津波の再シミュレーション結果は公表すべきか?

気仙沼市は最新の津波シミュレーション結果を公表すべきか、非公表とすべきか。情報公開審査会の答申によって公開へ舵を切ったと思いましたが、再び非公開の決定を下しました。情報公開制度に影響する出来事ですので、詳しく報告します。

これまでの経過は、4月13日のブログ「津波シミュレーションの非公開決定を取り消すべき」、7月1日のブログ「公開された津波シミュレーションを分析」で説明しました。

【審査会は公開すべきと答申したのに、再び非公開に】

簡単に振り返ると、気仙沼市の災害危険区域は、津波シミュレーションの結果に基づいて2012年7月に指定しました。ところが、その後に防潮堤計画がいろいろなところで変更になったことで、再シミュレーションを行い、その違いを確認することにしました。その結果、市は災害危険区域は変更しないことを決めましたが、再シミュレーションの結果は公表しませんでした。

情報公開を請求しても非公開決定だったため、審査を請求した結果、情報公開審査会が「非公開決定を取り消すことが相当」と答申。これを受けて市は再シミュレーション結果を公表しましたが、そのデータは既定の災害危険区域から拡大した分は削除し、縮小した分はそのままに補正されていました。

これではシミュレーション結果を比較できないので、補正前のデータの公開を請求すると、拡大分が削除される前のデータが公開されました。しかし、縮小分は補正されたままだっので、再び公開請求したところ、8月3日に非公開決定の通知を渡されました。通知書のPDFデータはこちら→非公開通知書2020.8.3

【住民の混乱、国との関係が非公開理由】

なぜ、縮小したデータの公開を市は嫌がるのでしょうか。

非公開決定通知書には次のように理由が書いてありました。

・現行の災害危険区域は防災集団移転や宅地買い取りなどの適用範囲の基礎となっている。縮小した箇所を開示すれば、住民にとって大きな混乱を及ぼすおそれがある

・災害危険区域の妥当性に疑義を生じさせるおそれがあり、これを基礎に各種補助事業等の申請、採択を行っている市と国の事業推進の基本的な構図を否定することになりかねない。さらに、復興増税を負担している国民への説明にも国、市ともに苦慮することになる

つまり、そのデータを見れば住民が混乱し、復興事業の財源を負担している国民にも説明が難しくなるので、公開できないということです。

このことに関しては、これまでも議論しましたが、行政にとって都合が悪いいことを理由にデータを非公開にしてしまえば、情報公開制度の意味がなくなってしまいます。災害危険区域の妥当性に疑義を生じさせるおそれがあるのなら、なおさら公開して、事務事業が公正公平に行われているかチェックする必要があります。

【再び審査請求へ】

再シミュレーションは、地盤隆起も反映させたので、当然、想定浸水域が縮小する箇所が出てくるでしょう。災害危険区域は復興事業によって高台移転や宅地買い取りをするために急いで決めたエリアのため、後から防潮堤計画が大幅に変更された地域でも、災害危険区域はそのまま運用してきました。

防潮堤がなくなったら浸水想定はどうなるのか、防潮堤を造ればどのように変わるのか、堤防高が下がったらどうなるのか、シミュレーションの前提が変わった地域では、その結果について知る権利があります。

そもそも、最初から請求しているのは再シミュレーションの結果であり、補正されたデータではありません。今回の非公開決定に対しても審査請求できるという説明がありますが、これは審査会が公開すべきとしたデータと、今回非公開にしたデータが異なると市が判断したからだと思われます。

審査会までの文書のやりとりに、私も市も相当な時間と労力を費やしました。また同じことを繰り返さなければならないかと思うと、やる気を失いそうですが、もはやデータの中身というよりも情報公開制度そのものの問題となってしまったので、速やかに審査請求を提出し、再び審査会の判断を仰ぎたいと思います。

動きがありましたら続報します。

【拡大分の補正前データを公開】

話しが前後しますが、再シミュレーション結果の拡大分を補正する前のデータは公開されました。前述した通り、縮小分は補正されたままです。

新聞報道によると、災害危険区域より拡大した分には30軒ほどの民家があるようですが、市が事前に説明して大きな問題がないことを確認しています。

地区別でみると、鹿折の大浦、大島の田中浜で浸水域の大幅な拡大を確認しました。田中浜はレベル2津波が浦の浜に越えていかないように、海抜11.8mの防災林の丘を造成していますが、再シミュレーションでは越水してしまいました。

