気仙沼市議会6月定例会の報告第2弾は、一般質問で取り上げたふるさと納税、公費で発生するポイントについてです。
ふるさと納税で集まった寄附金(令和6年度は過去最高の121億円)はその半分が市の収入になります。翌年度はどうなるか分からないため、ふるさと応援基金に積み立てて、未来への投資を基本とした長期的な施策に活用しています。
【10年60億円規模の産業パッケージを発表】
49億円を集めた令和4年度には、10年間で50億円規模の「人口減少対策」の政策パッケージを発表し、。94億円を集めた令和5年度には10年間で18億円規模の「教育」パッケージをスタートさせました。そして、令和6年度に121億円を集めたことで、新たに「産業」のパッケージが発表されました。
「産業」の政策パッケージは10年間で60億円規模です。人口減少社会において、自ら稼ぐ力を強化するために「産業立市」の理念を明確に打ち出し、観光を成長産業にするために11.5億円、稼げる経済を再創出するために27億円、人からはじまる産業まちづくりに5億円、多様な産業創出と積極誘致に6.5億円を投じます。詳しくは記者発表資料をご覧ください。
一般質問では、ふるさと納税制度のルール順守について確認したほか、次の政策パッケージは「高齢化社会への対応」で検討が始まっていることを引き出しました。
なお、公費で発生するポイントの質疑では、柔軟な対応を求めました。
詳細は下記のとおりです(自ら書き起こした内容で、正式な議事録ではないことをご理解ください)
2025.6.25 今川悟一般質問
1 ふるさと納税の活用とルール順守について
本市はふるさと納税による寄附金を未来への投資に活用し、さまざまな施策を展開していますが、もっと目に見える使い方も必要だと思います。一方で、他自治体ではルール違反によって指定取り消しに至ってしまう事例もあり、好調な時ほど管理体制にも力を入れなければなりません。そこで、次の3点について質問します。
質問① ふるさと納税寄附金は「人口減少対策」「教育」に加えて、「産業」のパッケージへ充当する方針ですが、今後もパッケージを基本とする考えなのでしょうか。また、市民からアイデアを募って活用する枠の創設、そして令和6年6月の一般質問でも取り上げた高齢化社会へ対応するための活用など、子どもや産業だけではない分野、もっと目に見える形での活用について市の考えをあらためて伺います。
菅原市長 ふるさと納税の使途における政策パッケージについては、課題に対して包括的にアプローチし、その効果の最大化が期待されるものについて実施するものであります。今後も寄附額の推移を見ながらの検討になりますが、政策パッケージという枠以外でも、ふるさと納税の活用として望ましいものについては、これまでと同様に活用を検討してまいります。
市民アイデアによる活用については、議員であれ市民であれ、その意見は様々な形で市当局に届けることが可能であり、あらためて募る形を作ることは、現在のところ考えておりません。なお、けせんぬまWell-beingプランには市民意見が反映され、ふるさと応援基金も活用されております。
高齢化社会へ対応するための活用については、本年度の寄附金の推移によりますが、次なる政策パッケージの最有力候補として、既に担当課レベルで活用メニューの検討を行っております。
質問② ふるさとや応援したい地域に寄附する制度の意義からすると、寄附を活用した施策の成果を積極的に示し、感謝の気持ちを伝えることも大切です。現在は市ホームページで活用実績を発信していますが、もっと感謝の気持ちを表す内容にしたり、寄附を活用した施設に感謝の気持ちを表示したりする考えはありませんか。返礼品を提供する事業所への恩恵をはじめとする地域経済効果について情報発信することも含めて、市の考えを伺います。
菅原市長 御寄附いただいた方々に対する謝意の表し方については、市ホームページに活用実績を掲載しているほか、全ての寄附者に対して感謝の意を付した受領証明書を発行しております。また、来月には、ふるさと納税専門誌へ本市のふるさと納税の使途について掲載し、御寄附いただいた方々への感謝の気持ちと共に、Well-beingプランや各種政策パッケージに活用させていただいていることについて、広く全国へ向けて発信する予定としております。
地域経済効果については、市が地元企業から返礼品として商品を購入しているほか、寄附者からの直接発注に繋がるケースも期待され、その包装資材や配送に関わる業種等においても、波及効果が生まれるといった側面があり、市の経済政策としては規模もズバ抜けて大きく、効果も直接的であると考えております。今後とも、本制度が地元産業の発展にも大きく寄与するものであるという発信を心掛けていきたいと考えております。
