【2015年6月5日の質問と回答です】
【質問】 『自治体も議会も住民も、自分のまちのことには熱心ですが、ほかと比較して整合性を考えるという視点は足りないのかもしりません』という先生の言葉に返答になるのですが、自治体間が同じテーブルで議論するというのは難しいのでしょうか。あわよくば、自治体の枠を超えて予算も絡めた実務上の議論は出来ないのでしょうか。
私が先生のやり取りの中で、「東日本大震災では国の交付金で、1市町1つずつ遺構を保存できる(1 自治体1つ、初期費用に限定)」という方針に前々から疑問に思っていました。なぜなら、この方針が逆に自治体間の連携を削ぐ形になったのではないか、と感じたからです。たしかに、遺構を残し、津波の教訓を伝えるのは大事なことです。しかし、遺構の運営を考える上で、話題性、悲劇性、希少性、歴史性、象徴性というファクターを考慮したドライな議論はどうしても避けられません。私の率直な思いになりますが、被災地全体で考えると、現状では震災遺構の数が多いと感じます。
やはり、震災の問題に本気で取り組むなら、オール宮城、オール東北という大枠での取り組みは不可欠です。しかし、抱える問題が大きいという自治体の事情を察することはできますが、外の目がないとどうしてもなんとか責任回避という内向きに話が進みます。昨日の南三陸の防災庁舎県有化請願先送りのニュースにも、あまりいい気分がしませんでした。
質問が長くなりましたが、そのような考えの元、先程の質問をさせていただきました。
よろしくお願いします。
【回答】自治体同士が同じテーブルで議論することですが、会議はたくさんあるものの、建設的な議論にはなっていないようです。それは宮城県や復興庁の仕切りの問題かもしれません。
復興事業が全額国費負担になり、復興庁の査定が条件となったとき、やはり復興庁が被災地全体のバランスを考えて震災遺構や予算配分を導くべきだったと思います。ところが、復興庁自体も国交省や財務省から職員を集めて成立しているので、期待していたようなリーダーシップはとられませんでした。
そもそも、被災自治体のエース級の職員たちは地元での仕事量が多すぎて、外へ出て情報収集・議論するような時間は制約されています。復興は仕上げの方が大切です。なおさら復興庁の出番だと思います。では、誰が復興庁の役割を考えるのかというと、あまり議論になっていないことが心配です。
公務員の異動(特に管理職)は問題の根幹です。定期異動によるメリットもたくさんありますが、復興期のように継続性と専門知識が求められる場合、なるべく異動は避けたいところです。
市役所はまだいいほうですが、宮城県はひどいです。これだけ問題となっている防潮堤の担当者が震災後に3回も代わっています。
県から『派遣』されている副市長も2年交代の暗黙ルールがあり、震災後に3人目になりました。
異動したばかりの職員にも、市民は丁寧な説明や対応を求めます。結果、混乱するわけです。
市役所の対策としては、やはりキャリアコースと専門家コースを分けることです。キャリアコースはどんどん異動して能力を高め、専門家コースは落ち着て経験を高めるような選択肢が制度としてあればいいと思います。
年金支給年齢の引き上げにより、再任用の職員が増えています。そうした人たちを指導役にすることもできます。