※各地区の再シミュレーション結果(拡大分は補正前。縮小分は補正後)は次の通りです

気仙沼市の災害危険区域を巡る動き                   (今川まとめ)
2011 6.1 国交省による市街地復興パターン調査がスタート(2012.3.9まで)

・住宅再建の意向調査、市街地かさ上げのための津波シミュレーションなどをコンサルタントに委託

7.11 今後の住まいに関する意向調査を発送(締め切りは25日)

・市内への居住意向、居住形態、希望地を調査

9.9 宮城県が気仙沼市内の防潮堤の高さを公表
9 復興パターン調査の津波シミュレーション結果が市に提供される
10.7 気仙沼市震災復興計画を策定
10.31 国土地理院が震災による地盤沈下を反映させて水準点を改定
12.7 津波防災地域づくりに関する法律が成立

・最悪の想定に基づいた津波シミュレーションの実施と公表を義務付け

2012 3~5 災害危険区域指定のための津波シミュレーションを実施

・県が示した堤防高で設定

・災害危険区域の素案は4月中に示す予定だったが条件設定等で遅れる

5.11 市議会東日本大震災調査特別委員会に災害危険区域の基本的な考え方を説明

・暫定版のシミュレーション図(3月実施分)を示す

・災害危険区域が決定した後でも「条件が変わって安全が確保されれば見直しということは今後当然出てくる」と市は答弁

・防潮堤の高さが変わる可能性について、菅原市長は「宮城県としては現在出している数字(堤防高)を変えるつもりはないということです。前提が変わらない限り変わらないということで当市としても進めていきたい」と答弁

5.17 宮城県が海岸ごとの堤防高や復旧スケジュールを公表
5.26 災害危険区域説明会スタート(6.2まで16会場)
6.5 災害危険区域指定へ向けた個別相談会スタート

・がけ近による利子補給を期待して1時間待ちの行列

6.8 被災地域の不動産鑑定評価を公表

・震災前より2割前後下がる

6.14 災害危険区域に関する条例を市議会へ提案

・「区域の指定に当たっては被災された方々に丁寧に説明し、理解を得ながら進めるとともに、区域の見直し・変更が生じた場合には事前に議会に説明することを強く要望する」と付帯意見をつけて25日に可決

6.22 災害危険区域内の宅地の公費買い取りを宣言
7.9 災害危険区域を指定(13.8㎢/浸水面積18.65㎢)
7.11 海岸防潮堤等整備に関する市民説明会・意見交換会をスタート

(29日まで12会場)

7.30 今後の住まいについての意向調査を発送(締め切りは8.20)

・住宅再建の手引を同封し、住宅の再建方法、防災集団移転や災害公営住宅の希望箇所、災害危険区域内の宅地の買い取り希望などを調査。

9.20 市議会一般質問への市長答弁

・シミュレーションにおける防潮堤の高さは、2012年3月時点での宮城県データを基本とし、6月定例議会前に一部が変更となり、公表された防潮堤の高さに整合させて設定しました。

・今後、個々の防潮堤の計画が具体化され、背後の状況により防潮堤  整備を行わない場合や、高さを原形復旧にとどめる場合、または位置が海岸から大きく後退するケースなどが予想され、最終的に決定された段階で、必要に応じ、再度シミュレーションを行い、設定区域の変更について検討を行うこととしています。

10.12 災害危険区域の設定データの情報開示
10.18 三陸新報で設定ミスの記事

・建設部は「各地区の堤防高が決まった段階で年度内にも津波シミュレーションを再び行い、危険区域を変更したい」とコメント

10.22 住まいの再建に係る市独自支援策の案を市議会に説明
12.19 市議会一般質問への市長答弁

・防潮堤の設置場所と高さは、その背後のまちづくりの基本となるものであり、住民に居住の制限を課する災害危険区域の設定と一体となってその意義を有するものと考えている。よって、今後防潮堤の位置などの計画を変更する際には、必要に応じて再度津波シミュレーションを行い、災害危険区域の設定に及ぼす影響について十分に検討した上で決定することが必要と考えている。

