気仙沼市の被災市街地復興土地区画整理事業の進捗状況を報告します。
津波で浸水した市街地を盛り土かさ上げし、今回のような大津波でも被害を受けない住宅地を整備する事業で、復興交付金の対象メニューです。沿岸部は被災しましたが、下水道や都市ガスなどのインフラは復旧し、再び快適な市街地を目指すことになりました。
気仙沼市は3地区で土地区画整理事業を進めています。
南気仙沼地区は32.5ha(計画人口2400人)で事業費は134億円、鹿折地区は42ha(2500人)で139億円の計画です。いずれも29年度内の完成を目指しています。
南気仙沼地区は全部で110万㎥の盛り土が必要で、25年度に18万㎥、26年度に59万㎥を終える計画です。85棟の建物移転・補償が必要で、25年度に4棟、26年度に80棟、27年度に1棟のスケジュールで補償を進める考えだそうです。
鹿折地区は100万㎥の盛り土が必要で、25年度に18万㎥、26年度に62万㎥を終える予定。建物の移転・補償は85棟あり、25年度に3棟、26年度に59棟の目標を立てています。
かさ上げ後の地盤高は最高で海抜5.5mにもなりますが、いずれ盛り土工事は「予定通り進んでいます」(気仙沼市建設部)。都市再生機構が2地区を包括して事業を受託し、難解なパズルを合わせるような換地作業も進められています。
当面の課題は、移転が必要な世帯の住まいの確保です。一時移転のための民間アパートがいっぱいのため、市は東新城と切通にまず計30戸のアパート(仮設住宅のようなもの)を建設し、盛り土が終わって住宅再建できるまでの仮住居を用意します。この仮住まい確保などのため、両地区の移転補償費予算が計30億円増額されました。
内湾地区は11.3ha(527人)の計画です。事業費99億円のうち65億円が移転・補償費に充てられます。南気仙沼、鹿折地区と異なるのは、盛り土かさ上げしても災害危険区域のままとなるため、住宅再建には公的支援が受けられないことです。せっかく実施した内湾地区復興コンペには国内外から100件以上のアイデアが寄せられており、その活用も期待したいところです。いま、住民が何度も集まって夢のあるまちづくりを模索しています。この計画の具現化が地域復興のカギを握ってます。ただ、防潮堤や地盤高の協議に時間がかかり、土地区画整理の事業化が遅れた影響も心配です。
3地区とも復興交付金に頼った事業になりますが、計画人口の多くを災害公営住宅入居者に頼っています。貴重な復興予算をたくさん投入するので、失敗は絶対に許されません。
先行する南気仙沼と鹿折では、かさ上げ後の土地を貸したい、売りたいという地権者が少なくなく、立地を希望する事業者と仲介する取り組みが行われています。完成直後は空き地が目立つかもしれませんが、魅力があれば、少しずつでも賑わいは取り戻せるはずです。市街地をゼロから再構築できることはチャンスでもあり、人口減少社会の中、斬新で夢のあるまちづくりが期待されています。
なお、復興交付金を使った土地区画整理は、片浜地区でも検討されましたが、計画人口の条件をクリアできずに断念しました。