遅れましたが、気仙沼市議会9月定例会の報告です。
この報告書は、三陸新報に折り込んで面瀬地区の皆さんに配布します。
一般質問では、三陸道の活用、復興事業で整備される公園の在り方などで議論しました。時間不足だったため、12月定例会でも引き続き議論したいと思っています。質問と答弁の概要は次の通りです。
1.一般質問に対する答弁のその後の対応について
(1) 新しい質問の前に、これまでに行った一般質問について、その後の対応や進行状況を確認する。
1.防潮堤計画について、昨年の12月定例会でJR気仙沼線との調整を求めた津谷大沢漁港と赤牛漁港は「JRと協議する」、今年の6月定例会で必要性そのものを問題視した蔵内漁港草木沢地区は「JRの回答によっては計画の見直しを検討する」と答弁した。その後の対応状況と今後の見通しは。また、後世に疑問を残さないために作成を求めた海岸ごとのチェック表について、整理していれば公開を求める。
菅原市長 防潮堤計画にかかる津谷大沢と赤牛漁港のJRとの協議については7月29日、JR盛岡支社からJR用地の利用について前向きな回答をもらい、本社協議に入るために必要な用地面積図面及び計画概略図面の作成を急いでほしいと求められたことから、概略設計作成に取り掛かっている。今後、求められた資料が整い次第、JRに提出する。
蔵内漁港草木沢地区の防潮堤計画の見直しについては、JR気仙沼線が鉄路でなくBRTによる復旧区間となったことから、6月にJR仙台支社に問い合わせたところ、「JRとしては防潮堤を造る、造らないの判断をする立場にない。また、BRT避難計画では、防潮堤設置は前提としていない」との回答があった。このことから、地元の意見を聞きながら、守るべきものの再検証を行っており、必要性について判断していく。
防潮堤計画にかかる海岸ごとのチェック表については、今川議員から指摘を受けた後、散在していた資料を海岸ごとに一枚にとりまとめたチェック表を全海岸で整理しているが、震災直後の資料もあること、また、現在、守るべきものの再検証を行っていることから、整理できしだい、お示ししたいと考えている。
村上水産基盤整備課長 津谷大沢と赤牛漁港はJR用地を活用した防潮堤を検討している。基本的な形状としては、前面と背面をコンクリートで覆った傾斜堤を考えている。草木沢地区は再検証と合わせて地元の意見の集約を考えている。来月以降の聞き取りを予定している。ほかの地区の再検証は、住宅等の再建を確認すべきと判断しており、年内を目途にチェック表と合わせて検証していきたい。
2.昨年の6月定例会において、災害公営住宅の管理計画の公表を求めた議論の中で、財政シミュレーションについては「維持管理費用に係る基金条例等の制定を検討するので、提案時に合わせて知らせる」と答弁があった。災害公営住宅はすでに5割以上が完成し、本年度の当初予算では市営住宅使用料として約3億円を計上している。財政シミュレーションはいつ公表するのか。また、同じく26年度に策定業務を委託した市営住宅等長寿命化計画については、「既存住宅の集約化を含めた計画であり、入居者への事前説明などの慎重な対応が必要なため、適切な時期に公表する」と答弁していたが、適切な時期とはいつなのか。
菅原市長 災害公営住宅の整備が5割を超え、家賃収入が始まっていることから、基金条例については年内の制定を目指している。財政シミュレーションは、全体の入居状況や家賃決定には今しばらく時間を要することから、維持管理の想定をさらに進め、精査を続け、より正確な財政シミュレーション作成に努めていく。
市営住宅等長寿命化計画は、災害公営住宅を除く既存住宅の集約化を含めた計画であることから、事前に入居者への説明を行うなど、慎重な対応が必要ですので、災害公営住宅へ全ての被災者の入居が完了し、集約化の受け皿ともなりえる一般入居が可能な戸数を確認した後、入居者の意向、集約化の対象者数の把握等を踏まえたうえで公表していく。
