今月31日まで、気仙沼市総合交通計画案の意見募集が行われています。計画書は127ページもあって熟読するのは大変ですが、市民にとっては大切な内容ですので、そのポイントを解説します。
この計画は、地域と公共交通の現状を分析したうえで、今後5年間の課題と対策を整理しました。具体的な事業については、それぞれ進めていきます。
【路線バス維持に年間1億円の市負担】
一番の課題は路線バスです。市内に10路線23系統が運行されており、採算が合わない7路線16系統は市が約1億円を負担してミヤコーバスに委託運行してもらっています。
路線バスの状況、委託費用の負担状況は下表にまとめてあります。
市の負担は増えるばかりですが、超高齢化社会の到来、そして内陸への集団移転などに伴い、公共交通の役割は高まっています。橋の完成とともに定期船が廃止される大島、移転する市立病院へのアクセスも路線バスになります。料金を下げてたくさんの人に利用してもらうのか、公平な負担を維持するのかも大きな課題です。
【循環バスと交通結節点】
そこで、気仙沼市は6つの基本方針を次のようにまとめました。
・多様な公共交通の役割分担と連携
・復興まちづくりを支える公共交通の構築
・新たな住宅団地への対応
・効果的な利用促進策の実施
・持続可能な仕組みづくり
・都市間交通体系の再編整備と観光客の二次交通対策
大きなイメージでいうと、BRT(線路を活用したバス専用道)を基幹交通とし、路線バスや高速バスなどとの交通結節点(下図参照)を整備します。さらに市街地をまわる循環バスを実証運行し、市民の足を確保します。
今回の計画ではこの巡回バスと、市立病院、大島へのアクセス、BRTの新駅設置、仙台・一関への高速バスによるアクセスを「優先して検討すべき重要課題」に位置付けました。
【BRTで新市立病院へアクセス】
新しい市立病院へのアクセスは、①BRTのバスの一般道経由②既存のバス路線の延伸③循環バスによるアクセス-の3案を併記しました。この3つを組み合わせる方向で検討していますが、田中前通りの混雑、バスの乗り継ぎなどが課題となっています。開院が11月に迫っており、6月末までには具体策をまとめる予定です。
心配なのは、BRTを運行するJRの反応です。計画策定のための気仙沼市地域公共交通会議では、盛岡支社の担当者が「気仙沼線は9割をバス専用道にする計画で、中間的な都市間輸送の役割が求められている。市立病院へのアクセスが提案されているが、速達性を確保するため、専用道を専用にすべきと考えている」と発言。新駅設置についても「正式に要望がない」と話していました。
病院などへのアクセス、新駅設置はBRT化を受け入れる際のJR側から提案でしので驚きました。今後、事務レベルだけではなく、トップレベルでの協議が必要な事案です。
【スクールバス、タクシーとの連携も】
新たな計画には、路線バスとスクールバスの連携、市内に184台あるタクシーと路線バスの連携、デマンド型交通の導入、自家用車への乗り合いなども検討対象として挙げました。
下記の計画案の概要版をご参照ください。