未合意は6地区【気仙沼市内の防潮堤計画】

気仙沼市内の防潮堤計画は、大きく分けて6地区で未合意のまま27年度を迎えました。残った地区のほとんどは難題を抱えており、着地点がまったく見えない地区もあります。

市のまとめでは、今年1月末時点で87海岸のうち74海岸で「高さ、復旧位置について概ね合意した」となっています。このまとめに最新の状況を加えると、未合意のまま残ったのは➀浦の浜一帯➁長崎漁港➂魚市場から港町➃岩井崎➄大谷海水浴場➅日門漁港、の6地区となりました。河川堤防は全地区で計画が固まっています。

➀浦の浜「住民が納得できず」

大島の玄関口である浦の浜漁港は、県が海抜7.8mの防潮堤を計画しています。100年に1回程度のペースで繰り返し発生している明治三陸級津波を防ぐ高さなのですが、住民は納得していません。300年の歴史がある家までレベル1津波で浸水する想定となった津波シミュレーションへの疑問があったり、周辺がくぼ地になったりすることなどが原因です。

※写真の左にある電柱に防潮堤の高さが表示してあります。

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問題を複雑にしているのは、大島架橋建設に伴って県道の付替えが計画されていることです。県道と防潮堤を一体的に整備する案を提示しており、防潮堤が決まらないと県道の整備も遅れてしまうのです。さらに新たな観光施設「大島ウエルカムターミナル」が、防潮堤の背後地に検討され、防潮堤計画が固まらないことによる影響を受けています。

※写真は説明会で示された浦の浜のイメージ図です。

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県は防潮堤の海側を盛り土して緑化したり、防潮堤内に歩行者用のトンネルを用意したりすることで、理解を求めましたが、話し合いは平行線のままです。住民有志による「浦の浜のこれからを考える会」が要望活動などを行っており、県の対応が注目されます。なお、隣接する市管理の磯草漁港なども浦の浜とともに計画が決まっていません。

➁長崎漁港「判断はこれから」

大島の外洋側にある長崎漁港は、隣の小田の浜海水浴場の防潮堤が原形復旧に決まった後も、海抜11.8mのレベル1防潮堤が計画されています。小田の浜の結論を待っていたこともあるのですが、長崎漁港の背後地には民家があり、レベル1防潮堤か無堤化かは地域が最終判断することになります。

日本地理学会津波被災マップ (小田の浜)

➂魚市場から港町「海が見えないデメリット大」

魚市場から港町へかけては海抜5mの防潮堤が計画されています。用地がないために直壁タイプを計画し、圧迫感を軽減するためのアクリル窓も設置する考えです。しかし、地域からは「海が見えなくなる」「観光客が来なくなる」「係留した漁船の防犯が心配」などと見直しを求める意見が出ています。

防潮堤に反対というよりも、海が見えなくなる計画へ反対しており、海際から大幅にセットバックすることを提案する人もいます。しかし、まちづくりの計画が進められる中、現段階での位置変更は極めて困難です。このままだと地域が納得する計画を示せず、話し合いが長引く可能性が出てきました。

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防潮堤には、遠隔操作できる電動の陸閘(出入口ゲート)が設置されますが、この課題があまり議論されていないことも心配です。陸閘は津波注意報とともに閉鎖されます。海側に取り残された車両のため、防潮堤を乗り越せるスロープを1カ所用意します。

このスロープは大型車両でも走行できる道路幅ですが、もしも盛漁期に注意報が出たらどうなるでしょうか?混乱しないでしょうか?出入りする業者との話し合いが不足している気がしてなりません。

➃岩井崎「防潮堤を全面覆土」

岩井崎は、半島先端部にある崎野海岸(県の治山施設)、岩井崎地先海岸(県の建設海岸)で未合意となっていますが、実際はほぼ合意しています。観光地である岩井崎の景観を守るため、駐車場がある地区海岸は防潮堤の全面を覆土して緑化する計画です。

潮吹き岩周辺にはもともと防潮堤がなかったのですが、この区間だけレベル1防潮堤がないのは危険と判断し、松林の背後地に防潮堤を整備することになりました。市のまとめでは未合意となっていますが、県によると、この地区一帯の防潮堤計画は基本的な合意が得られているそうです。市は防潮堤の背後地に観光交流広場の整備を検討しています。

※下の図の茶色い部分が岩井崎の防潮堤ラインです。

岩井崎の全体図

※写真は被災した岩井崎地区海岸です。天然石で修景していました。

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➄大谷海水浴場「ボールは地域にあり」

海抜9.8mの防潮堤が計画されている大谷海水浴場は、所管する県と住民の間に気仙沼市も入って話し合いを重ねています。現在は「大谷里海づくり検討委員会」が地域としての方向性を検討しており、いずれ結論が出るものと思われます。

