気仙沼市の尾崎地区は、震災前に100世帯304人が暮らす集落でした。その地区を高さ8m超の津波が襲い、314棟あった家や倉庫などはことごとく全壊し、26人が犠牲になりました。自治会である「尾崎郷和会」も解散しました。
その大震災から3年8カ月が過ぎた26年11月16日、面瀬小学校体育館で復旧・復興事業の説明会がありました。災害危険区域に指定されてもう人は住まないのですが、8つの大規模事業が計画されていることが説明されました。その内容を事業計画図にある順番で紹介します。
➀治山事業(防潮堤整備)
防災林を守るための治山施設として防潮堤を整備します。延長は520m、高さは海抜7.2mです。震災で防潮堤が決壊し、海岸線が浸食されて後退していますが、震災前のラインまで埋め立てます。年度内に測量・設計、来年度に用地買収を進め、早ければ28年度に着工し、30年度の完成を計画しています。堤体は直立タイプで、非常用の階段は2カ所に設置予定です。
災害復旧は発災から3カ年度以内というルールのもと、当初は25年度内の完成を目指していましたが、100mほど後退した海岸線の埋め立てと地盤改良に時間がかかるため、完成は27年度に遅れるという説明がされていましたが、30年度までずれ込むことになりました。砂浜が戻るかどうかは不明です。
➁防災林造成事業
防潮堤の背後地に、防災林を幅50~200mで整備します。津波で松が流された震災の検証を踏まえて、木の根が深く張るように地盤を海抜2.4mまで盛り土し、黒松を植えます。27年度に用地買収を進めて造成に入り、28年度末の完成を予定しています。植える樹種は、地元と相談して広葉樹も取り入れる方針です。
➂面瀬川の災害復旧(堤防整備)
面瀬川の堤防は、河口から国道45号気仙沼バイパス付近まで延長970mにわたって整備されます。高さは海抜7.2~5.5mで、新たな尾崎橋付近から段階的に下がってきます。県道から海側は盛り土してコンクリートで覆うタイプ、県道から陸側は壁タイプになります。堤防整備に合わせて県道の面瀬川橋の架け替えが必要となり、今の橋の下流側に新設します。年度内に工事を発注し、工事説明会を開いたうえで、29年度の完成を目指しています。
河口付近の防潮堤幅は約40mで、これが両岸に整備されます。一方、川幅は11m。幅11mの川から津波がもれないため、幅80mの堤防を整備するということです。
➃松岩漁港の防潮堤復旧事業
防潮堤を海抜7.2mの高さで整備します。尾崎神社は防潮堤より高いので、漁港と治山の防潮堤を山付けする形にします。この神社では震災で避難して住民30人ほどが助かっています。
漁港へ車両で出入りするため、防潮堤を乗り越える道路を用意します。幅員は6.5mです。これとは別に、防潮堤の天端に管理用道路(幅員4m)を整備します。測量設計を進めて年内に説明会を開き、27年度の着工と完成を計画しています。
➄漁業集落防災機能強化事業
漁業者のための作業スペースとして2000㎡を整備します。防災公園とともに27年度末に完成予定です。
➅農地災害復旧
震災復興計画では被災した17.6haを市で買い上げて津波緩衝緑地帯とする方針でしたが、復興予算が認められずに、計画を2.9haに縮小したことで、農地として復旧する場所が出ました。いまさらですが、災害復旧として沈下分をかさ上げします。27年度に工事・完成を予定しています。
➆市道災害復旧事業
復旧に合わせて、港岩井崎線が6.5mに拡幅されます。ほかの市道も海抜1.8mまでかさ上げして復旧します。河口にあった尾崎橋は上流側に100m移動して整備します。年度内に説明会を開き、27年度に橋の工事に入り、29年度末の完成を予定しています。
そして、最後に防災公園整備事業です。
広さは2.9haあり、半分以上は多目的広場する予定です。この広場はサッカーや野球などのスポーツ、コミュニティーづくりなどに活用できます。あずまや、トイレ、ベンチなどは整備します。駐車場、緑地も用意します。
公園整備の条件は、津波避難のための築山整備です。新しい防潮堤を整備すると、今回と同じような津波の浸水深が1mに抑えられるので、余裕を見て、築山の高さは海抜6mにする計画です。しかし、防潮堤よりも低いので、基本的には安全な高台に避難することが大切で、ここは逃げ遅れた人のための備えになります。測量を進めて、来年1月末ごろに機能や用途について地元の意見を聞く予定です。来年度に用地買収と工事に入り、年度末までに完成させます。
尾崎地区に住民は戻らず、このままでは住民不在のまちづくりとなってしまうので、面瀬地区まちづくり協議会が積極的に行政との話し合いに参加していこうと思っています。面瀬地区は高台が多く、津波被害は比較的少なかったのですが、尾崎だけは壊滅被害でした。尾崎の住民の多くが面瀬地区の高台へ移転しています。今後、尾崎を面瀬地区の憩いの場にできるように、どんどんアイデアを出していきましょう。