気仙沼市の防潮堤議論もいよいよクライマックスです。気仙沼市が管理する漁港で最後まで残っていた本吉町蔵内漁港の防潮堤計画で、国道をかさ上げして海が見えるようにする計画が固まりました。
【一度は合意したものの見直しを指示】
南三陸町と気仙沼市の境にある蔵内漁港は、国道から海が見えるドライブスポットでした。しかし、海抜9.8mのレベル1防潮堤を整備することなり、当初の計画では直壁タイプを主体とした防潮堤によって国道から海が見えなくなる案が示されていました。国道をそのままで漁港の機能を損なわないようにするためでした。
※下図は当初計画です
背後地には国道と商店などがあり、地域はこの計画を2014年の説明会で受け入れ、市は工事発注の準備に入りました。ところが、一部住民の思いを知った菅原茂市長が計画の見直しを指示。復興予算による防潮堤と道路の一体化については、復興当初は国が難色を示していましたが、鮪立漁港、大谷海水浴場などで認められており、国道45号をかさ上げする案について検討を重ねてきました。
2020年度完成へ向けて期限が迫る中、ようやく今年10月18日になって新しい計画の説明会がありました。
【154m区間で眺望守る。背後地の盛土も】
その計画によると、防潮堤の堤体を直壁から半傾斜タイプに変更し、防潮堤と一体的に国道をかさ上げし、国道のルートも少しずらします。これにより、当初計画では426mの区間で海が見えなくなっていましたが、計154m区間で国道から海が見えるようになります。堤体タイプを変更したことで、防潮堤の上を歩くこともできます。
国道を最大約5mかさ上げすることに伴い、背後地3400平方mを4~5mほど盛り上げすることも計画しています。
※下図は新しい図面です。青色が海の見える区間です
【改善しても事業費抑制の工夫】
時間と労力は費やしましたが、意外なことに、事業費(15億円規模)は当初計画より抑えられました。基礎杭などに費用がかさむ直壁タイプから経済的で維持もしやすい半傾斜タイプに切り替えた効果です。国道の仮設道路は当初計画でも変更計画でも必要で、漁港側に設置する方針です。
気仙沼市内の防潮堤計画で固まっていないのは、あと日門漁港(宮城県管理)だけになりました。ただし、市が管理する本吉町の前浜漁港についても最終計画がまだ公表されていません。
※下図は現在と完成後を比較したイメージ図です。