震災伝承には計画が必要【一般質問①】

1か月続いた気仙沼市議会2月定例会が終了しました。これから予算や議案の概要をまとめますが、その第一弾として一般質問の結果を報告します。

今回の一般質問は、来年が震災15年の節目となるため、震災遺構・伝承館のリニューアル、復興もプラスした震災伝承のこれからについて取り上げました。

■震災遺構・伝承館は開館10年目を目途にリニューアル

答弁を整理すると、

①震災伝承を目的としたふるさと納税のクラウドファンディングの基金残高は1億1200万円で、震災遺構・伝承館の運営に今後も活用するほか、開館10年目(令和10年)を目途に改修とコンテンツのリニューアルを検討していく

②震災14年で課題も明らかになっており、気仙沼市全体の伝承の計画は必要だと考えている

という方針を引き出しました。

詳しくは下記をご覧ください。第二弾では一般質問で取り上げた元一つのテーマである「小・中学校再編」について報告します。


1 震災伝承について                                                   

令和8年には東日本大震災から15年の節目を迎えます。犠牲者を追悼するとともに、内外に向けて震災の教訓を伝え、復興に感謝する機会であることから、この1年間の取り組みが重要になります。未来の命を守るため、次の2点について質問します。

 

質問① 東日本大震災遺構・伝承館を拠点とした伝承活動と施設の維持補修のために、ふるさと納税のクラウドファンディングを続け、これまで4億円を超える寄附が集まりました。この寄附金を活用して、伝承館の展示物リニューアルなどに取り組むタイミンクだと思います。できれば、市民を巻き込んで、その過程もPRするなど、興味・関心を高める仕掛けづくりも必要です。今後の伝承館の在り方、クラウドファンディングの継続と活用方法について市の考えを伺います。

 

菅原市長 震災伝承についてでありますが、クラウドファンディングについては、その趣旨に共感した全国の方々から現在多くの御支援をいただいており、来年度以降も継続していきたいと考えております。クラウドファンディングで頂いた寄附金は、指定管理料や修繕など、伝承館の運営や維持管理に活用しており、今後も同様に活用を継続してまいります。

また、伝承館は(平成31年3月の)開館から約6年が経過し、施設の経年劣化も見られることから、開館10年目を目途に、建物の状況を調査し、必要な改修と併せてコンテンツのリニューアルも検討してまいりますので、その財源として、クラウドファンディングなどの寄附金も活用したいと考えております。

 

質問② 震災の経験と教訓を後世に伝えていくため、今後必要なこととして、①視察や研究などの受け入れ環境の整備②伝承用の資料や教材の作成③海の市など観光施設における展示④復興祈念公園の利活用⑤図書館の震災関連資料の整理と活用-などが考えられます。まずは役割分担や推進体制を確認し、総合的な仕組みづくりからスタートすることが必要です。

せめて地元の子どもには高校を卒業するまでに、震災と復興の最低限の知識を得てほしいです。岩手県大船渡市は、津波伝承や防災学習の考え方を整理し、ネットワーク形成のための基本計画を策定しており、本市の参考になる事例です。震災15年に向けた震災伝承の取り組みと課題、仕組みづくりの必要性、そして今後の展望を伺います。

 

菅原市長 震災から14年が経ち、一通り震災伝承のハードやソフトが揃い、また、課題も明らかになってきたところであり、本市として、市全体の伝承の計画は必要と考えるところであります。計画作成の中で、伝承館は様々な機能を有する中心的施設としてこれからも位置付けることとし、そのほかの必要事項及び推進体制については、今後、検討を開始してまいります。なお、各観光施設へ展示等を拡大することについては、これまでの観光の方針に鑑みて慎重に検討してまいります。

 

【再質問】

今川 震災伝承のためのクラウドファンディングは寄附金の約半分が市の財源になります。その残高を示してください。

 

高橋危機管理課長 今年度の指定管理料を2月補正で財源組み換えしており、(返礼品などの費用を除いた額を貯めているふるさと応援基金に)1億1200万円ほどの残高という状況です。

 

今川 来年度以降も同じペースでいくと2億、3億円と積み上がっていくと思います。それを開館10年を目途に大規模な修繕へ活用するということは必要かもしれません。それとリニューアルも10年を目途にしたいということですが、その規模については、このペースで貯めていかないと間に合わないのですか。

 

高橋危機管理課長 詳細な計画はありませんが、管理料として毎年3000万円程度使用して、修繕費も300万円ほどの予算を積み上げています。クラウドフェンディングの状況を踏まえて、積み立ての残金については市長答弁のような考え方で進めていきたいと思っています。当然、施設の維持、修繕、大規模な修繕が必要な部分については調査等をしながら活用していきたいです。

 