災害危険区域の変更を行うこととする際には、十分な説明などを行いながら対応する。

12.29 今後の住まいについての意向調査を発送

・防災集団移転、災害公営住宅の希望地区などを調査

2013 3.1 市誘導型防災集団移転の仮申し込みスタート
6.28 災害公営住宅仮申し込みスタート
7.24 災害危険区域内の被災宅地買い取り説明会(7.31まで6会場)
2014 6.25 市議会一般質問への市長答弁

・再シミュレーションは施設や背後地整備の計画が固まった段階

・民有地を自力でかさ上げした地盤高は反映させない

・災害危険区域の変更の是非を含めて検討する

8.20 内湾地区の災害危険区域を指定(0.116㎢)

・当初は2012年10月の予定だったが防潮堤議論で遅れた

11.11 気仙沼復興レポート⑨「危険区域と災害リスク」を発表(今川HP)
2015 12.16 市議会一般質問への市長答弁

・市内で整備予定の87海岸107地区のうち43海岸47地区で堤防高が変わっている。地元と協議を進める中で、個別にシミュレーションを行った小鯖地区、鮪立地区、鶴ヶ浦地区は影響があると捉えている。

・災害危険区域の変更は、まず再シミュレーション結果が住戸に影響を及ぼす場合、関係する方々の事情を聞いた上で、計画の変更を行うかどうかを決定する。できるだけ不利益を被る人が出ないようにすることを原則としたい。

・見直しによって被災宅地が新たに災害危険区域となる場合は、対象者の意向により、被災宅地の買い取りや防災集団移転への参加を案内する。見直し前に受けた被災宅地の買い取りや各種の住宅再建に影響が生じることはない。すでに再建した住宅が新たに災害危険区域となる場合には、今後の新築、増改築に制限が生じることなどを十分に説明するとともに、個々の事例によっては利用可能となる支援制度も案内しながら理解を得ていきたい。

・災害危険区域の変更は、計画がすべて固まってから津波シミュレーションをかけるのが正しいと思うが、大きな影響があるところは早くしていきたい。災害危険区域の考え方については、どこまでシミュレーションの結果だけに頼っていくかとなると、ある程度は運用というところがないと、住宅再建や土地利用に不利益が出てしまう。そういう観点で考えていかざるを得ないと思っている。四角四面でやっていくことにやや無理がある。やがて、津波防災地域づくり法によって、より保守的な形で設定される。災害危険区域だけに頼るよりも、より安全な対策が取れると思う。

・津波シミュレーションにはお金がかかり、復興予算で確実に補填されるという自信もなかったので、最初は職員もためらっていたが、登米沢の件は、シミュレーションをかけた方がいいと思った。部署の連携が必要だった。市民に無駄なお金を使わせることがないようにしていきたいと思う。登米沢の方には必要があれば担当から声をかける。

12.28 被災宅地買い取り期限

・買い取り対象5411筆194haのうち3420筆113haを買い取り

2016 3.8 津波シミュレーション業務委託費用を2016年度補正予算に計上

(2970万円でパシフィックコンサルタンツ東北支社が受託)

・災害危険区域は津波シミュレーションを基に区域指定しており、各種防護施設の変更状況を踏まえ、再津波シミュレーションを実施し、災害危険区域の見直しについて検討を行うことを目的とした。内容は基本情報の収集と設定、津波シミュレーションによる浸水想定区域図の作成とした

・夏まで結果を出し、庁内で方針を決定した後、秋~冬に説明会したいと答弁

2017 2.28 国土地理院が地盤隆起を反映させて水準点を改定
7.6 災害危険区域設定時と異なる防潮堤(43カ所)の情報開示
7.11 市議会震災調査特別委員会で高さの変更が生じた防潮堤を説明