3.26年の9月定例会で、民間事業者に対する津波避難施設整備補助を求めたところ、「必要とする施設の数や補助要項などを内部で検討しており、年内には方向性を取りまとめたい」と答弁した。その後、補助は不要と判断したようだが、その理由と命を守るための代替策は。
菅原市長 市が避難階段等に補助を行う場合について、復興庁との協議を含め、その方向性を協議してきたが、いくつかの課題もあったので、実質的な避難ビルの確保について検討してきた。現在、南気仙沼や鹿折地区の沿岸部においては、津波発生時の避難場所として、すでに指定している津波避難ビルに加え、近隣に新しく建設された災害公営住宅など公的施設を指定することで、徒歩避難を基本としながらも、おおよその範囲をカバーできる見通しとなっている。
今後、津波浸水想定地域にある各事業所等に対して、津波発生時の避難方法について、現在進めている地区別津波避難計画の策定や、防災講座等の開催を通して、早期の立ち退き避難を基本とした事業所ごとの避難計画の策定を促すとともに、避難訓練の実施を通し、安全な避難体制の構築を図りたいと考えている。なお、外階段等が利用でき、津波避難時に緊急的な使用について協力を頂ける事業所については、個別に協議したうえで、地域で利用ができる仕組みについても探っていきたいと考えている。
2.魅力ある公園・広場づくりについて
(1)震災後は公園やグラウンドの利用が制限されてきたが、復旧・復興が進めば震災前より施設数は増える見込みにある。それぞれの機能分担、維持管理について広い視野が求められている。せっかく整備される公園や広場が市民に活用されるため、次の点について市の考えを確認する。
1.南気仙沼の復興市民広場と防災公園、尾崎の防災公園、気仙沼向洋高校の旧校庭、気仙沼高校へ統合する気仙沼西高校の校庭、閉校した小・中学校の校庭、そして防災集団移転団地や土地区画整理区域の公園など、市内にはたくさんの広場ができる。市が把握している数や面積、維持管理費の見込みは。
菅原市長 公園・広場の数や面積、維持管理費については、今後新たに整備が計画されている公園・広場として、南気仙沼地区復興市民広場約5万㎡、南気仙沼地区及び松崎尾崎地区の防災公園2カ所合わせて約4万9千㎡、土地区画整理事業区域内に14カ所延べ約2万8千㎡となっている。その他、被災した都市公園の復旧として3カ所約8千㎡を整備する計画。整備後の公園・広場の維持管理費は、公園などの整備内容が確定した後に積算していく。
防集団地の公園については、災害公営住宅併設地区を含めて26地区30団地の各団地に設置しており、合計面積は約3万7千㎡。団地内の公園等の維持管理は、地元協議会などに清掃や除草など、通常の管理をお願いしているところであり、現在、当該管理に係る覚書を18地区で締結している。
災害公営住宅単独の団地は鹿折地区や牧沢地区など10地区13団地の各団地に緑地公園や広場などを設置し、合計面積は約1万6千㎡。緑地公園などの維持管理は、入居者の協力で草刈り等を実施したいと考えており、入居者説明会等でお願いしている。
高校のグラウンドの面積ですが、気仙沼向洋高校旧グラウンドは約3万2千㎡となっています。グラウンドは県が所有しており、現在、震災遺構として整備する旧南校舎と合わせて、譲渡に向けた協議を行っています。今後も地域や関係団体とともに、具体的な利活用や維持管理の方法についても検討していく。
気仙沼西高校グラウンドは約3万3千㎡です。かねてより400mトラックとしての整備候補地となっているが、県としては整備を行わないとの返答を頂いており、市としての整備について多額の費用を要することから、施設のレベルや財源について可能性を探っている状況にある。
齋藤益男教育長 閉校した小・中学校の校庭の面積は、旧浦島小学校は約5千㎡、旧落合小学校は約4千㎡、旧白山小学校は約3千㎡、旧小原木中学校は約7千㎡。4施設の維持管理は、地元協議会などの協力で校地内の草刈り等が実施されており、市実施分の草刈りにかかる委託費用は年間約30万円である。
種 類 | 面 積 |
南気仙沼地区復興市民広場 | 50,000㎡ |
防災公園(尾崎・南気仙沼) | 49,000㎡ |
