にかかるだろうということになっている一方で、ダム建設による負担金が水道分として44億8800万円ということで、金額だけを見れば同じくらいということが言えないこともないです。ダムをつくった場合はもう少し早めに請求書が回ってきたかもしれないということで言えば、いままではまだ48億円かかっていないので、現時点での影響は少し軽かったと計算されるだろうという答弁をしました。暫定豊水水利権は議員の多くの方も初めにこの問題に直面すると思うし、私も市長になってから何度も同じことを職員に聞いてきました。そのたびに豊水水利権というものが極めて危ういものであり、実際にそのことは本来であればすぐにでも切り替えなければならないものですという答えでしたし、県との折衝もまさしくその通りであります。一方で人口が減っていくということも含めてどうなのということを検討してもらったこともありましたが、答えは同じでした。諦めたかということについては、私は諦めました。というのは、すでに48億円のうち数割は投資してしまっているので、ここからやり直すことの方が長い期間の水道経営に対してはプラスにならないというか、大変な窮地に陥ると思います。ましてや松川の地下水のくみ上げは地域の理解を得ながらあらためて作ったものですから、水源開発を完遂させたうえで、全体の経費がどこまで下げられるかということについて注力していかなければいけないと思っています。
今川 いまの整備状況を見れば取りやめてということにはなりません。水道ビジョン(2014~2023年)では50年、100年先の理想像も考えていこうとしており、いずれは新月浄水場も舘山からの導水ポンプも更新の時期を迎えますので、そのときには本当の理想の水源の在り方を今から見据えていかなければならない。新月浄水場から配水を前提にポンプ場を統廃合するといっているが、新月から抜けられなくなることがないようにしてほしい。取水が舘山に限定されるのであればなおさらです。そう思うと私は諦めきれません。水道料金は目先の収支だけでやっていくわけにはいかず、広い視野を持ってほしい。次の水道ビジョンの改定作業の中で検討できませんか。
菅原市長 100年先といえば、諦めたとしても復活というか、それこそ白紙で検討することになるので、有力な候補だと思います。その間にいろんなテクノロジーが発達して、唐桑と本吉はどうするのかということも含めてトータルの考え方ができると思います。水源が違っているので容易ではありませんが、より広域的な事業も当然起こってくるだろうと思っています。
今川 ダムに振り回されたとしても、水道事業を振り返るともっとビジョンがあったらと思いました。この次の計画は理想像を追ってほしいです。そういう意味でダムから守った新月の森の話なのですが、ここの水源涵養林を守っていくことによって将来の安定水利権につなげてほしいと思います。100年先に大川をもっと豊かにして、もう少し上流から取水できることに取り組むことが、本当の100年先の理想像だと思います。上流域にもっと関心を持つことが必要です。施設整備は難しいという話でしたが、そういうことではなく、水道の受益者が上流に関心を持ち、市全体で水源を守っていくという意識が大事だと思いますので再考してほしいです。市民に関心を持ってもらうための企画を考えられないでしょうか。
菅原市長 偶然ですが今朝、私の机の上に熊谷龍子さんの新しい詩集がありました。四百何十編あるということでしたが、畠山重篤さんの森は海の恋人の最初の本で森と海の関わり、気仙沼市の森林を含む山の自然の豊かさについて極めていきいきと表現されていました。きょう見せて頂いた歌集においては、人の情感を含めて一つ一つとても読み応えのある詩が連なっていました。そういうことを感じるということが気仙沼市を含めた地方に生きる者の豊かさの一つであろうと思いますので、いまここでどんな事業をしますということを話せる準備はできていませんので、とっても大切にしていきたい気仙沼市の風土だと思っています。
今川 新月ダムの歴史を調べると、上流の関心を持たなかった経緯が賛否を巻き起こしたとていうことでしたので、水道を通して上流に関心を持つ取り組みを考えてほしいです。
最後に水道料金改定に向けたスケジュールですが、改定の半年前の9月の議会説明で値上げ率が見えてくることになるが、事業者はなるべく早く、できれば1年前には改定率を示してほしいといっている。市民に向けた情報発信はどうしますか。
熊谷管理課長 市民へのPRは改定率を検討している段階においても有力候補や経過をHPで逐次示していきたい。令和3年4月まではタイトなスケジュールのため、1年前にというのは難しいと思いますが、検討の流れは示していきたいです。