・事情に合わせ、納得できる、市民にも分かりやすい対応したいと答弁

8.11 気仙沼復興レポート㊷「最悪の想定に備える」を発表(今川HP)
9.26 市議会一般質問

・市街地復興パターン調査の津波シミュレーションについて質疑

10.11 気仙沼復興レポート㊹「復興パターン調査と浸水想定」を発表(今川HP)
12.20 市議会一般質問への市長答弁

・災害危険区域の見直しを検討するための津波シミュレーションは、地盤隆起分を反映させ、構造物データを現計画に更新する。BRT専用道は反映を検討中。現在の住戸にできる限り不利益を与えないように対応することを原則とし、見直しの必要性の有無について検討する。

・すでに補助をもらっていたり、建てたり、直したりした人たちが何らかの権利を失うこととか戻されたりすることがあってはいけない。そのことと危険区域の線引きということは慎重に考えなければならない。線は引くけどこういう風にするのか、線も引かないのか。突き詰めていくとすべては仮定の話で成り立っているので、仮定の話に振り回されて現実の生活だとか、家庭のお金の問題だとかに大きく関わってくることをどう考えるかということも併せて考えなければならないし、シミュレーションをかけた結果としてこういうケースは我々としても危険だから看過できないということを総合的に考えなければならない。その果てにはもしかすると、昨日の議論の中であった大谷の街区をどう扱うかに整理の仕方が絡んでくることがあるかもしれない。または物理的にやるしかないのかもしれない。そういうことに少し時間がかかると考えている

2018 6.20 一般会計予算事故繰越についての質疑への市長答弁

・シミュレーションは実際にやってみないと何とも言えないというのは、実は私の感想です。というのは、一浜一浜の防潮堤の計画を最終的に詰める段階で、いろんなシミュレーションをしてみたりするわけですけれども、そうすると、さまざまな要因で少しずつ変わったりすることがままあります。それを見ていて、ある意味怖いなと実は個人的には感じています。ですから、もしかすると、極端な、言葉だけがひとり歩きするとあれですけれども、かけ直したら1,000軒違っていましたとか、影響が出る家が。30軒なのか、1,000軒なのか、1,500軒なのかというような、そういうような非常にラフな見通ししか今立てられない状況にあると思う。

・そういうことを想定すれば、1回で結果を出して、それからその対処について相当しっかり考えないといけない。住宅の安全性とまた補助というものに手をつけられるのかどうかということも含めて、相当時間をかけて考えなくてはならないことだろうなと思いますし、ある意味いろんな解釈をすることによって、とにかく現在住宅再建をした人が不利にならないようにということ。では、これから何かを起こそうとする人が、災害危険区域の変更によって、そのことに本当に対応できる我々が財源とかを持っているのか、そういう非常に大きな問題になりかねないなと思っています。そういう意味では、1回、これがとりあえずのファイナルですというものをかけてから検討していくというのが事務方としてはやりやすいことなのかなと思う。

・余り影響のないところがあれば今かけて、私が思っているような懸念も早目にわかったほうがいいのではないですかという考え方も実はあるんだろうなと思う。一方で、防潮堤で決まっていないところはわずかになってきていますので、そこはどこまで待てるかということとのバランスで考えさせていただきたいと思います。いずれにしましても、災害危険区域見直しというもののやり方について、そこから出る影響について、原則はこれまで不利な人ができないようにと言ってきましたけれども、そのことは守れると私は思って言ってきましたが、それ以上のことができるかどうか、やるべきなのかどうか

2019 2.28 市議会一般質問への市長答弁

災害危険区域のための津波シミュレーションの再実施は、一部未確定の防潮堤があることから、仮設定の箇所を含んだものとなるが、現時点で可能な限り最終形に近い防潮堤等の構造物や地盤隆起を反映させた設定データを作成しているところで、これをもとに市全域のシミュレーションを3月末までに完了させることとしている。その後、本シミュレーション結果、実浸水範囲及び復旧・復興状況を総合的に踏まえ、災害危険区域見直しの有無を含めた対応方針を6月までに示したいと考えている。

・シミュレーション結果の公表は、津波解析モデルは完全には実浸水域を再現できないとされていることから、差異の扱いについて学識経験者の見解をいただくなどして、判断したいと考えている。

