東北大学報告書の続報

9月27日にホームページで、東北大学災害科学国際研究所の報告書「2011年東日本大震災から見えてきたこと」を取り上げました。被災地で進む防潮堤計画について検証し、堤防高を柔軟に考えることを提言したり、粘り強い防潮堤の効果について問題提起したりする内容が報告書にあったことを紹介しました。

その後、この報告書の監修を担当した教授、宮城県と気仙沼市の防潮堤担当者などに、この報告書の真意と影響を確認しましたので、「続報」として報告します。

この報告書は前回も紹介した通り、来年3月に仙台市で開かれる国連防災会議へ向けたものです。テーマは36項目に分かれており、災害科学国際研究所の村尾修教授は「各項目はそれぞれの先生の責任で執筆している」と説明してくれました。今回取り上げた項目は「2011年巨大津波による海岸堤防の破壊と復興」で、その執筆担当は真野明教授(災害リスク研究部門・災害ポテンシャル研究分野)でした。

しかし、報告書にまとめた提言は、今後の国際的な災害対策に向けて発信しているもので、東日本大震災の対策に見直しを求めているのではないのだそうです。東北を代表する東北大学に災害科学国際研究所が設立されたとき、新聞記者だった私は本当に大きな期待を抱き、東北大が被災地を助けてくれると信じました。研究者として教訓の発信もすごく大切ですが、被災地で継続している問題の解決にもっと積極的に協力してもらえたらありがたいです。気仙沼市には東北大学災害科学研究所のサテライトオフィスがありますので、ぜひ真野教授を迎えた講演会を企画してほしいです。

なお、宮城県と気仙沼市の防潮堤担当者は、今年6月に発表されたこの報告書について詳しくは知らなかったようです。震災教訓として外に向けて発信されたものなので、仕方がないことかもしれません。国の中央防災会議の方針が変更されていないので、影響はないようですが、レベル1津波の防潮堤を越流した津波の排水機能には心配があるようでした。「粘り強い防潮堤」が期待通りの強さを発揮し、レベル2津波が襲来しても100%残った場合、リアス式海岸のような地形では津波のプール状態になってしまうからです。防潮堤に設置する陸閘(出入口ゲート)が引き波で壊れることで、排水機能を持たせることも考えられています。

最近、防潮堤問題について決着したような雰囲気が、気仙沼市内でも市外でも広がっています。おそらく、震災から3年半という時間の流れと、大きな注目を集めた小泉海岸で工事入札が公告されたためでしょう。しかし、海水浴場を残すことを目指している大谷海岸、住民が話し合いを重ねてきた本吉町前浜、不要論もある日門漁港、大島の浦の浜漁港など、まだ結論が出ていない場所があるのです。それぞれ、一筋縄ではいかないところばかりです。さらに、気仙沼市管理の漁港は小さくて注目されてきませんでしたが、再チェックが必要な場所もあると私は考えています。

災害科学国際研究所の報告書を読んで、「粘り強い防潮堤」に対する私の疑問がスッキリしました。報告書が指摘している通り、国はレベル1津波に対して施設整備を求めているのだから、レベル2津波が越流した場合の粘り強い構造は必要ないのではないのでしょうか。必要ないとまで断言できないにしても、地元の自治体や住民に選択肢を委ねることはできないでしょうか。1000年に1度の津波に対しての粘り強さを求めたため、堤防の幅が膨らみ、全面コンクリートになり、地盤改良が必要になり、費用も時間もかかることになりました。

海と生きる気仙沼市民の心意気が、防潮堤のさまざまな問題を浮き彫りにしました。その心意気が伝わってか、県も柔軟な対応を見せ始めました。「一律の基準」を早く脱却し、将来に禍根や不安を残さない対応が求められています。ぜひ、地道な検証と素晴らしい問題提起をした東北大の英知を、ふるさとの復興に役立てていただきたいと思います。ふるさとの未来を守らずに、世界の未来を救うことはできないと思います。

この書き込みが東北大関係者の目に届くことを願います。

2014年10月3日 気仙沼市議会議員 今川悟

※前回の書き込みはこちら

 

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