質問③ 寄附額の増加に期待が高まる中、ルール違反によって指定取り消しになり、大きな影響を受ける自治体も出現しています。本市でも十分に気を付けているとのことですが、返礼品の品質や配送遅延などに対する苦情は発生していますか。また、物価高騰等による返礼品事業者への影響を伺います。なお、産地判別のために専門機関を活用した抜き打ち検査を実施している自治体もありますが、本市でのチェック・管理体制の現状と課題、独自ルールの設定状況について伺います。
菅原市長 ふるさと納税返礼品における苦情についてでありますが、繁忙期において、返礼品の到着をお待ちいただいていることによる苦情が寄せられる事案がございましたが、事前に謝罪のご連絡を差し上げるなどして御理解いただいているところであります。
物価高騰における影響については、市が事業者から提供いただく商品の価格が高騰し、それが寄附額の引上げに繋がるといったケースがありますが、今年度の寄附額実績においては、現時点において、昨年度同期比を若干上回っていることから、ふるさと納税に関する事業者への影響は限定的なものと考えております。
返礼品の管理体制等については、事業者からの申請に基づき、市及び委託事業者において詳細内容をチェックしたのち、総務省の審査を経て各ポータルサイトに掲載しているものであり、疑義が生じた場合は、地場産品基準や食品表示法の遵守状況等を確認するため、関連資料の提出を求め、必要があると認めるときは、実地調査を実施できることとしております。なお、昨年度末には、全事業者に対し、産地偽装に関する注意喚起のための通知を発出しているところであります。
【再質問】
今川 政策パッケージ以外への活用についてですが、使い方のルールを指示していますか。
三浦・気仙沼創生戦略室長 市長の答弁通り、これまでもパッケージ以外にも活用していますし、各事業の性質等を見極めながら使っていくものと承知しています。
臼倉・震災復興企画課長 紙に起こした明確なルールはありません。議会で今川さん中心に質問頂いた際にお答えした通り、未来への投資へ基本的に使っていくというルールがあります。未来の投資といえば、人、人材の投資、産業、それを可能とするイノベーションへの投資は軸としてあります。それが今のところの一定のルールであり、あとは事業の性質に応じて判断していく運用になっています。
菅原市長 紙でルール化することはなかなか難しいと思っていますし、それを超える発想のものにつけていきたいと思っています。
今川 当初予算の審議の時の説明資料として、パッケージ以外に使っている事業を示してもらっています。例えば子ども医療費の助成や誕生祝い金、魚類養殖推進事業など、パッケージに関連する使い方をしていると感じます。あと、経常的経費を対象外にすることが統一したルールでした。寄附が順調に推移した場合、次は高齢化への対応を最優先にするよう指示しているとのことですが、具体的な指示内容を伺います。
菅原市長 とりあえず出してもらうと、非常に経常的なものが1回目は多かったです。そうではなくて、もう少し工夫があって、高齢者の皆さんにも希望が持てるようなものが前面に出るように、全てではなくてもいいと思っていますが、イメージ的にアクティブシニアをつくっていくような、イメージだと思います。ただそれだけではいろんな状態にある高齢者の方がいますので、そこに限るわけではありませんが、そういう前向きなメッセージがつくられる、というのは、今後の全体を通しての人口減少対策を考えれば、気仙沼でシニア時代を過ごすことが一つの理想的なということで、移住者等も含めて呼び込めるような、または2か所居住だったり登録制度だったりというときに気仙沼が目にとまるような明るいイメージのものを集めたいと思っています。
今川 来年の発表になると思いますので、今後、私からもこういったものに使ってほしいというものを提案したいです。市長がおっしゃる通り、アクティブシニアに目を向けてほしいです。先日説明があった立地適正計画(案)では、若者があふれる中心市街地みたいな表現がありましたが、これからはそれにとどまらず、高齢者の方が自由に使えるお金があったり、趣味が多様だったりということもありますので、そういうイメージもなければいけないと同僚議員とも話したところです。ぜひ、いろいろ提案させてください。
使い方も含めた情報発信の方法ですが、(使い方について)市のホームページが前のままの状態になっています。ふるさと納税は政策パッケージを中心に投資的なものに使っていくと表明しているのに、いまだに「生活基盤の整備」が使い方の選択肢に入っています。だから令和5年度の使い道の実績を見ますと、やはり「生活基盤」の使用実績がありませんでした。そこを使い道として選択してくれた寄附者の希望が叶わなかったことになるので、政策に合わせて選択肢を修正した方がいいと思いました。