・住宅再建の支援策については、災害危険区域を変更する場合、既に再建した方々が不利益とならないような方策について、財源等を勘案しながら検討する。

・3月末に出たデータだけのものを示すことは、混乱を招く可能性があると、今現在の我々が得ているシミュレーション結果の予想からはそう考えている。

・6月までに対処方針も含めてお知らせするとき、そのときにデータが何もなくてということに説得力があるかというと、それは苦しいというか、よくないのかなと私は思っています。ただ、そのときにしっかりとして、シミュレーションはこうなったけれども、ここは過去のデータがこうだとか、ここはこういうふうに考えましたというような注釈を各地域につけていかざるを得ない状況だと思う。

・ある程度の最初の設定とはずれがあると思いますので、それが科学的にお話をできる部分と、科学的だけで済む場所と、あとはもう防災の点でこういうふうに考えましょうよというようなことも加味して、災害危険区域はこう最終的になるという、今回の場合はこうしておきましょうよと、こういうふうなことになると思います。

・データだけで全てを判断していくということにはならないと思いますので、そこを合理的に説明できるような形にして6月に示せればと思っていますけれども、そのときにデータを一つもお見せしないでということは、実際はできないと思います。

8.9 市議会震災調査特別委員会に「災害危険区域は現状維持」と報告

・再シミュレーションの結果、復興事業に影響する変化はなかった

・浸水想定域が拡大するエリアに建物はない

再シミュレーション結果の情報公開請求
8.23 再シミュレーション結果の情報公開請求に対し、市が非公開決定を通知

【非公開理由】

・再シミュレーションは復興事業に大きな祖語が生じていないかを内部検証する目的で実施した

・比較検証した結果、概ね大きな変化は確認されなかった

・結果が公表されれば、災害危険区域が再シミュレーションそのままに見直されると市民の誤解を招く

・シミュレーションに不確実性があるにもかかわらず、災害危険区域と再シミュレーションの正否や適法性に関して誤解が生じ、復興事業の内容及び手法等の妥当性に対し誤解に基づいた意見主張がなされる可能性が高く、これにより公正な判断を行うことが困難となり、そのことをもって市民に無用な混乱を生じさせるおそれがあり、今後の復興事業の公正または円滑な執行に著しい支障が生じると認めたため

11.11 非公開決定に対する審査請求

◇市民の権利を著しく規制する災害危険区域が正しく設定されているか確認することを拒むものであり、市民の監視と参加による公正で開かれた市政の推進を定めた気仙沼市情報公開条例に違反している

【疑問点の整理】

・再シミュレーションの費用が平成28年度補正予算に計上される際、目的は「災害危険区域の見直しについて検討を行う」だった。その際、結果について説明会を開催する考えが示されていた

・鮪立地区の防潮堤計画変更の際、再シミュレーションによって想定浸水区域が拡大することが説明された。「大きな変化」の有無は市の解釈によるもので、安全面からも第三者の検証が必要である

・建築制限を実施する災害危険区域は、公平公正に決められるべきである。その前提となる津波シミュレーションの結果は重要な情報であるが、指定時と実際の防潮堤計画に差異が生じたことで、その対応について市民と十分に話し合わなければならない。「誤解を招く」として非公開とするのは、市民参加の市政を否定するものである

・シミュレーションの不確実性は市民と共有すべきことであり、「誤解に基づいた意見主張」をおそれて情報を非公開にすれば、市民による監視機能が失われてしまう。これを前例とすれば、行政にとって都合の悪いあらゆる情報が非公開となってしまう

・シミュレーションの不確実性は市民と共有すべきことであり、「誤解に基づいた意見主張」をおそれて情報を非公開にすれば、市民による監視機能が失われてしまう。これを前例とすれば、行政にとって都合の悪いあらゆる情報が非公開となってしまう

・防潮堤の計画を変更すれば、災害危険区域も変わる可能性があるという行政と市民の共通認識のもと、内湾、鮪立、小鯖、浦の浜などでは防潮堤について議論してきた。議論の過程では再シミュレーションの結果も示されている。その経緯を無視して、「無用な混乱」と一括りにして非公開にすれば、市政に対する信頼が失われてしまう。再シミュレーション結果が示された地区と、示されていない地区の公平性の問題もある。市民意向とは関係なく、災害危険区域指定時の防潮堤の有無の設定が変更している海岸もあり、これは市側のミスといえる。市のミスから発生する混乱を回避するための非公開は「無用な混乱」ではなく、第6条5号の規定の乱用である