土地区画整理区域内の公園(14カ所) | 28,000㎡ |
復旧する都市公園(3カ所) | 8,000㎡ |
防災集団移転団地内の公園(30団地) | 37,000㎡ |
災害公営住宅の公園・広場(13団地) | 16,000㎡ |
気仙沼向洋高校の旧校庭 | 32,000㎡ |
気仙沼西高校の校庭 | 33,000㎡ |
旧浦島小学校の校庭 | 5,000㎡ |
旧落合小学校の校庭 | 4,000㎡ |
旧白山小学校の校庭 | 3,000㎡ |
旧小原木中学校の校庭 | 7,000㎡ |
272,000㎡ |
2.各広場の役割を整理するため、気仙沼市運動施設の在り方検討委員会を設置し、今年3月に提言書が提出されました。この提言書を受けた対応と今後の見通しを示してください。
齋藤教育長 運動施設の在り方検討委員会から提出された提言書の対応については、3月16日の市スポーツ推進審議会で提言書提出の経緯・内容等を説明したほか、庁内関係各課及び県教育庁等関係機関へ提出し、整備に向けて働きかけている。
今後の見通しとしては、28年度に策定予定の市スポーツ推進計画の中の施設整備項目に提言内容を反映させるとともに、今後、復興事業により整備が進められる南気仙沼復興市民広場などについても、提言の主旨が活かされるよう関係部署と連携し、幅広く市民の意見を聞きながら対応していく。なお、市スポーツ推進計画にあたってはパブリックコメントを実施し、広く市民の意見も伺う予定である。
3.公園や広場の目的は運動だけではありません。団体スポーツの競技人口が減少し、さらなる人口減を回避できない状況の中、子育て世代、高齢者、観光の視点も大切にしなければなりません。鹿折地区土地区画整理の公園のように、設計を確定させる前に、もっと市民の意見を聞いて思いを共有したり、専門家の意見を反映させたりする機会、公園の総合的な計画策定が必要だと思いますが、市の考えを伺います。
菅原市長 これまで土地区画整理事業区域内の鹿折地区や南気仙沼地区では、公園づくりワークショップなどを開催し、地域の中学生から高齢者まで幅広い年代の方々から利用しやすい公園となるよう、設置する遊具や樹木の選定など公園ごとにさまざまな意見を頂き、地域の方々の思いを反映させた公園整備を進めている。また、内湾地区で住民の方々と専門家からなる、公園づくり歩道修景ワークショップを開催しており、鹿折地区や南気仙沼地区と同様に皆様からの意見を反映させた公園整備を進めていく。
松崎尾崎地区及び南気仙沼地区の防災公園に関しても、一定の整備水準等は交付金事業上の制約を受けたが、特に松崎尾崎防災公園に関しては、面瀬地区の中学生及び市民の方々、小中学校の先生方との意見交換会を開催するなどし、計画を策定してきた。南気仙沼復興市民広場に関しても、気仙沼市運動施設の在り方検討委員会からサッカーやラグビー、パークゴルフの活用が望ましい施設との意見を頂いている。
公園の総合的な計画策定に当たっては、市全体としての配置やバランスを考慮し、規模や目的によって定められている都市公園の整備方針に則るほか、これまで同様にワークショップなど、住民参加のプロセスを大切にしながら整備を進め、多様な利活用、運営維持管理に関して適切な計画を策定していく。被災宅地の活用のこともあり、戦略的な公園整備は、復興後半ならではの大きな課題として捉えていく。
小松・防災集団移転推進課長 防災集団移転団地の公園は、協議会型では協議会との話し合いや意見等を踏まえて整備している。団地の規模を勘案して必要な施設を設置しているが、通常の維持管理を協議会など移転者が中心となって行うことや、ランニングコストを鑑み、遊具やトイレなど将来において一定の費用や負担が発生すると見込まれるものは設置しない方針としている。一方、誘導型の団地はベンチなど基本的には協議会型と同様の整備を行っているが、工事の進捗に合わせて一部の団地ではフェンスや地面の仕上げなどを検討している。移転者の意向については、今後の維持管理に関する打ち合わせなどで要望があれば、どのような範囲で対応できるか検討したい。花壇や樹木なら要望があれば設置できる。
