衆議院決算行政監視委員会が8月21日、気仙沼市を視察しました。あまり聞きなれない組織ですが、イギリスなどでは税金を使った事業の費用対効果を検証する重要な役割があるのだそうです。そのメンバーが、小泉や大谷の防潮堤計画に辛口の意見を述べました。
視察に訪れたのは松浪健太委員長ら14人。総務省行政評価局、会計検査院などの幹部も随行し、防潮堤計画が進む小泉海岸、大谷海岸、内湾地区を視察しました。最後に、宮城県気仙沼土木事務所で担当者と意見を交わしました。
「南海トラフは東日本大震災の10倍の被害が想定されている。復興へ国が何を支援すればいいか、何を優先すればいいかを学びに来た。特に今回は防潮堤の費用対効果に絞って学びたい」と松浪委員長。県は小泉海岸に226億円(離岸堤30億円・防潮堤42億円・河川堤防154億円)、大谷海岸に53億円(建設と林野)かかることを報告した上で、災害危険区域の縮小効果などを説明しました。堤防高が14m以上の防潮堤が宮城県は2海岸だけなのに、岩手県は20海岸もあるという比較データまで示したのです。
これに対し、元国鉄幹部の今村雅弘理事は「津谷川の右岸側は背後がすぐ山だ。堤防の意味はあるのか」と指摘し、県は「農地はレベル1津波から守られる」とやや苦しい答弁。松浪委員長が大谷海岸の防潮堤で守られる世帯数、1世帯当たりの費用を質問したが、県は「計算したことはないが、大谷には海水浴場や道の駅もある」と答え、「それでは全国の海水浴場が成り立たなくなる。道の駅は移転させればいい。これでは血税投入に納得得られない」と言い返されてしまいました。
厳しい指摘が続いたものの、最後には松浪委員長が「今のスキームでは仕方ない。次の災害へ向け、新しいメニューを提案できるように議論したい」と矛先を収め、平将明理事が「いずれ必ず、国全体として復興に使った税金の評価に入るので、費用対効果を念頭に置いて事業を進めるように」と指示しました。
結局のところ、決算に関する委員会なので、終わったことをチェックし、次に生かすことが目的のため、現在進行中の事業には踏み込めないようでした。こうした議論は、予算承認の段階でちゃんと行われたのだろうかと疑問が残りました。委員からは「国道やJRを移せばいい」「防潮堤事業費の何分の1かのお金を渡して、わずかに残った家を移せばいい」という意見も多かったのですが、国がそういう制度を用意してくれれば、地元はこんなにもめなくてよかったのです・・・。