山田線に学ぶ鉄路復旧の課題

津波で被災したJR気仙沼線と大船渡線の鉄路復旧が進展しない一方で、第三セクターへの移管を条件に復旧することになった山田線(宮古-釜石間55.4㎞)。5月9日に大槌町で開かれた「おらほの鉄道を考える集い」から、鉄路復旧の明暗を分けている理由を考えました。

■第三セクターへの移管が条件

山田線の北側にある北リアス線(宮古-久慈)、南側にある南リアス線(盛-釜石)は、岩手県と沿線自治体による第三セクターの三陸鉄道が運行しています。JRは赤字路線である山田線の復旧に消極的でしたが、三陸鉄道へ移管することを条件に鉄道施設を復旧することにしました。復旧はJRが行い、一時金として30億円を拠出してもらうことで、今後の運行費用を負担していく沿線自治体も同意しました。今年3月には復旧の着工式が行われています。

■おらほの鉄道を考える集い

「おらほの鉄道を考える集い」は、山田線の早期復旧を求める大槌町民の会が主催しました。

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最初に、三陸鉄道の望月正彦社長が講演。国鉄の廃止対象路線を引き継いだ三陸鉄道の歴史、南北リアス線の全線復旧を決断した理由、山田線を引き受ける上での課題などを説明しました。

その講演内容には、気仙沼線と大船渡線の鉄路復旧のヒントがたくさんありました。

赤字路線を引き受けて昭和59年に開業した三陸鉄道でしたが、予想に反して当初の10年間は黒字だったそうです。ところが、沿線人口が開業時から2割減少し、少子化で高校生が半減した上、マイカー復旧によって赤字に転落しました。県立病院の郊外移転、郊外型ショッピングセンター、職場の団体旅行減少も要因でした。

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■赤字でも復旧を決断した理由とは?

東日本大震災で大きな被害を受けながら、赤字路線の復旧を目指したのは、国が復旧費用のほとんどを負担したからという理由だけではありませんでした。人口減少が続いているからこそ観光客による交流人口の増加を目指し、少子高齢化社会だからこそ通学と通院の足を守ろうと決意し、震災直後から復旧へ向けて駆けずり回ったのです。そして震災翌月には、沿線市町村長から全線復旧の了解をとりつけました。

大きな課題は、駅周辺のまちづくりだそうです。住居の高台移転、復興道路の整備によって車社会は一層進展し、鉄道利用者の減少が心配されています。その対策として駅を中心としたまちづくりを計画している市町もあり、宮古市は市役所を駅近くに再建することを検討し、岩泉町は駅周辺への集落移転を進めています。いずれも、鉄道を自分たちで守るという「マイレール意識」によるものです。

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■「鉄道廃止で栄えた町はない」

「鉄道が廃止されて栄えた町はない。鉄道の存在感と安全性は地域の貴重な財産です」と望月社長。講演後、気仙沼へのアドバイスをお願いしたところ、「鉄道がなくなる危機意識を行政も市民も共有することが大切。観光や交流人口への影響をよく考えてほしい」と教えてくれました。利用促進へ向けた取り組みも必要だそうです。

■利用促進とマイレール意識

運行者である望月社長が指摘した課題は、JRの思いを代弁しているようでした。つまり、復旧後に鉄道を活用したまちづくりをちゃんと考えているかどうかが心配だということ、そのためには「マイレール意識」を持ってほしいということです。

講演後に行われた意見交換会でも、高校生が「親に送り迎えの負担をかけずに出かけたい」、観光関係者も「再開が最終目的ではない。将来に残すために、鉄道を利用した観光商品を考えたい」と、マイレール意識の高さをアピールしました。

最後に、JR大船視線・気仙沼線の鉄路での復旧を早期に実現する会の畠山光夫代表が登壇し、「住民にはBRT(バス高速輸送システム)が便利という声が増えているが、もっと広い目で考え、必ず鉄路で復旧させたい」と語りました。

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■取り残された気仙沼線と大船渡線

実は、「ほらほの鉄道を考える町民の集い」の主催団体は、山田線だけでなく、気仙沼線、大船渡線の早期復旧を求める署名活動を、気仙沼市の団体などと一緒に行いました。このときは50万人の署名を集めて国に提出しましたが、その後の動きは異なりました。

山田線は、BRTによる仮復旧を沿線自治体が拒否し、鉄路復旧を頑なに求めました。利用促進の計画を作ったり、住民による集いも開催しました。

気仙沼線と大船渡線は、鉄路復旧のための調整会議が昨年2月から1年以上も開かれていません。JRは原形復旧を上回る費用(気仙沼線は400億円、大船渡線270億円)の行政負担を条件としていましたが、その後はトップが「復旧しても利用するのかという課題もある」と発言しています。

■復興予算が鉄路復旧を左右

これから6月にかけて結論が出される今後5年間の復興予算に、復旧費用が盛り込まれるかどうかが鉄道再開の成否を大きく左右します。まずは、鉄道がなくなることのデメリット、BRTとの比較をしっかり考えることも大切です。後悔をしないようにしっかり議論したいです。この問題は市議会でも継続して取り上げていきます。

※気仙沼線とBRTの問題は昨年6月のレポートにまとめています。

 

 

 

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