住宅を失った被災者のための災害公営住宅は気仙沼市で2155戸建設されますが、その家賃について詳しく紹介します。家賃は収入によって5年間は月6千円ほどの人もいますし、3年後には16万円になる人もいます。家族構成による変化もあるので注意してください。
■家賃は「政令月収」から算定
災害公営住宅は、住宅を失った被災者なら誰でも入居できます。その家賃は、「政令月収」によって決まります。
政令月収は、世帯の所得合計から算出します。所得合計は、収入から税金などを差し引いた額で、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」になります。公営住宅法の控除によって、所得合計から同居家族1人につき38万円を差し引くことができます。
例えば私の場合、26年の給与所得は452万円でしたが、「給与所得控除後の金額」は307万円でした。妻と子供3人がいますので、38万円×4人分の152万円を引くと155万円になります。それを12カ月で割ると、政令月収は12万9千円になります。
この政令月収で南郷の災害公営住宅(80㎡タイプ)に入居すると、下表の「Ⅲ」に該当するので家賃は月3万8100円になります。
■15万8千円超は「収入超過者」で家賃アップ
災害公営住宅といえども「公営住宅」ですので、入居から3年が経過すると、被災者特例はなくなります。ほかの市営住宅と同じように、低所得者向けの公営住宅として扱われるため、政令月収が15万8千円を超える人は「収入超過者」になるのです。(小学校就学前の子供がいる世帯などには特例があります)
収入超過者になると、家賃は近隣の同規模アパート並み(近傍同種)に引き上げられます。これを「近傍同種家賃」といいます。公営住宅が民業を圧迫しないための措置でもあります。同時に、住宅明け渡しの努力義務が生じますが、市は強制的に退去させない考えです。なお、5年以上入居して政令月収が31万3千円を超える高額所得者は住宅明け渡しの対象になります。
■最大で月16万7千円
それでは、収入超過者の家賃はどの程度になるのでしょうか。近隣の同じようなアパートといっても80㎡のような広いアパートはなく、計算は難しいのですが、南郷住宅の場合、55㎡タイプで月12万2千円、65㎡タイプで月14万8千円、80㎡タイプで16万7千円になります(いずれも最大値)。
収入超過者の家賃は、その収入によって下表のように段階的に引き上げられます。例えば政令月収が18万円の世帯は区分「V」に該当するので、最初の3年間は月4万1300円の家賃ですが、4年目(初年度)は6万2700円になり、段階的に14万8500円まで引き上げられます。
近傍同種家賃は、建物価格によって決まるので、復興期による建設費高騰も影響してしまいます。災害公営住宅の申し込み段階では、65㎡タイプで10万円程度の想定を示していましたが、実際は1.5倍になってしまいました。建設費高騰による割増分を差し引くかどうかは今後の検討課題です。
■家族構成の変化に注意
政令月収の算定には、高校生や大学生、70歳以上の高齢者、障害者は、合計所得額からさらに10万~40万円控除することができます。年間120万円以下の年金は所得に含まれません。
注意してほしいのは、家族構成の変化が家賃に影響することです。例えば高校生の子供がいると、1人当たり38万円の家族控除と16~23歳の特定扶養控除25万円の対象となり、世帯所得から計63万円を差し引くことができます。しかし、高校を卒業して社会人となって一緒に暮らす場合、家族控除はそのままですが、特定扶養控除はなくなり、就職して稼いだ収入は世帯所得に合算されます。
政令月収が高くなると家賃も上がります。子供が地元に就職して実家に残ってくれるのは大変うれしいことなのですが、公営住宅のルールの中では金銭的な負担が増えてしまうのです。
私の場合でも、子供3人がいなければ政令月収は22万4千円になってしまいます。災害公営住宅に入居していたら、入居5年目には16万円の家賃を払ってでも住み続けるか、民間のアパートに移るか、家を建てるか選択しなければなりません。つまり、収入は変わらないのに、同居家族が減ると家賃が高くなってしまうのです。
■19歳以下は566人入居
気仙沼市では、既存の市営住宅を含めて全世帯の約1割が公営住宅暮らしになります。
市の調査では、災害公営住宅に入居予定の約4100人のうち0~9歳は205人、10~19歳は361人でした。収入超過者になるとともに退去を予定している世帯もありますが、子供の成長とともに思いがけず収入超過者になる世帯も出てくる可能性があります。公営住宅の縛りが、若者の市外流出につながらないようにするための工夫が求められます。
■6年目から予想される混乱【家賃低減措置】
政令月収8万円以下の低所得者のための特別家賃提言措置も導入されています。南郷の場合、55㎡タイプの家賃は本来だと最低2万800円なのですが、6400~1万9700円に引き下げます。南郷では入居者の81.4%がこの特別低減措置を受けています。
ただし、この低減措置は6年目から段階的になくなり、11年目で通常家賃になります。月6400円で入居していた世帯の家賃が、11年目には3倍超の2万800円になってしまうのです。貯金を取り崩しながら生活している年金暮らしのお年寄りにとっては、家賃の実質的な「値上げ」は辛く、阪神淡路大震災でも被災自治体の負担で特例期間を5年延長しました。
以前に報告しましたが、東日本大震災の特例措置によって災害公営住宅の収支は「黒字化」し、そこから新たな財源が生まれます(詳細はこちら)。低所得者の家賃低減化、子供の成長に伴う収入超過世帯への激変緩和措置など、前例にとらわれない対策を今から検討していくことが必要です。
一般的には家賃にかける費用は収入の三分の一程度
初年度は良いとしても段階的に上げる家賃を見ると納得出来ない入居者は早く出て行けと思う様な賃料体系になっている。これでは復興住宅が出来たからと言って入居しても新たな入居先を探す羽目になってしまう。収入の大半を住居費に掛けてどう生活しろと言うのだろうか?
復興住宅は被災者を追いだし何れ一般住居に開放使用と思っているのでしょうか?東京都内で駅近くでも60m²の中古集合住居は12万円程度で賃貸出来ます。気仙沼で一般市民がそれ程収入を稼げる仕事があるのだろうか?
家賃を上げていく仕組みは、民間のアパートにも入れる収入の人を、低所得者向けの公営住宅でかこってしまっていいのだろうかという考えが基本にあります。しかし、被災者のために整備した災害公営住宅ですので、杓子定規な考えでいいのか疑問に思われるのは当然だと思います。「入居から3年」としているのは、その時点でで被災者ではなく一般入居者と同じと捉えるということですが、今回の災害の当てはめていいのかも考えなければなりません。
公営住宅の家賃計算の仕組みを理解している人は少ないです。ほとんどの人は追出されたり、家賃が上がる危険性に気付いていないのでは。
派遣切りに合った若者が公営住宅の母の元に帰るなどと報道されていたのを思いだしました。派遣の年収から来る家賃負担の危険を感じます。
気仙沼に住民票あります
仙台の仮の住まいのアパートから
仙台市内に中古マンションを購入
新しく生活始めましたが
突然の病気により自宅療養することになり生活費もままならない状態から貯金を取り崩してます
気仙沼に帰ろうにも部屋の専門病院に通って定期的に検査しなくてはならず
どうしようかと試案にくれてます
一人なので老後も心配国民年金生活だけでやっていけるのかと毎日が不安です
震災さえなければこんな苦労もしなかったはずですが
自然災害ですから仕方ないです なるようにしかならないと思う毎日です
「震災さえなければ」の思い、共感いたします。
行政的な支援が必要な場合は、気軽に相談していただければ担当部署におつなぎいたします。