仮住まいが月30万円になる理由【復興土地区画整理】

気仙沼市が進める被災市街地復興土地区画整理事業で、住宅解体が必要になる地権者の「仮住まい住宅」が課題となっています。基本は自分で探してもらうのですが、被災地には賃貸物件が不足しており、市でアパートを用意しています。その賃料が1室当たり月30万円以上になったケースもあります。

■かさ上げには一時移転が必要

南気仙沼、鹿折、魚町・南町の3地区で行われている土地区画整理事業は、津波被害を軽減する盛り土かさ上げが主体です。かさ上げするためには、津波被害を受けながらも補修して残っている建物を解体する必要があります。

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解体するには、移転先が必要になります。道路事業の場合は、その移転先が再建先になるのですが、土地区画整理の場合はかさ上げが終わったら戻ってきてもらいます。そのため、アパートのような一時的な移転先が必要になります。

しかし、多くのアパートが被災したうえに、みなし仮設住宅や復興事業関係者の宿舎としても利用されているため、アパートは不足しています。本来なら、金銭補償をして仮住まい先は自分で探してもらうのですが、見つかるのを待っていると事業が遅れてしまいます。

■不足するアパートを市が用意

そこで、事業主体である市がアパートを用意する「現物補償」にも対応することになりました。費用は復興予算が充てられます。気仙沼市では3つのパターンで計18棟80室のアパートを確保します。

土地区画整理の仮住まい住宅の比較

その内訳は、土地所有者に協力を依頼してリース会社が建設した建物をリースする手法で3棟17室を用意しました。リース会社を介さないで土地所有者が整備した物件を一括借り上げする手法で10棟38室、賃貸希望者を募集して選定する手法で5棟25室を確保しました。

■5年で採算とれる家賃設定も

いずれも土地区画整理の一時移転先として新築してもらい、市が借り上げるのですが、その契約期間は3~5年です。リース会社からの借り上げは、この契約期間で採算がとれるように賃料を設定したため、1室当たり月30万円以上になりました。一括借り上げは建築主との協議によって最大23万円に抑えられ、募集して建設した建物は月13万~18万円でした。

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募集方式は契約期間の4~5年で事業費の7割程度を回収できるように賃料を設定しました。例えば、本郷に1億3千万円で建てたアパート(10室)は、市が1室当たり月15万8千円で5年間借りる契約を結んでいます。

通常の土地区画整理だと、事業費が膨らめば土地所有者の減歩率が増えてしまうため、地権者の仮移転先にこのように費用をかけることはできません。国の手厚い支援が受けられ、事業を急がなければならない復興事業特有の手法といえます。また、一括リース方式から募集方式に変えたように用を抑える工夫はしていますが、それでも「復興価格」となってしまっていることは否めません。

■空き室の活用

一室の広さは55~80平方mで、災害公営住宅と同じです。先行する鹿折地区と南気仙沼地区では、仮住まい住宅55室のうち13室が空き室となっています。魚町・南町でも今年9月まで14室を用意しましたが、10月1日時点で2室の利用にとどまっていました。

一括借り上げのため、空き室の家賃も負担することになります。しかも、仮住まいのピークは今年度末だそうで、空き室はさらに増える可能性もあります。事業の特性上、空き室をほかの事業に活用することは難しそうです。

一方で、災害公営住宅は入居予定者のキャンセルなどによって、完成したのに空き室のままという状態になっています。タイミング的に、土地区画整理の仮住まいとしてうまく活用できなかったのでしょうか。市もその可能性を探ることにしました。

なお、事業所のための仮店舗は「移転先によって営業収益に差が生じる」との考えから、金銭補償によって自ら探してもらうことにしています。どうしても確保できない場合のみ、市が確保した土地に仮店舗を設置する対応をしています。

 

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