三浦・気仙沼創生戦略室長 使い道の選択肢については、使い道を特定しないという選択肢もありますが、基本的には総合計画の基本施策をすべて網羅する形で広く活用できるように5項目設定(産業の振興と雇用の創出、保健・福祉・医療の充実、教育の充実、まちづくり一般、生活基盤の整備)しています。現在のところ選択してもらった使い道に沿った形で活用しています。いま指摘いただいたように使い道が限定されると目的に合わなくなったような場合は見直しについても考えたいと思います。
今川 チェックしていただきたいと思います。やはり活用実績も5つの選択肢に合わせての報告になっていますので、いまの使い方に即してないし、もっとPRするためにも実態に合わせた方がいいと思います。そういうホームページの在り方をはじめ、使い方の選択肢などについて、庁内で意見交換するような会議体とか組織体制はありますか。
菅原市長 そのための会議体は作っていませんが、まず考えなくてはいけないのは、これだけふるさと納税の市場が大きくなって、毎年大きな金額を受け取れる自治体が増えている中、本市はまだそのレベルではありませんが、一般会計と比べてあまり変わらないような自治体が北海道等に出てきています。「どう使っているのですか」ということも、実はふると納税の存続には気を付けていかなくてはならないポイントのひとつだと思っています。その対象に本市もなってきているレベルだと思いますので、このパッケージを発表していることは他の自治体に比べれば、非常に見える化されている使い道だと思います。今回、専門誌にも出しますが、本市のホームページもしっかりと合わせてアピールするような形でないと、「ただお金を貯めている」とか、「経常経費に使われているのでは」とか、「それが無くなったらその町がもたないのではないか」とか、そういうようなことに結びつく発想がされないように、本市もそうですが、全国でも気を付ける必要があるだろうなと、ある意味、その一つのモデルに近い形をとれればいいなと思っています。
今川 ちょうど昨日、総務省の新しい通達が出て、今日の新聞に出ていましたけど、返礼品のアピールからそれぞれの町のアピールに本来はシフトしなくちゃいけないと思いました。専門誌にも返礼品より使い方をアピールするということだと思いますので、使い方とかで気仙沼市の取り組みを宣伝して、それを応援する人たちが返礼品を選ぶというのが本来の制度であり、まじめにやっていれば、制度から逸脱することなく、これからも安定した使い方ができると思いました。それで感謝の気持ちを施設に示すというのは、具体的にいうと、震災伝承館のようにクラウドファンディングで集めた使い方で維持されたり、事業者支援で建設された施設に財源に関することをプレートで表示してはどうですかということです。
臼倉・震災復興企画課長 答弁には盛り込めなかったのですが、寄附者については基本的に民間事業者のポータルサイトを見ることが多いです。一番メジャーなサイトである楽天などで特集のページを設けています。東北一位になっていますので、その感謝を表す特集ページです。ありがとう企画というところのページを設けていまして、そこで震災伝承館に活用していますという話だったり、人口減少対策を軸とした子育て支援に使っていますという内容です。こういったページも通しながら、寄附者の皆様には感謝の気持ちをかなりお見せできていると考えています。
今川 寄附者も大事ですが、それを使っている気仙沼市民として感謝の気持ちをちゃんと共有するということで、施設に市民にも分かる表示をして、来てくれた方のためにも表示してほしいということですので、これから考えていただければと思います。そういった気持ちがあふれ出てくることが大事なのかなと思います。
ルールの順守についてですが、指定取り消しになった市町の事例を調べて、再発防止の報告書も読みましたが、基本的には問題が起きると国が新しいルールを加えているので、市独自のルール作りがなくても大丈夫だと思います。しかし、取り消しになる町が毎年のように出ていますので、本市の管理体制について確認します。他自治体の例を見ると、コンプライアンス順守のための管理監督者が不在だったとか、担当者に過度なプレッシャーがかかっていたとか、あるいは過度の権限が集中していたとかの課題があって、対策として個別の外部監査制度を導入するなどの提案がありますが、本市として今後新しく取り組むことはあるのですか。
三浦・気仙沼創生戦略室長 ご指摘の通り、国のルールに則った形で運用していますので、特に市のルールというのはありませんが、市と委託先である中間支援事業者、返礼品事業者でコミュニケーションをとりながら連携を図ることが最も大事だと思っています。それが現在できていると思っていますので、今後ともコミュニケーションを密にしながら事業を推進したいと思います。
