震災遺構に併設する伝承施設とは【気仙沼向洋高校】

気仙沼市の震災遺構構想が具体化してきました。被災した気仙沼向洋高校の南校舎を保存するとともに、震災の被害や教訓を伝える施設を整備します。その伝承施設の概要がまとまりましたので報告します。

■被災した南校舎を保存

img_1183伝承施設は、岩井崎プロムナードセンター(海辺にあった海の魅力を伝える施設)を復旧する形で整備します。国が費用負担する災害復旧事業ですので、施設規模はプロムナードセンターと同程度の1172平方メートルを予定しています。

被災した校舎は県から譲渡される予定で、できるだけ手を付けずに現状のまま保存し、屋上を含めて内部を公開します。被災施設の内部をそのまま見学できる施設は被災地で初めてだそうです。

併設する伝承施設は、遺構の見学者が震災についてより深く学べるように、語り部の話を聞いたり、津波の映像を見たりできる機能を持たせます。これまでの経緯は過去のブログにありますのでご参照ください。南校舎以外の施設は宮城県が解体します。

■整備検討会議で施設イメージ提示

施設の内容は、地元代表や研究者による検討会議を今年7月に設置して議論してきました。今月25日には本年度最後となる5回目の会議があり、基本設計と展示計画について確認しました。

遺構展示と観光振興の2面性がある施設なので、遺構に関する部分は落ち着いた色調に、イベントスペースがある東側は明るめな外観にしました。

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■防災シアターやイベントスペース

施設内には、二つの防災シアター、研修室、展示室、イベントスペース、多目的ホール、事務室、トイレなどを配置しました。学校の研修を受け入れるため、防災シアターは1クラス40人が一度に入れる広さにしました。トイレは閉館日でも外から利用できます。

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見学者は、防災シアターで津波襲来時の映像を見た後、校舎内に入って屋上まで見学します。伝承施設に戻ってから再び防災シアターで、今度は復興への歩みを記録した映像を見ます。避難所の運営、ボランティア活動などの展示から災害への備えについても学んでもらいます。語り部による伝承活動も検討しています。

■見学者用のエレベーターも整備

被災校舎にはエレベーター棟を設置して見学者に対応します。仮設住宅を移設展示して、震災後の生活を体感してもらいます。防災シアターから校舎内見学まで1時間半から2時間のコースになる想定です。

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■平成30年度の開館目指す

年度内に実施設計を発注し、平成30年度内には遺構、伝承施設ともに開館するスケジュールです。入館料の設定、収支計画、運営方法、市の費用負担、校庭活用、周辺整備などの課題はありますが、市民の理解を得て、震災の教訓を伝える施設として積極的な活用が求められています。

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