9.9㍍か7.6㍍か地元に選択権【鶴ヶ浦防潮堤】

気仙沼市が管理する鶴ヶ浦漁港。唐桑半島に近いこの漁港に、レベル1津波に対応した海抜9.9m(震災前は2.5m)の防潮堤が計画されていましたが、震災から4年が経とうとしている27年2月になって、市が地元に堤防高の変更を提案しました。

震災前の鶴ケ浦

【地域海岸の堤防高統一に例外】
新たに提案された高さは7.6m。当初は「唐桑半島の小鯖漁港から鶴ヶ浦漁港まで」を一つの地域海岸として、その中でレベル1津波の想定が一番高かった小鯖と西舞根に合わせて9.9mにしていたのですが、鶴ヶ浦だけで見ると7.6m(6.6m+余裕高)だったのです。

地域海岸は、湾ごとを基本に設定しており、半島や離島の遮蔽効果も考慮して区分しました。津波に対する安全性を確保するため、地域海岸としての堤防高統一を堅持してきましたが、県管理の鮪立漁港に続いて例外を認めました。市管理の神止浜漁港でも11.2m→9.1mへの変更を可能にする予定です。

気仙沼市の堤防高設定根拠_page005

【湾内のみの影響と判断】
鶴ヶ浦漁港では、今月19日に地元説明会を開きました。

市は「地元から下げてほしいという意見が以前からあった。堤防高を下げることによって、レベル2津波による背後地の浸水深は高くなるものの、影響は湾内にとどまる」「レベル1津波に対する安全性は変わらない」と変更可能になった理由を説明しました。

堤防高を2.3m下げると、半傾斜堤の場所は底辺も27.6mから11~12m狭くなります。

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これから、影響を受ける地権者らに個別の説明を行いますが、9.9mのまま進めるか、7.6mに変更するかの意向は、「自治会で協議してまとめてほしい」としました。防潮堤の計画が決まらないと岸壁の修復や道路整備も進まないので、3月末に最終説明会を開いて堤防高を決定する予定です。

【すでに合意していたが…】
鶴ヶ浦地区は、防潮堤計画に対してはもともと慎重な住民が多かった地区です。

堤防の背後地は災害危険区域に指定され、大きな防潮堤ができると漁港への出入りや作業も不便になるからです。しかし、津波で被害を受けた住宅の修繕が災害危険区域内で進み、住民が戻ってくると、状況は一変しました。低地に住民がいるのなら、防潮堤は必要だということで合意したのでした。

そこに、堤防高変更の提案があり、もともと慎重派だった住民は歓迎しました。

問題は、東日本大震災級のレベル2津波の影響です。レベル1津波は高さを変えても防げますが、レベル2津波は越流量が増えてしまい、災害危険区域も拡大します。背後地の住民がこれを受け入れてくれなければ、いくら地域の意向としてまとめても行政は慎重にならざるを得ません。

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【再チェックが必要】
市が堤防高の変更を認めたことは、とても柔軟な対応と評価したいです。しかし、一つだけ疑問が残ります。

説明会では、現在の計画から堤防高を下げる内容で説明しましたが、レベル1津波の高さが変われば守るものも変わります。9.9mなら守るものがあった場所でも、7.6mなら守るものがなくなることもあるのです。

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しかも、7.6mという高さは、防潮堤を整備したことによるせり上がり分と、さらに1mの余裕高を含んでいます。市は堤防高と同じ地盤高で影響を確認したようですが、実際の明治三陸津波の高さは、6.6m以下なのです。レベル2津波の減衰効果は本来の役割ではなく、背後地に守るべきものがあるかどうかを確認しなければならないのです。

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こうした疑問を解消するためには、レベル1津波の浸水シミュレーションを実施して公表しなければならないのに、市はレベル2津波のシミュレーションで災害危険区域への影響しか確認していません。防潮堤計画は、行政と地元が合意すれば進めてしまっていますが、多額の公費を投入するなら、多角的なチェックが必要です。その一つが市議会なので、しっかりチェックさせて頂きます。

なお、地域海岸内で、レベル1津波の想定高が異なるところは他にもありますが、県も市も堤防高変更は考えていません。詳しくはこちらの資料をご覧ください。→気仙沼市における海岸堤防高について

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