東日本大震災の住宅再建で、気仙沼市は独自支援の内容を見直しました。住宅ローンの利子補給は国の制度と同等とし、ローンを利用しない場合の補助額は200万円を350万円に引き上げます。来年1月から、すでに利用した分も含めて適用します。
見直し内容は11日の市議会東日本大震災調査特別委員会で説明されました。
【交付金70億円を残さないために】
市の独自支援は、国の制度を利用しないで再建した世帯を対象にしています。災害危険区域から外れたため、住宅団地を市で用意する防災集団移転、個別再建を支援するがけ地近接等危険住宅移転(がけ近)を利用できない世帯を主な対象にし、国から交付された70億4500万円を財源として住宅ローンの利子や再建費用に補助してきました。
この交付金は余れば国に返還しなければなりません。住宅再建が進み、補助の対象件数が見通せるようになってきたことで、予算を残さずに被災者へ分配するための見直しを行ったのです。
【建設補助は150万円引き上げ。利子補給もがけ近並みに】
これまでは独自支援の利用見込みを4208世帯としてきましたが、電話による聞き取りなどによって3383世帯へ修正したことで、約20億円が残りそうだと判断。災害危険区域外の被災世帯への利子補給の上限457万円から742.7万円とがけ近並みに引き上げるとともに、災害危険区域内外を問わずに住宅ローンを組まない世帯向けの建設費用に対する補助の上限も200万円から350万円に引き上げました。
下の一覧表は現行の独自支援の内容です。このうちAの②、Bの①と②、Dの②を見直します。その次の一覧表は見直しの内容で、2号は「Bの①」、3号は「Aの②」「Bの②」「Dの②」に該当します。災害危険区域が指定された後に災害危険区域内で再建した場合は、引っ越し費用20万円だけの補助となります。修繕費用に対する補助の見直し、がけ近、防災集団移転の利子補給の見直しはありません。
【新メニューに災害危険区域外の引っ越し費用20万円】
さらに、新たな支援策も追加しました。これまでは災害危険区域外の被災世帯が民間賃貸住宅や親族宅で再建する場合は対象外でしたが、引っ越し費用として上限20万円を補助します。前述の3382世帯とは別に1077世帯の利用を見込んでいます。すでに引っ越し済みで領収書がない場合は一律5万円が支給されます。
市によると、支援内容が、がけ近並みとなったことで、増額はこれで最大限となります。
【利子補給から建設費補助への移行もOK】
この見直しによって、最も予算が増えたのは住宅ローンを組まない世帯向けの建設費補助です。これまで申請した737世帯には、差額として上限150万円を追加支給します。がけ近、独自支援の利子補給補助から事後変更することも可能なため、350万円より利子補給が少ない世帯169件の移行も見込んでいます。一方、利子補給は住宅ローンの低利子化によって、そもそも上限まで利用している世帯は少なく、予算はあまり増えません。
来年1月の実施の後、現行と見直し後の差額支給について個別に案内されますので、しばらくお待ちください。この見直しにより、すでに再建済みの世帯には合計10億円以上が追加支給されることになります。低迷しがちな地域経済へのカンフル剤となることを期待するばかりです。
なお、見直し後も浄化槽補助を除いて3億円ほど残る見込みですが、災害危険区域を見直した場合の対応などのために残しておくことにしました。
【加算金と合わせて住宅再建に550万円】
住宅再建への独自支援の見直しにより、災害危険区域外で被災した場合でもマイホーム再建を選択した場合、被災者生活再建支援金の加算金支援200万円と市独自支援350万円で計550万円が支給されることになりました。災害公営住宅への入居だと加算支援金はなく、独自支援も引っ越し費用20万円だけです。
もっと早くこの支援額を提示できていれば、マイホーム再建は増えていたかもしれません。しかし、予算の範囲での制度設計は難題でした。防災集団移転は宅地整備に1区画当たり平均4000万円以上、災害公営住宅も1戸当たり平均3800万円程度かかっています。利子補給にとどまらず、制度として個別の再建に対する支援が充実していれば、予算総額をもっと縮小できたと思います。
【住宅再建の見通しまとまる。民間アパートが852件】
今回の見直しのため、被災世帯の再建方法について市が推計しました。調査対象とした9154件のうち、災害危険区域内で再建が186件、民間アパートが852件、親族宅に同居が146件、市外転出1762件と見込みました。詳細は下記に掲載しました。
初めまして。及川と申します。内容について質問させてください。去年の12月にみなし仮設から災害公営住宅に入居したのですが3年後に家賃が上がることを踏まえ、中古住宅の購入を検討しています。もし近々中古住宅を購入し公営住宅を出た場合、加算金と市独自支援の550万円は受けられるのでしょうか?よろしくお願いします。