菅原市長 水道運営審議会もあり、大変大きな問題です。昭和58年から改定していないので当たり前だという姿勢はよくないと思いますので、大変厳しい状況の中で令和2年度末までは復興期間なので我慢するんだということで進めてきました。その時間はあるという風に我々は考えなければいけませんので、実際にはたぶん、この一つで行きますということをいきなり出すことは良くないと私は思います。何年かに分けてやるとか、数段階とか、1段階、2段階とかあります。そういうことも含めて、また、先ほど23.5%が何を意味するかということも報告しました。企業会計の話の中で、どこを目標にするのかということは議員も場面によってさまざまに感じられると思いますし、我々も様々なんだと思いますけれど、基本的には収支で累損を出さないという線になると思いますが、常にそうしなければならないのか、いったんは少し我慢するということもありなのか、数字を見ながらどの時点かで審議会等に示しながら修練していくことを考えますと、10月というのは最終形だと思います。その前に目に見える形でのプロセスが出る方が私はスムーズに市民の皆さん方にも受け入れてもらえるという大きなことだと思っています。
今川 検討の過程をオープンにするのが一番だと思います。大口だと年間1900万円くらい使用する事業所もあり、2、3割の値上げは大変な痛手です。支援策も同時に考えてください。また次の機会に議論します。
3.災害危険区域の問題点について
多くの海岸で防潮堤計画が変更されたことなどを受けて、気仙沼市は災害危険区域の見直しを検討するため、津波シミュレーションを再度実施しました。そして、8月9日の東日本大震災調査特別委員会で「想定浸水区域に概ね大きな変化は確認されず、現行の災害危険区域を維持する」と説明しましたが、このままだと防災面で不安があるため、次の3点について質問します
質問① 防潮堤があってもなくても想定浸水区域に大きな変化はないという結果は、再シミュレーション結果が示されないので素直に信じられません。今年2月の一般質問では「シミュレーション結果の公表については、差異の扱いについて学識経験者から見解を頂くなどして判断したい」と答弁しています。「想定浸水区域が拡大したエリアに建物がなかった」という結果と合わせて、シミュレーション結果について学識経験者や第三者のチェックは受けていますか。市の対応を伺います
菅原市長 津波シミュレーションの結果については、本市のようにリアス地形を有する海岸地域では、シミュレーション結果が今次津波実績とは一致しない箇所が当初より生じておりました。
シミュレーションで使用する再現プログラムは、一般的には津波再現精度として良好であるとされておりますが、一方で、本市のような複雑な地形を有する地域では、再現精度が低くなる場所があります。このようなシミュレーションの想定浸水区域の差異の取り扱いについて、学識経験者から一般論として参考意見を伺ったところ、「国等の調査結果から浸水深2mを超えると、建物被害の発生の恐れが高まることを考慮し、想定浸水区域が拡大する箇所について、浸水深2mまでは柔軟な対応を市がとることはありうる」との見解を頂いております。
このように、津浪シミュレーションは不確実性を有していることや、学識経験者からの参考意見も考慮しながら、想定浸水区域が拡大したエリアに、影響のある建物は基本的にないことを確認したうえで、本市は先月の東日本大震災調査特別委員会でも説明しておりますが、現災害危険区域を維持することとしたところです。なお、一部について更なる安全確認のための精査をすることについてもお伝えしたところであります。
質問② 災害危険区域は想定浸水区域だけでなく、想定浸水深も大きな意味があります。危険区域内であっても、想定浸水深より高い場所に居住スペースを設けるなどした場合、除外認定によって建築が認められるからです。リアス式海岸の地形が功を奏して、想定浸水区域が大きく変化しなかったとしても、想定浸水深が変化していれば、災害危険区域を見直さないと公正公平な規制とはなりません。想定浸水深が1m以上変化した海岸は何カ所あったのか、また、その対応について説明を求めます
菅原市長 浸水想定深が1m以上変化した海岸については、まずシミュレーション結果の公表を行うと、災害危険区域がシミュレーションの結果の通り見直しされるものと市民に誤解を招く恐れがあることも、結果の公表を行わないとした理由の一つであります。従って、浸水深が1m以上変化した海岸についても、位置や箇所数に関する公表を控えさせていただいております。
