階上にパークゴルフ場の寄付計画【気仙沼】

気仙沼市の階上地区で、パークゴルフ場の整備が計画されています。地元の建設会社である小野良組が会社設立100周年を記念した地域貢献事業として整備し、気仙沼市に寄付する計画です。2年後のオープンを予定しています。

【震災遺構となる旧気仙沼向洋高校の校庭に】

場所は震災遺構となる気仙沼向洋高校旧校舎前です。校舎とともに県から譲渡され、市有地となった校庭に日本パークゴルフ協会の公認コース36ホール(コース面積2万8253㎡)をはじめ、管理棟、休憩室、トイレ、駐車場(68台)を整備します。

1ホールは24~93m。現構想では、震災遺構とは別な入り口と駐車場とし、コースの周辺には最初から高さのある木を植樹するなどして配慮します。

津波の被害が大きかった階上地区は、震災がれきの集積場所となっただけでなく、がれき焼却などの処理場ともなりました。その仕事の一翼を担った小野良組は、「辛い思いをした階上地区に恩返ししたい」と100周年事業による寄付を申し出ました。

【地域は歓迎。有識者会議も承認】

静寂も求められる震災遺構の前に、賑わいの施設が整備されることへ心配の声もあり、気仙沼市は震災遺構の在り方などを議論してきた有識者会議「岩井崎プロムナードセンター整備検討会議」に計画を説明しました。

見た目は芝生の広場状態で、そんなに打撃音が出ないことなどを確認したうえで、「遺構のイメージを守ることも大切。目的が違う施設なので、できるだけ隠すように意識して」などの意見を添え、パークゴルフ場整備を容認しました。

市内にはパークゴルフ愛好者が多いのに、大崎や栗原のパークゴルフ場まで遠出している現状があるため、地元への計画は大歓迎されています。校庭へ多目的広場の整備を求めていた階上地区まちづくり協議会も賛成しています。

【気仙沼市は遺構への相乗効果を期待】

気仙沼市は、以下の理由から計画を受け入れる方針です。

・パークゴルフ場整備は以前から市民の期待の声が多くある

・階上地区からの要望もあり、地域的な受け入れの機運が高まっている

・震災遺構への来訪機会も増加し、相乗効果が期待できる

・震災遺構においては、海側全面を平地としてキープする必要がある

・利用未定の市有地で、パークゴルフ場に適したまとまった土地が他にない

・市内外からのアクセスについても高速道路インターからの距離が近く利便性が高い

もう少し内情を説明すると、校庭を多目的広場に整備する要望が元々あったものの、復興予算は認められずに実現するのが難しく、その課題も解決できる申し出だったのです。

遺構への相乗効果については賛否があると思いますが、例えば東松島市が震災遺構として保存した野蒜駅にはコンビニが併設されていて、何も知らずにコンビニに立ち寄った人が震災の資料館も見学し、震災伝承に効果を挙げています。仙台市の地下鉄荒井駅に併設された震災メモリアル施設も、多くの人が行きかう駅の強みをイベントへの集客などに結び付けています(詳しくは気仙沼復興レポート㊽「先進事例に学ぶ震災遺構」)。震災遺構の荒浜小学校から見えるところにもパークゴルフ場があります。

ただし、月命日の11日を休みにしたり、団体で遺構見学が入っている場合は校舎側のコースの使用を控えたりする運営上の配慮が必要です。がれき処理の恩返しにパークゴルフ場ができたことを、遺構、パークゴルフの来場者それぞれに伝える工夫も必要です。

※下の写真は旧荒浜小屋上から見えるパークゴルフ場です

【震災前からの悲願だったパークゴルフ場整備】

海以外のレジャーが少なく、さらに高齢化が進む気仙沼にとってパークゴルフ場整備は悲願でした。生きがいづくり、健康増進に高い効果があり、震災前にゴルフ場もある階上で民間による構想が出たことがあったほか、本吉の放牧交流施設「モーランド本吉」での可能性を気仙沼市が調査するなどしました。

震災1年前に行われたこの調査では、36ホールの整備に3億7000万円かかり、維持管理費に年間2700万円もかかることが判明。この維持管理費を賄うためには大人700円の料金設定で年間3万6000人利用する必要がありました。このときは維持管理の以前に整備費用の充てもなくて計画は棚上げとなりました。震災後はゴルフ場の一部がパークゴルフに開放された時期もありました。

今回の計画について、気仙沼市は維持管理費削減のため、震災遺構の指定管理業務にパークゴルフ場を追加することで管理費を削減することなどを検討します。また、多額の費用が見込まれる芝生管理は、乗用芝刈り機や肥料・散水設備の寄付を念頭に置き、利用者の協力を得てできるだけ自前で作業することも考えています。近隣の状況を踏まえ、料金は400~600円程度が考えられます。

【2020年春のオープンを予定】

今後、市と小野良組で「地域貢献活動に関する協定書」を締結し、2019年度に工事に入り、2020年春にオープンするスケジュールが示されています。

具体的には、校庭を1mほど盛土する必要があるため、年内は開発申請などにかかり、来年の着工予定です。グリーンが張り芝、ラフは種芝の計画で、半年から1年くらいの養生期間となります。

6月8日の市議会東日本大震災調査特別委員会を経て市は最終決断する考えを示していましたが、「拙速だ」「すぐに判断は難しい」「維持管理費用の見込みを示してほしい」などの指摘があり、7月10日に予定している同委員会に再度説明することになりました。維持管理費について菅原茂市長は「一般財源から多額の持ち出しは避けなければならない。手出しをするつもりはないという方針から始めて、健康増進のためにどこまで負担できるかという検討をしてきいたい」と理解を求めました。

また、南気仙沼の復興市民広場で検討していたパークゴルフコース(18ホール)については、当初の目的だった「市内に専用・拠点施設を整備する」が階上地区の計画で達成されることになるため、南気仙沼での必要性について再度検討することになりました。

※下の写真は一関市東山町の唐梅館総合公園内にあるパークゴルフ場です。36ホールありますが、一部は遠足などの広場と併用しています。

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