災害公営住宅に入居すると再建済みとなるので、独自支援の対象にはなりません。ただし、災害公営住宅に申し込んでいても入居前なら変更して対象になることができます。
被災者生活再建支援金の加算支援金は、期限内であれば災害公営住宅を退去してマイホームを再建した場合でも対象になったと思います。例えば、アパートに入って加算金50万円をもらっていたとしても、期限までにマイホームを建設・購入した場合は200万円との差額150万円を申請できます。独自支援は住宅政策、加算金は被災者支援策という違いがあるためです。
間違いないとは思いますが、これは大切なことですので、真剣に検討する場合は正確には市役所の担当課(加算金は危機管理課、独自支援は住宅支援課)に相談してほしいです。
そうなんですね。独自支援を受けられないのは残念ですね。市役所に問い合わせてみたいと思います。お返事ありがとうございました。
貴兄の日常の議員活動に感謝申し上げます。私は危険区域内から危険区域外への自力再建した市内在住のものです。今般の住宅再建支援補助金の引き上げ案に対しては深く感謝申し上げます。自力再建したとはいうものの大きな借財を抱え生活は一変したものにとって大変ありがたい話でした。市の英断に感謝申し上げます。私の自力再建の際には本管からの距離が遠く水道の敷設費用に莫大な経費が掛かりました。仮設住宅で過ごしていた時期に市議会議員の4人~5人位の方々に議会で取り上げて戴きたい旨を話しましたが,なしのつぶてでした。自力再建したというものの、決して余裕があってのことではありません。家族構成上やむなく自力再建をしました。聞く所によりますと南三陸町や近隣の高田市では200万上限での補助が出ていると聞きました。気仙沼市ではそのような話は議会でも議論されてないのでしょうか。気仙沼市は自力再建者にとって厳しいような気がします。住宅再建支援金等の引き上げ案では残額が3億円くらい余剰するとのことですが、気仙沼市でもいくらかでも補助が出ればと思いコメントを書きました。貴兄のご意見を伺えれば幸甚です。宜しくお願い致します。
問い合わせ、ありがとうございます。
高台への移転となると、水道管の整備に多額の費用が必要になることは承知しております。もちろん、市議会でも何度か議論されたと記憶しています。
なぜ、市独自補助の対象にならないかというと、水道管敷設の困難さが宅地の価値に反映されているからだったと思います。これは、道路整備にも同じことがいえます。
つまり、水道管が敷設した土地を購入した人もいれば、敷設されていない土地を購入する人もいて、その条件は地価に反映されます。水道管が敷設されていない人だけに補助を出せば、わざわざ高い土地を購入した人と不公平になるという理由があると私なりに理解しています。
南三陸町や陸前高田市のように壊滅的な被害を受けた自治体ならば、不公平感はありません。独自支援の内容が県一律ではなく、市町に委ねられたのは、そういう地域特性を考慮して制度設計すべきという理由からだと思います。
一方、防災集団移転は水道工事も含めて1区画当たり平均4000万円もの公費が投じられており、自力で個別再建した人との不公平感があります。ただ、市独自支援が、がけ地近接等危険住宅移転事業と同レベルになったことで、水道管敷設まで支援に加えてしまうと、今度は水道管敷設に支援がない、がけ地近接等危険住宅移転事業と公平でなくなってしまいます。すべて補助対象にすれば、多額のの予算が必要になります。全体のバランスを考えると、市独自補助に水道補助を加えることは難しい状況にあると現時点で私は判断しています。
国から交付金で残された3億円は予備費のようなものです。津波シミュレ―ションの再実施により、災害危険区域の内外に変更される世帯などのために残しているのです。
補助件数は多めに算定していますので、もっと予算が残る可能性もありますが、災害公営住宅へ入居した人から、独自支援がこんなに支給されるなら自力再建にしたかったという意見もあり、全体のバランスを考えた措置が必要です。
気仙沼市は自力再建に厳しいという意見は重く受け止めます。復興期間が終了するまでの間、被災者の皆さんのために独自支援を含めた復興予算が使われるように、他市町の事例を含めてさらに調査していきます。今後も貴重な意見を寄せていただければありがいです。
迅速なご回答有難うございました。水道費用についてですが、自分では理解しているつもりだったのですが再建費用が嵩み少しでも補助金があれば再建に少しでも役立つとの思いからご質問いたしました。今後も問題点があるかと思いますがその際にはご指導のほど宜しくお願いいたします。貴兄の今後の議員活動にご期待とご活躍をご祈念申し上げ、御礼といたします。