シミュレーションの結果、浸水区域が拡大したエリアにおいて、浸水深の変化が建物被害にまで及ぶ懸念がある箇所については、海岸からの距離や、津波防護施設の状況等、個別の宅地で条件が異なることから、必ずしも画一的に判断できない状況を鑑み、現地調査により、今次津波の浸水状況などを踏まえながら、諸条件を勘案した上で、判断しておりますが、現時点において、対象となる住宅がないことを確認しています。
質問③ 防潮堤計画の変更に伴う説明会の中で、変更後の防潮堤で新たな津波シミュレーション結果が示された地区がありました。このうち鮪立漁港では、現行の災害危険区域が海岸線に海抜9.9mの防潮堤ができることを前提に設定しており、セットバックして海抜8.1mに変更すると、防潮堤を超えてくるレベル2津波の量が70倍になる結果が示されました。その後、防潮堤の延長を短縮する計画変更の際も、想定浸水区域がさらに拡大する結果が説明されていますが、その後の対応について地域へ説明する考えはありますか。また、災害危険区域を変更しないと、防潮堤の海側であっても除外認定によって民家を建てられることになってしまいます。これは小鯖漁港も同じです。震災特別委員会では「除外認定についても最初のシミュレーションどおりの基準で行うことしか道はないと考える」と答弁しましたが、こうしたケースに対応するため、除外認定に当たっては浸水想定だけでなくさまざまな状況を総合的に判断するための審査機関設置などが必要と思います。市としてはこの課題にどのように対応していくのか説明を求めます。
菅原市長 防潮堤計画決定時に想定浸水区域が拡大する結果が説明されている地域への説明の考えについては、当初津波シミュレーションの結果と比較し、内部にて検証が必要な差異が生じている箇所については、現地調査や今次津波の浸水履歴と照らし、原因について今後確認することとしておりますが、現時点においては、建物被害が発生するおそれが高い宅地が判明した際には、所有者等へ状況等の説明を行うことと考えており、地域への説明については実施する予定はありません。
防潮堤より海側での建築制限適用除外認定については、災害危険区域に係る建築制限は、防潮堤を超えてくるL2津波の影響を想定しており、防潮堤手前の海側については、海岸法に基づく規制が加わることから、ご指摘のようなケースは各海岸管理者の判断も踏まえながら、対応する事案と考えております。なお、宮城県の「漁港及び港湾の海岸堤防に係る整備位置決定の為の指針」においては、堤外地における住宅の建設は避ける趣旨の記載があり、本市も同様の考え方であります。
また、建築制限適用除外認定については、原則として住宅等の建築を制限する災害危険区域において、市が例外的に建築を認める規定であることに鑑みますと、審査機関の設置については、災害危険区域内における住居の用に供する建築物の禁止という、建築基準法本来の目的と合致しないものであり、適切でないと考えております。
今川 再シミュレーションの結果に大きな変化はなかったと説明している一方で、誤解を与える可能性があるので公表は控えるということに矛盾を感じます。たいして差がないのであれば公表した方がスッキリするのではないですか。そのことについて考えを確認します。
村岡建築公営住宅課長 結果の公表については、これまで浸水区域を災害危険区域と指定した経緯がありますので、結果を見てそのとおりに災害危険区域が見直されると誤解を与える可能性があるので公表を控えています。
今川 これ以上議論しても平行線になりそうなので次の確認をしますが、浸水深に関する部分は特に鮪立漁港で再シミュレーション結果が示されて私も見ています。災害危険区域で防潮堤の後ろは基本的に1m未満で現在もそのままですが、高さを下げたり、セットバックしたりしたことで満杯になる、プールのように堤防高までいっぱいになる、5~6mくらいの浸水深になるという結果は大きな変化だと思いました。1m未満と5mの差は大きな変化ではないのですか。
村岡建築公営住宅課長 学識経験者に参考意見を聞いた時の見解として、今回、災害危険区域を指定するときに今次津波をもとに断層モデルを作成し、想定浸水深がシミュレーションで分かるし、今次津波との実績で実際に濡れた範囲との比較もできるということで、これをもとに災害危険区域を指定していますが、本来は複数のパターンを検討して、重複する箇所を指定することが本来のやり方なのですが、現在はそういうデータがないということで、今次津波のシミュレーションで災害危険区域を決めることは方法としてはそれしかないと、あと、シミュレーションが持つ不確定性ですが、実際、シミュレーションで今次津波を超えてくるという結果が出ていますので、誤差があるのは確実です。学識経験者からは誤差もあるので、建物被害の可能性が高まる基準としては2mがありますので、その範囲内で柔軟に考えるべきであろうという話を頂いています。
