気仙沼市議会9月定例会の一般質問をシリーズで報告します。
第一弾は、土地区画整理で盛り土かさ上げした住宅エリアに想定通り住民が戻らないという問題です。
【公営住宅外の住宅再建は3地区合わせて230戸の見込み】
気仙沼市は魚町・南町地区、南気仙沼地区、鹿折地区で復興市街地土地区画整理事業を進めています。この3地区で災害公営住宅を含めて計2056戸の住宅再建を見込んでいましたが、44%の909戸しか達成できないことが明らかになってきました。
復興予算を投じる土地区画整理は、1ヘクタール当たり40人の居住人口を見込めることが事業化の条件になっています。そこで気仙沼市は意向調査や震災前の状況を踏まえて、魚町・南町地区で216戸、南気仙沼地区で960戸(930戸に変更)、鹿折地区で870戸(910戸に変更)の住宅再建を計画しました。
ところが、事業に時間がかかりすぎてマイホーム再建を諦めたり、津波浸水地での再建を避けて高台へ移転したりしてことで、計画人口の達成が困難になってしまいました。土地区画整理区域内に災害公営住宅を建設することで3地区合わせて679戸を確保しましたが、自宅再建の見込みは230戸にとどまっているのです。地区別の内訳は下表にまとめました。この230戸には、は修繕などした家を土地区画整理のために解体・補償して再び再建する見込みの85戸と、集団移転の15戸も含まれています。災害公営住宅を除くと、住宅再建は見込みの17%(230/1377戸)にとどまっています。
土地区画整理区域内の計画人口と実際の居住見込み | ||||
計画人口 | 災害公営住宅 | 住宅再建見込み | 不足 | |
魚町・南町 | 216戸 | 75戸 | 61戸 | 80戸 |
南気仙沼 | 930戸 | 320戸 | 101戸 | 509戸 |
鹿折 | 910戸 | 284戸 | 68戸 | 558戸 |
合計 | 2056戸 | 679戸 | 230戸 | 1147戸 |
土地区画整理の引き渡し状況 (画地数) | ||||
計画画地 | 引き渡し | 建築手続き | マッチング | |
魚町・南町 | 300 | 107 | 43 | - |
南気仙沼 | 500 | 168 | 39 | 24 |
鹿折 | 558 | 369 | 110 | 45 |
合計 | 1358 | 644 | 192 | 69 |
【約半分の画地は引き渡し済み】
3地区合わせて1358画地を整備する計画で、47%の644画地はすでに引き渡し済みです。引き渡した画地の30%にあたる192画地で建築・建築手続きが進められています。せっかく整備した土地が有効利用されるように、土地を貸したい・売りたい地権者に、土地を借りたい・買いたい人を紹介するエントリー制度を用意したことで69画地の契約が成立しています。
土地区画整理で整備した土地の活用は被災地全体の課題となっており、今回の一般質問はこうした実態を明らかにすることが目的でした。気仙沼の土地活用率はまだ高い方ですが、土地利用を一層促進するための議論を重ねていきたいと思っています。なお、土地区画整理内での住宅再建の実態が分かったことで、住宅再建に対する市の独自補助の見直しにも反映されることになります。いままでは多めに見積もっていましたが、実態に合わせ、予算を残さないための見直しが行われることになっています。
一般質問の質疑概要を下記に掲載しますが、計画人口や災害公営住宅の戸数で答弁と上の表のデータが一部異なるのは、市の答弁が当初計画なのに対し、表は最新の計画を反映させているからです。次回は産業再生に関する質疑について報告する予定です。
【一般質問の質疑概要】
被災者の住宅再建は、災害公営住宅が全戸完成して防災集団移転も南気仙沼を残して団地の整備が完了したことで、ようやくゴールが見えてきました。そこで、最後に残されている土地区画整理の住宅再建について伺います。土地区画整理によって住宅地整備が行われている魚町・南町、南気仙沼、鹿折地区において、被災者の住宅再建はそれぞれ何件となる見通しですか。また、被災者以外を含めた計画人口に対する居住見込み、確保対策を示してください。
菅原市長 当初の被災者以外を含めた計画人口と居住見込みについては、魚町・南町地区では平成25年10月に実施したアンケート調査結果に、災害公営住宅の戸数を加えた216戸に平均世帯構成員数を乗じて527人としました。南気仙沼地区、鹿折地区では、平成25年3月の事業認可の際、計画人口について震災前の面積あたりの世帯数に、土地利用計画において住宅地としている面積を乗じて世帯数を算出したものに、災害公営住宅の戸数を加え、それに平均世帯構成員数を乗じて南気仙沼地区で960戸・2500人、鹿折地区で870戸・2300人としていました。
被災者の住宅再建見通しについては、被災者生活再建基礎支援金及び加算支援金双方の申請資料を基礎とし、住宅支援課にて各世帯の各種住宅再建状況並びに意向を様々な資料と直接の聞き取りをもとに推計を進めていますが、現在までのところ、3地区の区画整理事業区域において住宅再建を行う被災者は、魚町・南町地区は61件、南気仙沼地区は101件、鹿折地区は68件の合計230件となる見通しです。
