気仙沼市に完成した災害公営住宅で、カビの問題が発生しています。結露が多かった仮設住宅でもカビに悩まされてきた住民はとても残念がっています。考えられる原因と気仙沼市の対策をまとめました。
カビ発生は、7月22日に入居が始まった赤岩五駄鱈(ごだんたら)住宅で報告されました。建物は鉄骨造3階建てが2棟あり、21戸のうち2戸は空き室になっています。業者から完成した建物を買い取る「公募買い取り方式」で整備しました。契約価格は約6億4千万円です。
■21戸のうち10戸でカビ確認
市の調査では、1階の全7戸、2階は7戸のうち3戸(うち空き室2戸)で、いずれも和室の畳の表面にカビが発生していました。1階の床下には結露が発生し、一部の住戸では水滴がしたたる状態です。床下に張り付けた断熱材(グラスウール)も切り口付近が濡れていました。
カビ発生の原因は、高温多湿の季節に、完成から入居までの間に24時間換気装置が止まっていたことと市は考えています。床下の結露は、外気と床下の温度差が原因と説明しています。
■24時間換気装置が停止していた
市は対策として、入居者に鍵を引き渡すまで24時間換気を作動させたままにし、入居者にも十分な換気の大切さを説明することにしました。簡単に言うと、入居開始まで今までは電気のブレーカーを落としていたけど、スイッチを入れたままにしておくということです。
床下の結露については、第三者期間による性能評価を取得した設計・構造であることを確認し、「施工不良でもない」と市は判断しています。ミスではないとする一方で、施工した大和ハウス工業から対策の申し入れがあることが報告されました。
■床下には水滴がびっしり
私も8月下旬に床下の結露を見ましたが、一部には水たまりができていました。床下には外気を取り込む自然換気となっていますが、よくよく調べると、その換気口はバルコニーにある排水溝の中ほどにつながっていました。その排水溝には、雨どいが接続されています。流れ落ちた雨水が換気口に入らないにようにカバーを付けてあることで、外気が入りにくくなっているようでした。バルコニーには目隠しの柵もあり、換気口へ風が入り込むことをさらに防いでいます。
念のため、完成した戸建てタイプの災害公営住宅の床下を確認すると、基礎コンクリートはしっかり乾燥していました。換気の構造が赤岩五駄鱈住宅とは異なり、シンプルに外気が入りやすくなっていて、床下でもかすかに空気の流れを感じることができました。ここで、換気能力の違いを知りました。
■換気能力を改善
市や業者も同じように考えていたようで、対策としては下図のように、雨どいをの流れを変更して換気口と排水溝を別にし、換気口を広げてカバーも取り外します。この対策によって、換気能力が向上します。さらに、基礎コンクリートにも断熱材を敷設し、寒暖差による結露発生を抑制します。改良を施す前に、床下の湿気を取り除くために温風を送風する予定です。
なお、ほかの公募買い取り型の災害公営住宅にも、今回の教訓を施工に反映させます。UR都市機構に委託している高層階の災害公営住宅はほとんどが1階に居室を配置しませんが、配置する場合で、も換気の構造が今回問題となったタイプとは異なるそうです。
■高気密住宅のカビ対策は
南郷住宅の集会所でもカビが確認されていますが、こちらも24時間換気装置が停止していたことが原因でした。今後、空き室も含めて24時間換気装置を稼働させることになりますが、その間のは気仙沼市が電力会社と契約して電気代を支払うことになります。長期間の空き室では、別な対策を検討中ですが、維持管理費が膨らむことは避けられそうにありません。高気密・高断熱の住宅は冷暖房費が抑えられるメリットがありますが、湿気も閉じ込めてしまうことにもなり、カビ対策が大変だということがよく分かりました。
先生、おはようございます。
先日、建築家に同行しながら、私は「南三陸入谷桜沢地区」の災害公営住宅を視察しました。
この災害公営住宅でもカビが大量発生していました。
入谷桜沢地区で、建築家から提起された主な原因を紹介しますと。
●換気不足
●コンクリートの換気不足
●北斜面で、水を含んだ土地であること
●寒暖差が激しいと北壁が結露する可能性がある
●メーカーが北日本の施工に慣れていない
などが挙げられました。
この地区の特徴は、集合住宅だけではなく、戸建て住宅でも大量のカビが発生していることでした。そもそも、災害公営住を先人たちが家をあえて作らなかった場所に作ったパターンが多いようで、どうやら地理ファクターも大きいようです。
そこで質問ですが、気仙沼のカビ被害は、集合住宅に限られるのでしょうか。そして、新しいカビ被害の報告がありましたら、教えていただけないでしょうか。
気仙沼のカビ発生は、いまのところ公募買取型の集合型住宅に限定されています。南郷住宅の集会所、長磯浜の戸建てタイプでも確認されていますが、高気密住宅ならではの換気不足が原因で、床下の結露はみられませんでした。
集合住宅タイプは基本的にUR都市機構に委託しており、URの構造では公募買取型のような床下結露にはならないようで、基本的には1階に居住しない構造となっています。