菅原市長 誤解を与えるといけないので補足しますが、2mまではいいじゃないかと整理しているわけではありません。まず2mのことですが、津波シミュレーションを各市で実施した時の前提はさまざまです。東日本大震災の時の潮位でやったところが多く、安全を見て満潮でやったところもあります。そういう意味で各市町さまざまで、基本的には浸水深2m以上になると木造家屋が流出する可能性が高まるということがあって、多くのまちは浸水深2mを一つの基準として災害危険区域を設定しました。当市でも当初そのことを検討していましたが、復興会議において、有識者委員から危険だという意見が出ました。例えば60㎡の床面積の家において2mは120㎥の浮力がつくんですよということで、その会は大変良かったと思いますが、そこに防災の専門の有識者もいて私から見解を求めたら、その通りだという話があったので、本市においては0㎝以上であれば浸水区域にしたという経緯があります。そういう意味で、地盤を1.8mにしたということもありますが、相当保守的な、安全性に対して保守的サイドに寄ったのが本市の災害危険区域の設定の仕方です。そのうえで再シミュレーションの結果に当然誤差があったりする中で、各住居の状況を調べたところ、2mを基準にしたわけではありませんが、ここで災害危険区域を変えないといけないという住居に関しては確認しなかった、なかったという見解でありまして、その家がどこかということについて一つ一つ発表するものではないと思いますし、もし何らかの対策が必要な時はその個宅に対して私たちが個別に話をしていくということです。
今川 質問とかみ合わない気がするのですが、安全側であればいいのですが、鮪立の例を挙げたのは、現在1m未満の浸水深で災害危険区域がかかっているけど、新しい防潮堤でシミュレーションをしたら5m以上の浸水深になったということです。2mより高く、危ない方にふれています。除外認定が出てくれば、1m盛れば家が建てられる場所になっています。個別に対応するということですか。
菅原市長 浸水深のグラフがないので一概には答えられないが、除外申請の認定をしないということもあると思いますが、する場合については安全サイドで考えるべき家についてはそのような条件はありえると思います。しかしながら、そのことについて第三者の審査会をつくることは必要ないと思います。誰が見ても数字は数字であとは解釈になります。基本的には除外認定はどんどん出すものではありませんし、津波にあっている地域では多くの方々が背後地または防災集団移転を活用していますので、多くの心配をしていることではありません。
今川 今回あえて新月ダムと災害危険区域の問題をセットにしたのは、20年、30年経つと担当者も変わり資料も残っていなかったり、その当時のことが分からなくなるからです。制度はシンプルにすべきだし、経過はしっかり残していかなければなりません。30年後に同じような細かい議論ができるかというと、ここは黄色だから建てていいんじゃないかという話になると思います。現実的に除外認定に別な条件を付けて規制することはかなり難しいと伺っていますが、可能なのでしょうか。
村岡建築公営住宅課長 建築基準法の規定ですので、規定に従う範囲内でそのようなことができるのか検討したいと思います。
今川 なるべく第3者のチェックを受けていかないと、建物の制限ですので、再シミュ三レーションの結果も分からないで、市役所の中で進めることは公正公平なことではないと思います。条件を付けるのであれば、第3者のチェックを受けるべきです。そのことを含めて今後検討していただけますか。
菅原市長 観点としてはもっと大きく考えないといけない。地域の状態もある。湾の入り口でこの話をして、防潮堤の背後地がないというところと、シミュレーションをしたとしてもあまり変化がないというところと同じではない。まずは住民の皆さんにそういうところに家を建てるということは、先人の経験を生かしていないということをよく理解してもらうということを醸成することがまず大事だと思います。そのうえで、どういう時期になっても、どういう人が対応しても、安全を守れる家の建て方というものが気仙沼市内で確実に行われるということをどのように担保していくかについては検討課題だと思っています。
今川 今後も継続して議論していきます。きょうはこれで終わります。