一方、現在の土地の引き渡し状況は、魚町・南町地区で300画地のうち107画地(36%)の引き渡しを終え、そのうち43区画で事業所、住宅等すべての建築物を含む、いわゆる76条申請による建築手続きを開始しています。
南気仙沼地区では、500画地のうち168画地(34%)の引き渡しを終え、そのうち39画地で、また、鹿折地区では558画地のうち369画地(66%)の引き渡しを終え、そのうち110画地でそれぞれ76条申請による建築手続きを開始しています。
魚町・南町地区においては、災害公営住宅の完成や共同化による店舗が開店したほか、気仙沼地域開発株式会社が商業施設および飲食店や物販店を集積したスローストリートを整備することとして、商業施設は平成30年度の完成に向け着工しました。本市の被災したエースポートと勤労青少年ホームは合築再建し、来訪者やまちづくり団体、NPO法人等が活用できる多目的な活動の場を創出していきます。その他、金融機関の再建、地元事業者による多様な業種の出店が順次進行しており、商業施設の集積が期待されています。
南気仙沼地区では、災害公営住宅のほか、中央公民館の建設や隣接地に整備される復興市民広場や防災公園等の公共施設の整備を進めています。また、新たな商店会およびまちづくり団体の結成等が進み、基幹産業である魚市場周辺の産業集積地と合わせ、活気と賑わいの創出が期待されます。平成31年度春を目途に、震災前の気仙沼線上にBRT専用道が開通し、南気仙沼駅が設置される予定であり、交通の利便性も確保されます。さらに事業者等エントリー制度により、これまで24画地の契約が成立し、10事業者が出店済あるいは出店予定となっています。
鹿折地区では、災害公営住宅、市民福祉センターのほか、鹿折公民館等の公共施設の整備を進めており、かもめ通り商店街の復活、鹿折唐桑駅までのBRT専用道の開通、三陸沿岸道路、大島架橋へのアクセス等、交通の要所に近い立地条件もあり、地区の振興が期待されています。さらに事業者等エントリー制度により、これまで45画地の契約が成立し、13事業者が出店済あるいは出店予定となっています。
次に居住の確保対策としては、まちづくりマップの更新を3カ月ごとに行い、復興ニュースや権利者に配布している区画整理だよりや市ホームページでお知らせし、新しいまちのイメージを市民の皆様に共有していただくなど、居住や事業所等の立地推進に努めてまいります。さらに鹿折地区、南気仙沼地区で行っている土地の売却や賃貸を加速させる復興まちづくり事業者等エントリー制度の活用や、権利者の意向にきめ細やかに対応することなどにより、さらなる土地利用の促進を図っていきます。また、内湾地区復興まちづくり協議会、南気仙沼復興の会、鹿折まちづくり協議会などを通じて、住民と協議を行い、魅力あるまちづくりの実現に向け事業の推進に努めていきます。
今川 次回の議論に向けて数字だけ確認します。災害公営住宅を除いた被災世帯の住宅再建が3地区合わせて230件の再建見込みとなったという話でしたが、当初はどのくらいを見込んでスタートしたのですか。
三浦 都市計画課副参事 魚町・南町地区では216戸のうち災害公営住宅は68戸を見ていたので148戸になります。実際には災害公営住宅は75戸整備しています。南気仙沼地区では960戸のうち320戸は災害公営住宅としていたので、差し引きして640戸を見込んでいました。鹿折地区は870戸のうち285戸の災害公営住宅を見込んでいましたので、585戸を再建戸数として見込んでいました。
今川 確認ですが、いま説明した再建戸数はすべて被災世帯を見込んでいたということでいいのですか。
三浦 都市計画課副参事 この戸数は土地区画整理事業上の住宅地とした面積に震災前のヘクタール当たりの世帯数をかけて算出しました。
今川 概算ですが、1300戸ほど見込んでいたけれど230戸くらいまで減ってきてしまったのだということだと思います。この答弁を分析して次回につなげたいと思います。
菅原市長 本市だけかどうか分かりませんが、いまおっしゃった道筋だけだと正確に当時の様子が捉えられないと思います。一つは鹿折地区とか南気仙沼地区の方々に災害危険区域になっているところを含めて全体の何割くらい残りますかという質問をしました。その質問に応じて、盛り土かさ上げの面積を検討していったという過程があります。そうすると、被災した方々は災害危険区域に入った人は防災集団移転という形で土地を取り換えて上にあがっていかないとならないのですが、そういうことは南気仙沼ではあまり行われていなくて、鹿折で幾分行われただけですので、最初に土地区画整理事業で盛土かさ上げする面積を算出するためのアプローチと実際に起こったことが違っているという事実があります。結果としてそういう風になってしまったということを含みおき願いたい。もう一点は、土地区画整理事業をしたところのアンケートが家を建てますか、建てませんかというアンケートだけでなく、自分で利用しますか、しませんかというアンケートもしています。その人は駐車場に貸すかもしれない、息子の代になったら建てるかもしれないけど手放さないという人たちがそういう土地の持ち主になり、そのことと住宅再建の予想戸数を少し正確でなくとらえていた時期があったという風に私は思っていますので、その点もお含みおきいただいた上で検討するときは検討してほしいです。