菅原市長 実はこの答弁書を最初に危機管理課で書いたときに「大規模修繕」とあり、私が「大」を取りました。今まで一般的に我々が公共施設の長寿命化計画でいっている「大規模」というのは本当に大規模です。そこはまだ見えないものに対して、「大」とか「小」とか書かない方がいいなと思っておりましたので、実際に必要なところとか維持補修だけではなく、積極的な展開のためにということもあるかなと思いますので、そこは柔軟に考えていくべきことだと思っています。

 

今川 毎年大きな寄附をもらっていて、その活用方法を確認したいと思って質問しました。開館10年の節目という話ですが、その前に震災15年の節目が来ます。少しでも展示物のリニューアルをした方がいいと感じます。私も年間50回ほど伝承館で語り部のお手伝いをさせてもらっていますが、やはり案内していると展示物とか写真の中身とかお金をかけなくてもいいので、15年に合わせて一部リニューアルみたいなことはして、大規模のリニューアルは開館10年の節目がいいと思います。10年でリニューアルするからと、それまで何もしないということはないですか。

 

高橋危機管理監 新年度予算ではまだそこまで検討している状況にないので入っていませんが、 提言を踏まえまして検討していきたいと思います。

 

今川 震災15年の節目にリアス・アーク美術館が令和8年度から気仙沼市に移管する予定であり、それも大きなタイミングだと思います。美術館で行っている震災の展示と震災伝承館の役割を整理して、今までも美術館の力を借りていましたけど、学芸員の協力をいただいてリニューアルをして、15年の節目を迎えるのがいいと思っています。展示の内容についてリニューアルをお願いします。リニューアルの仕組みとしては、指定管理者から要望するものなのか、市が調査して手掛けるという仕組みになっているのですか。

 

高橋危機管理監 市であったり管理者側であったり、そこは柔軟にいろいろアイデアがあれば、そこに向けて協議して準備していくというところです。

 

今川 リニューアルは市が予算をとってやるものだと思いますので、最終的には市が決定権を持っているということだと思います。(2番目の質問に対して)震災伝承の計画が必要という答弁でしたが、15年ということなのか、どのようなスケジュールを考えていますか。

 

高橋危機管理監 市長答弁にもありましたように、まずは必要事項や推進体制を整理して検討を開始していくということで、まだスケジュールもこれからというところです。大船渡市の防災学習ネットワークの基本計画も見させてもらいましたが、拠点となる施設がなくて苦労しているように感じられますし、計画は作ったものの、来館者・利用者は非常に厳しいとお話を聞いています。そういった他市の事例や状況を聞かせていただきながら、どのような計画であれば実際に来館者もしくは防災学習の機能として、小さいお子さんから大人まで利用できるようなネットワーク防災学習の仕組みづくりが重要かと思っています。伝承館が核となる施設として発信したり、そこを利用する市全体の防災学習ネットワークが作られるようなイメージで考えているところです。

 

菅原市長 平成25年3月に出された本市の観光の戦略的方策にある方針の二つ目に「オンリーワンコンテンツ」があり、当時はガレキだらけのまちではありましたが、震災ないし震災復興というものをイメージしたものであります。そういうことも含めて、市全体で何を保存して何を伝承していくか、その仕組みはどうするのか、気仙沼市だけに限らず、伝承ロードや国の施設もありますので、そういうことも踏まえたうえで、どういうような進め方をするのかということを考えていかないとなりませんから、どういう方たちに集まってもらって考えるかということも含めて、これからということになります。

 

今川 これから検討ということなので別な機会にいろいろ話したいと思いますが、きょう伺っておきたいのは、震災遺構を保存するにあたって震災伝承検討会議、遺構検討会議、岩井崎プロムナードセンター整備検討会議と三つの会議体を経ていますので、ある程度の土台はあると思います。残っているのは、震災遺構以外のネットワーク化だと思います。特に観光施設は「慎重に」という答弁でしたが、海の市2階にあった震災遺構の映像が流れるモニターがなくなっていて、シャークミュージアムも震災伝承コーナーがなくなったので、震災についてある程度、最低限の展示物は必要だと思います。

 

菅原市長 震災伝承と観光とどちらの切り口から行くかという問題があり、観光の切り口からこれまで言われてきたことは各観光施設がキャラクターを持ち、どこに行っても同じものがないようにということを標榜してきました。そういう中で唐桑半島ビジターセンターの津波体験館もなくなりました。そういう集中のようなものが大事だろうということで、これまで進めてきました。どこに行ってもそういうものを見られるということを整理するかのか。いったんは整理しましたが、今の提案はそうではないという提案に近い部分を感じるということなので、もう一度確認する必要があると思います。そういうものが成り立つやり方があるのかということもあろうかと思います。