12.25 審査請求に対する市からの弁明書送付

【反論内容】

・再シミュレーションの目的が「災害危険区域の見直し検討」からより包括的な目的に変化したことは非公開の理由と関連性がいな

・鮪立の説明資料は個別のシミュレーションであり、今回の再シミュレーションとは異なる。シミュレーション結果の変化の大小で非公開の判断をしているわけでもない

・災害危険区域は市が指定するもので、市民から広く意見を聞き、合意で決める制度となっていない

・津波シミュレーションが科学的な手法として信頼性が高いものと一般に認識される中で、不完全な情報を含んだ文書を公開することは、再建方法を選択した際の正当性に対する疑念や将来的な不安感が増幅することになり、市民に無用な誤解を与え、または混乱を招くとし市は判断した

・個別のシミュレーション結果は防潮堤整備の合意形成のための資料である

12.27 市の弁明に対する反論書を提出
2020 1.29 反論書に対する市からの弁明書送付
1.30 弁明書に対する反論書提出
2.19 情報公開審査会(三條秀夫会長)を開催
3.31 情報公開審査会が「非公開決定の取り消しが相当」と答申

【判断理由】

・情報公開条例第6条第5号に該当し、「今後の復興事業の公正または円滑な執行に著しい支障が生じる」ことを非公開理由としたが、5号における「事務事業」とは、公開した情報を事業対象者に知られることにより、遂行が不能または著しく困難になるものである。津波シミュレーションは対象者が想定できず、公開することによる著しい支障があるとはいえない

・シミュレーション結果を公開することにより誤解による意見主張がされるということは推測の域を出ないし、仮にあり得るとしても、市民に対してできる限り誤解を生まないよう丁寧な説明を行うことにより回避できる事態である

・災害危険区域の指定が広く市民の意見を反映させるものではないとすると、市民の誤解に基づく意見により災害危険区域の指定が公正に行えなくなるということは想定しがたい

・市民が市の事務事業に意見を主張すること自体は何ら妨げられるべきことではなく、それを「支障」であるかのように評価するのは適切ではない

5.21 市が非公開決定の取り消しを裁決

◇再シミュレーションが公開されることにより、誤解に基づいた意見主張がなされることは十分に考えられ、災害危険区域の指定や変更の公正な判断に影響がないとはいえないし、各種復興事業の内容や手法等の妥当性に関し数多くの小かい働き掛け等がなされ、事業の正当性に影響が出る可能性は否定できない。しかし、仮にそのような事態が生じると予測できるとしても、市民に対してシミュレーションの目的、手法、信頼性、災害危険区域の指定・変更との関係、各種復興事業への影響等を可能な限り丁寧に説明することで、一定程度回避することが可能であると思われる。市民が市の事務事業に意見主張すること自体は妨げられるものではないことを踏まえて考えると、市民の意見主張等による支障が具体的に相当の蓋然性をもって発生すると認められない限り、このような懸念があることだけをもって、事務事業への著しい支障があるとすべきではない。

5.21 裁決を受けて再度公開請求
6.5 再シミュレーション結果を公開。補正が判明

【補正内容】

・災害危険区域をはめ出た分は浸水深2mまでは除外

・災害危険区域から縮小しても、現行の浸水深が1m以内ならそのままとする

6.5 補正前のシミュレーション結果の公開を請求
6.19 情報公開の決定期間延長を通知

・公開することによる事務事業に対する支障の内容や程度等について関係機関等の意見を踏まえた判断を必要とするため、7月20日まで決定期間を延長する

6.23 市議会6月定例会の一般質問

・補正内容や説明責任などについて市長が説明

7.20 補正前のシミュレーション結果の公開を決定。ただし、災害危険区域より拡大した分は補正前のデータだが、公開したものの、災害危険区域より縮小した分は補正したままのデータを公開した
縮小した分も補正していないシミュレーションの情報公開を請求
8.3 縮小した分を補正していないシミュレーションの非公開決定を通知

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