急激な少子化によって、本吉地区の高校再編が無視できない状態となっています。宮城県教委は2月、新県立高校将来構想の第3次実施計画を公表しましたが、本吉地区の新たな再編には踏み込みませんでした。どうやら県は「地域のことは地域で決める」という姿勢に切り替えたようです。
【県立高校将来構想の第3次実施計画公表】
新県立高校将来構想は平成23年度から32年度までを計画期間とし、実施計画を策定して高校の再編にも取り組んできました。
その第3次実施計画は29年度から32年度までを対象にしています。「未来を担う人づくり」を目指し、キャリア教育、地域ニーズに応える高校づくりを進めます。
社会情勢の変化に的確に対応した学科再編と学校配置のため、被災した気仙沼向洋高校、農業高校、水産高校の再建に取り組みます。ニーズに応えて2部・多部制の定時制高校の未設置地区への設置も検討することとしており、夜間コースしかない気仙沼高校の定時制についても検討対象になる可能性があります。
【地域が決める。大河原方式での再編検討】
南部地区の大河原町には、34年4月に職業教育拠点校を開校させます。少子化によって柴田農林高校と大河原商業高校を統合し、農業系と商業系のほかにデザイン系の学科も設置します。この再編計画は「大河原地域における高校のあり方検討会議」を28年4月に設置し、地域と一緒に議論して練り上げました。
第3次実施計画における本吉地区では、30年度再開を目指して気仙沼向洋高校の新校舎整備を進めるほか、すでに決まっている通り、30年4月から気仙沼西高校を気仙沼高校に統合します。実は、さらなる再編を覚悟していたのですが、盛り込まれませんでした。
【さらに15年後には子ども半減】
県内で最も少子化が進む本吉地区では、11年度に鼎が浦高校が気仙沼高校へ統合し、震災後に気仙沼女子高校が閉校しました。昭和60年代に中学卒業者は1700人以上でしたが、30年過ぎた今春は721人まで減少しました。3年後の32年度にはさらに623人まで減ってしまいます。
気仙沼西高校がなくなった後の本吉地区の公立高校全日制の定員は4校で600人、私立の東陵高校は120人で、気仙沼高校の定時制は40人です。地区外へ進学する生徒もおり、高校一つ分が余ることは確実なのです。
さらに、少子化はとまらず、27年度の出生数は気仙沼市と南三陸町を合わせて389人でした。15年後には進学拠点校として240人の定員を維持したい気仙沼高校と1~2高校があれば十分になってしまいます。まずは気仙沼向洋高校と本吉響高校の再編は逃れられないでしょう。
【なし崩しの統合を防げ!】
県教委は「2年連続して収容定員の3分の2未満、1学年2学級規模を維持できない学校は原則的に統廃合の対象にする」との方針を示しています。気仙沼高校以外の定員はみんな120人となるため、あと数年でこの基準を守ることは難しくなります。現実を直視せずに手立てを打たなければ、各校の活力が少しずつ失われるだけでなく、強制的な統合という流れになってしまいます。
なし崩しに高校が減っていけば、人口流出と少子化は悪化してしまいます。気仙沼西高校の統合に当たって、同窓会が県教委に対して地区全体の高校教育の在り方を考える組織の設置を要望したところ、「地域と一緒に検討していくことが重要である。大河原地域のような組織を該当する地区ごとに設置して検討を進めていきたい」との回答がありました。
地域として、進学校を優先するのか、地域産業を担う人材の育成に力を入れるのか、まさに「選択と集中」を求められるのです。そのためには、地域の将来像を共有しなければなりません。気仙沼市と南三陸町で本吉地区を形成していますが、全県一学区化、三陸道の延伸によって通学圏は変化しています。さまざまな観点から高校の在り方を早く考えないと、地域間競争から取り残されてしまうのです。