この地区は防潮堤の背後に防災林、JR気仙沼線、国道45号が並んでいたため、そのままレベル1防潮堤で復旧すると砂浜をつぶす計画になっていました。治山施設から県の建設海岸へ担当を替えることで、計画の自由度が上がり、砂浜をつぶさない計画も示されました。

しかし、地域の要望は国道45号のかさ上げです。県の提案はいずれも国道をそのままにする案だったため、話し合いは膠着状態でした。そこで、27年12月に、市が「実現はかなり難しい」としながらも国道をかさ上げする案を提示し、地域の意向を確認している状態にあります。

※下の図が国道をかさ上げして防潮堤と兼用堤にする案です。

大谷のD案

新たな案は、気仙沼線復旧への影響、予算確保、国道沿いの民有地とのすりつけなど、課題は少なくありません。この地区はニュースなどでもたびたび取り上げられ、全国的な関心が高いところなので、その結論が注目されています。

➅日門漁港「無堤で危険区域指定」

県が管理する日門漁港には、海抜9.8mの防潮堤が計画されていましたが、気仙沼市は無堤のまま災害危険区域を指定してしまいました。背後はすぐに高台で、低地には農地しかないため、地域からは「防潮堤はいらない」という声が上がっています。

大谷

隣りの大谷海水浴場の計画に左右されますが、県としては背後に国道45号、気仙沼線があり、県としては難しい判断が迫られることになります。

神止浜も堤防高の協議へ

6地区のほかに、唐桑町の神止浜漁港で市が堤防高の変更を検討しています。9.9mから7.6mに変更することになった鶴ヶ浦漁港と同じように、津波シミュレーションのブロックを見直したことで11.2mを9.1mに引き下げることが可能と判断し、これから地元と話し合いに入る予定です。

震災から4年が過ぎ、冷静に判断出来たり、防潮堤に対する知識が増えたりした一方で、予算上の問題が浮上してきました。国が設定した集中復興期間は27年度までの5年間で、その期間は事業費の100%負担が確約されていました。28年度以降は、その確約がまたせありません。たとえ1%の地元負担でも、被災自治体にとっては重い負担のため、27年度中の予算獲得を目指して行政は合意形成を目指すことになります。しかし、魚市場と港町の説明会では、「この際、急がずに考えよう」という意見も出ています。

※下の図は気仙沼市がまとめた防潮堤の合意状況です。

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2 Comments

  1. 梅田 治彦

    横浜住民です。今朝(9月23日)のTVモーニングショーで気仙沼のコンクリート防潮堤が採り上げられ、こんなに高い(6mと紹介していたと思います)壁を高いお金を注ぎ込んで造ってよいのか?との観点で紹介されていました。また、建設計画は住民の意向とは別に、どんどん進んでいるような印象を持ちました。
    で、実態はどうか、と気になってネットを見たら、貴レポートが見つかったという次第です。
    どんな計画がよいのか、結論は住民が決めることが一番で、貴レポートを見る限り、住民の全てが防潮堤の導入に賛成しているわけではない、まだ態度を決められない人が多い、という様子で、極めて自然な感情だと思います。個人的な意見としては、はどんな防潮堤を造ろうが海の町の棺桶になると思います。そのうち、脱出できない人だけが暮らす町になるでしょう。早期避難が可能な体制や施設を造り、海へのアクセスは従来並み、可能なら従来以上にする方向の施策をコツコツと進めることが好いと思います。が、どうするかは、住民が話し合って決め、それに従う、決まるまでは実施しない、という姿勢でいれば、第三者がどうこう意見する筋はない、立派な結論だと思います。それにしても、急がず熟慮することが一番大切ではないでしょうか。

    Reply
    1. 今川 悟 (Post author)

      梅田さん、コメントありがとうございます。
      防潮堤の問題は複雑なため、なかなかテレビでは伝えきれない部分があります。堤防高を変更すれば背後のまちづくりに影響するし、復興予算を使用できる期限もあり、いろいろと疑問を抱えながら、計画は着実に進んでいます。
      震災から4年半が過ぎて、住民は出口の見えない話し合いに疲れていますし、行政も一度提示した計画をきっかけもなく変更しにくいため、結果的にはこのまま計画通り進むことになってしまいそうです。
      テレビで取り扱われることにより、第三者の介入を期待しています。防潮堤の予算は国が全額負担しています。会計検査院や担当者省庁が無駄な防潮堤をつくらせないための通知を出してくれれば、地方自治体も見直しやすくなります。ご指摘の通り「急がず熟慮する」ためのきっかけがほしいです。

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