3.三陸道開通へ向けた準備について
(1)三陸道がいよいよ気仙沼市内に延伸してきます。来年度中には本吉町九多丸から松崎高谷までの区間が先行開通する予定ですが、三陸道を活用したまちづくりについて議論も準備も不足しています。開通した区間をより活用することが、残りの区間の整備促進にもつながります。三陸道の活用へ向けて次の点について市の考えを伺います。
1.三陸道の活用を統括する担当部署を示してください。
菅原市長 三陸道の活用を統括する担当部署は、三陸道は物流の活性化や観光客の誘客など産業面での効果をはじめ、防災や医療など多岐にわたり戦略的に利用していくべきと考えている。従って、産業部や建設部、保健福祉部など関係部署間の施策の連携を図りながら、総合的な取りまとめは震災復興・企画部が行う。
2.三陸道の開通によって、国道45号の車両通行量はどのように変化すると把握しているのか。
菅原市長 三陸道の開通による国道45号の車両交通量の変化については、国土交通省が各区間の事業評価の際に推計した交通量が示されており、現在公表している推計値では気仙沼市分では45%から86%ほど減少(詳細は下表まとめ)するものと推計している。なお、本市において仮称・階上インターチェンジの設置申請に伴って、国の事業評価を基に行った推計では、本吉町赤牛付近で61%、最知付近で67%、岩月付近で30%減少する結果となった。
三陸道による交通量の変化予測(1日当たりの車両) | |||
区間 | 三陸道 | 国道45号 | |
現状 | 開通後 | ||
歌津~本吉 | 12,300台 | 13,000台 | 1,800台 |
本吉~大谷 | 13,800台 | 18,000台 | 4,800台 |
大谷~高谷 | 14,300台 | 15,600台 | 6,000台 |
高谷~唐桑南 | 12,200台 | 10,900台 | 6,000台 |
唐桑南~唐桑北 | 11,100台 | 12,500台 | 2,200台 |
唐桑北~陸前高田 | 9,400台 | 9,700台 | 1,700台 |
※三陸道の交通量と三陸道開通後の国道45号交通量は平成42年の時点で推計 |
三陸道による国道45号の交通量変化(気仙沼市推計) | |||
地点 | 平成22年 | 開通後(42年) | 増減率 |
大谷赤牛 | 13,800台 | 5,400台 | △60.87% |
最知 | 22,000台 | 7,300台 | △66.82% |
岩月 | 22,000台 | 15,500台 | △29.55% |
3.三陸道を活用するための市の対応は。
菅原市長 震災前から高速交通網整備の立ち遅れが産業や観光などの発展の阻害要因となっていた。このような折、震災発生によって三陸道は一部供用区間を利用した緊急避難路や救援物資の輸送、救急患者の搬送など多岐にわたって有効に機能し、まさに災害に強い「命の道」としての役割を発揮した。三陸道が整備されることで、物流の効率化や交流圏の拡大、救急医療・防災機能の拡充、さらには復興に向けた産業の再生と雇用の確保、観光・産業の活性化などに大きな効果があるものと考えている。
三陸道を活用したまちづくりについては、これまでの復興まちづくりにおいても、インターチェンジ直結地に津波復興拠点整備事業を活用した水産加工団地の整備、物流会社の誘致、沿線における物販施設設置の検討、仮称・大谷インターチェンジ付近への道の駅の再建、気仙沼湾横断橋のライトアップの提案など、三陸道を戦略的に活用する取り組みを行ってきました。
今後は来訪者を意識したインターチェンジや橋の命名をはじめ、案内・誘導サイン、観光ガイドブック等へのインターチェンジごとのモデルコースや所要時間の掲載、沿線販売施設の魅力付け・周知、インターチェンジから近い市立新病院の医療対象エリアの拡大と周知策の検討、仙台空港アクセスによるインバウンドや仙台圏を意識した2地域居住者の誘致など、三陸道開通後を意識した戦略的対応を官民あげて検討していきます。