当時どういう話をしていたかというと、広島市のホームページの観光のところに、原爆ドームは出てこないわけです。平和・原爆という部分があって、集中的にこれでもかという風に出ています。現在どうかは分かりませんが、13年前の記憶です。そういうことも踏まえて、どうするか。観光客が観光に来たけれど震災伝承に触れるということは、私は当然あって大事と思いますが、それは人によって気持ちが交錯するものなのか、区分けしたいものなのかということも含めて必要だと思いまして、往々にしてあるのは一部の者だけ持ってくると非常に中途半端なものが一部の施設のどこかにありましたというようなことがあります。そういうことは避けたいと思いますので、もう一回整理が必要だと思っています。

 

今川 きょう一番言いたかったのは、防災に関する部分は伝承館と美術館で十分な仕組みとして出来上がっていて、成果も出ているのですが、復興に関する部分を発信する場所がないということです。震災伝承館も復興に関して発信するコーナーは少なく、どういう思いで復興が進んできたかということは、観光施設にあってもいいと思います。国内外からの支援があって復興しており、気仙沼が元気に復興していて、それは皆さんのおかげですというメッセージは観光施設にあっていいと思います。観光推進機構の最新の宿泊者アンケートでは、(来訪目的の)1位は「グルメ」、2位は「自然・景観」、3位が「今の街並みが見たい」でした。そういう意味で、防災の部分と復興の部分を切り分けて考えてほしいです。答弁された伝承の計画にはそういったことも踏まえて考えていただけますか。

 

高橋危機管理監 体制作りもこれからです。基本的な観光の方針を踏まえながら、先ほど市長が話したように、観光施設の防災、それから震災伝承関係を区分けしてあらためて整理していくという話もしておりますので、その趣旨にのっとって私たちも進めていきたいと思います。

 

今川 体制もこれからということですが、注目したいのは図書館です。お願いして震災関連本のリストを出してもらったのですが、収蔵分だけで1500冊以上あるそうです。ずいぶんあると思いまして、それを整理する役割をどこかが持たないと、初めて見る震災記録集もあり、そういったものを整理して導き出せるものもあると思います。研究機能、学芸機能というのは気仙沼市の中ではどう考えていくのですか。

 

高橋危機管理監 現時点で明確な答えは難しいところですが、議員お話の通り、今後30年、50年、100年という将来に伝承する、防災の絆をバトンタッチしていくという観点からも、そういった視点での保管保存は重要かと思いますが、先ほど話した通り、計画の中でそれも踏まえて研究してまいりたいと思います。

 

今川 震災遺構の保存にあたりまして、私も広島市にある平和祈念資料館を見学してきました。そのときに学芸員から言われたのは、被爆から40年経って寄贈された遺品があり、それは亡くなった3歳の男の子が寂しくないようにと、庭に一緒に埋めた三輪車で、40年経ってお墓に移すときに、焼けただれた三輪車が寄贈されました。東日本大震災でも同じように時間が経ってから出てくる証言や遺品があると思います。この間、私も初めて知った証言がありました。当時は言えなくても、15年、30年経って初めて語れることがあります。それをつないでいく場所が震災伝承館なり市の機能として必要だなと思います。その辺も伝承計画の中でフォローする仕組みを考えていただきたいです。

 

菅原市長 結局、人がいるかということに尽きるのだと思います。最後には組織の問題ではなく、それを誰がやって、その人が誰につなげられるのかということ。その方がどれほど網羅性があるかということだと思います。例えば、本市がつくった復興誌と復興庁が3冊ぐらいですが、15㎝ぐらいあってなかなか読めないです。その内容はたぶん違っている。今川議員が自分でいろいろとまとめられたことと、市がつくったものもいろんな観点が違っているような中で、復興をどのように評価するかとか、あとどのように伝えていくかということは、非常に難しいなと思っていますが、一方で新しく出てくることだとか、新しいことではなくても15年目だからこう考えられるねとか、20年目だからこう考えるようになったというようなことは、災害の多い日本にとっては大事な学問になっていくのかもしれないと思います。そういう意味では、検討していく中で、だれか頼りになるような外部人材とか、震災復興のときはものすごくいっぱい先生が来られていたので、いま誰か来てその復興全部をつまびらかにしたいという人は出てこないわけです。しかしながらゼロとは言い切れないので、一つの分野として、そういう方も交えながら、やっていかないと続かないかなと感じたところです。

 

今川 伝承の計画が必要だという答弁は大きな一歩ととらえまして、また引き続き別な機会にお話を続けたいです。次の質問に移ります。

 

 

1 Comment

  1. 橋本茂善

    市議会でのご活躍に敬意と感謝を申しあげます。震災に関する内外への見せ方を再検証することは大事なことです。特に、100年後、それ以上の次代へ伝える作業は重要です。図書館には、体系的に調査研究出来る資料の保存整理が欠かせません。今川市議会議員の今後のご活躍を期待してます。

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