皆さんに協力いただいた「神山川の桜保存を求める署名活動」。予想を大きく上回る4712人の署名が集まり、きのう18日、要望書に添えて気仙沼市と宮城県気仙沼土木事務所に提出してきました。
■4712人の署名簿の重み
市役所では菅原茂市長が対応。4712人分の署名簿(市へはコピーを提出)は厚さ10㎝ほどもあり、ずっしりとした重みにたくさんの方々の思いが込められています。
神山川の桜保存を望む市民の会の川崎幸雄代表は「3月の説明会では、仕方がないと思って同意したが、この桜を愛するたくさんの人がいる。何本かでも残せるように再検討するように県に働き掛けてほしい」と協力を求めました。
■気仙沼市長「行政は配慮すべき」
菅原市長は「レベル1津波対応の堤防高が一部で過剰になっている。(要望は)無理のない主張であり、行政は配慮すべき。このまま桜を切るのは難しい話だ」と賛同してくれました。道路上に出ている電柱について、堤防側に移せるように県に要請していることも明らかにしました。
菅原市長はホワイトボードに図を書きながら、この問題の本質を説明してくれました。安全のためのルールは変えられないが、施工のルールなら変えられるというスタンスで、工夫しながら着地点を探っていこうという考えでした。防潮堤問題に詳しい市長ですので、県との調整の成果に期待しています。
■県気仙沼土木事務所長「重く受け止めたい」
気仙沼土木事務所では鈴木知洋所長へ要望書と署名簿を手渡しました。鈴木所長は「たくさんの方の強い思いであり、重く受け止めたい。人命、災害、財産を最優先にしており、計画自体を見直すのは難しいが、治水、津波対策を保ちながら、どのような配慮が可能か検討したい。新たな花見空間も市と共同で考えたい」と回答しました。検討の結果については、できるだけ早い時期に説明する機会を設けるそうです。
県は慎重な姿勢でしたが、個人的には要望の成果に期待しています。県がもう一度説明会を開くということは、何かしらの提案をするということです。桜をどのくらい残せるかわかりませんが、可能性がゼロでないこと、県が桜を残すために工夫しようという意気込みは分かりました。あとは県の上層部の判断次第です。
■わずか50㎝の調整で桜並木は残せるのに…
神山川の桜並木と堤防に関する問題の詳細は、気仙沼復興レポート㉖を見てください。県の計画より高さがわずかでも足りなければ、全面コンクリート張りの堤防にするという工事のため、桜並木が伐採されてしまいます。下のイメージ図のように、考え方を少し緩められれば、桜を残すことは難しくないのです。
より詳しく説明すると、終点の近くは23cm足りないだけで50mの区間をコンクリート張りにし、25㎝足りないだけでさらに50m、47㎝のためだけにさらに50mも施工区間が伸びています。コンクリートブロックの厚さは50cmですので、この区間はブロックを入れるためにわざわざ堤防を削ることになるのです。レベル2津波でも損壊のなかった堤防なのにです。「50cm以下のかさ上げは土でもよい」と認められれば、条南中学校から駒場公園までの200mの桜並木のほとんどを残せるのです。
■今後のポイントを整理
今後のポイントは下記のとおりです。
①条南中学校前までとなっている堤防の終点をどのくらい短縮できるか
②終点を短縮するための理由を県の上層部が認めてくれるか
③理由になりそうなのは「粘り強い構造」に対する過剰な考え方、「想定津波プラス1mの余裕高」の考え方の整理、そして5年で25㎝高くなった「地盤の隆起」である
菅原市長が指摘した通り、神山川の上流の堤防は過剰な計画です。安全のルールを変えなくても、施工のルールを変えるだけでたくさんの桜を残すことができます。そもそも、堤防高を決めた津波シミュレーションは学者が指摘するほどあいまいな部分があり、明治三陸津波をレベル1津波にしたことへの異論も噴出しています。行政に一定の基準が必要なのはわかりますが、わずか数十㎝の堤防高にこだわり続けている宮城県の姿勢は本当にこのままでいいのでしょうか。安全は何よりも優先されるべきですが、過剰な計画にはブレーキをかけなければなりません。神山川の問題は、東日本大震災後の防潮堤計画のさまざまな課題を浮き彫りにさせているのです。
いつも詳しい説明を掲載していただきありがとうございます。
私も桜並木の保存に関する署名活動に微力の協力をした1人なので、このように具体的な問題事項と解決手法が広く公開されていることはとても嬉しく思います。
これからもぜひ市民目線で分かりやすい情報を提供していただきたく思います。