今川 委託先の結デザインは全国の多くの自治体を担当し、ノウハウも経験も十分だということで、しっかり連携していけば大丈夫だとは思いますが、何しろ影響が大きいものですから、十分に気を付けてという意味での質問でしたので、そこを留意して取り組んでください。
2 公費で発生するポイントについて
個人所有のポイントカードやクレジットカードを公務で使用した際のポイントの不適切な処理が全国的な問題となり、本市でも対応が始まっているようです。私的に過剰な利益を得ないためのルール作りは必要ですが、行き過ぎた対応はキャッシュレス時代に逆行し、不便を生じさせることになりますので、次の2点について質問します。
質問① 物品購入の購入や出張時におけるポイントの発生と取得に対し、本市の現状とルールの内容、その課題を伺います。
菅原市長 公費で発生するポイントの取扱いについてお答えいたします。物品の購入や出張時におけるポイントの発生と取得についてでありますが、本市では、公費による物品購入等においては請求書払いを原則としており、ポイント付与が発生することは想定しておりませんが、前渡し金や立替払いで物品購入をせざるを得ないことが生じた場合でも、ポイントサービス事業者が提供するポイント付与を受けることは認めておりません。
一方、出張時においては多くの場合、職員が一時的に旅費を負担したうえで事後精算するかたちとしており、現在、多くの交通事業者や宿泊事業者において、利便性や確実性を求め、デジタル化やキャッシュレス化が進んでいることから、職員個人の交通系ICカード、クレジットカード等の使用を認めております。クレジットカード決済により、自動的にポイントが付与されるケースがあることも承知しております。
基本的には、公務出張に関する経費の支払は公務員個人の利益につながってはいけないと考えており、本年4月1日からは、様々な割引サービスを受けられた場合でも実費精算とすることにしております。一方でポイント分を精算するとした場合、カードの種類やランクによる還元率の違い、自己負担している年会費の取扱いなど、事務負担と取扱い上の課題もあります。この件に関し、現時点では、国や県でも明確な取り決めはなく、今後、県が方針策定を目指すと聞いておりますことから、本市といたしましても、国や県の検討の推移を考慮して対応してまいります。
質問② 高齢介護課の交流サロン事業は、助成金を使用する際、現金での支払いとともにポイントカードを使用しないよう通知しました。市の補助金や助成金を受けている団体について、ポイントの発生と取得に関するルールの内容と課題を伺います。
菅原市長 補助金や助成金を受けている団体について、ポイントの発生と取得に関するルールや課題についてでありますが、本市では現在のところ、補助対象経費の支払いにポイントカードやクレジットカードなどを使ってポイントを取得した場合における統一的な取扱いは定めておりません。補助金等を受けている団体活動における経費の支払いで個人がポイントを取得すべきではないとの考えから、交流サロン事業においては現金での支払いでポイントを付けないルールとしたところであります。
一方、カードが普及している現状から利便性に反することや、ポイントは市ではなくカード会社の負担で付与されることなど、様々検討する必要があることが分かってきたことから、他自治体の動向を注視してまいります。県・国も同様です。
【再質問】
今川 1点目の市職員の部分は分かりました。基本的には立て替え払いはしないで発生した場合は過剰なポイントをつけないようにするということですが、あまり厳しいルールを課さないでほしいです。どんどん便利になってきているのに現金払いを原則して、請求書を求めたりすることは、社会に逆行してしまいますので、小さなポイントに目くじらを立てずに、全体の効率を重視するとか、倫理観を信じることで進めてほしいと思いで質問しましたので、どんどん厳しくしろという意図ではありません。社会の便利さとか手間とか天秤にかけてしっかり考えていただきたいです。
一方で、そういう意味では民間への補助の方はここまで言わなくてもいいのではないかというのが正直な感想です。補助を受けた団体側で考えるべきと思いますので、あまり厳しくすると業務が煩雑になったり、不便になるようなことはよくないと思いました。これを言い出すと、銀行の利息も含めてだめだという話になります。気持ちは分かりますが、こうしなさいという通知ではなく、注意喚起で今後はとどめていただきたいと思います。
小松財政課長 補助金の補助事業に対してポイントがつくことにつきましては、やはり公金の入った補助事業ですので、確かに支払いにカードが普及している中で利便性がありますが、一方で個人のポイントにしてしまうということはいかがものかということで、このような表示にさせていただきました。ただこのポイントを考えますと、様々な要因があります。補助対象外の部分での支払いはどうするのか、あるいは団体としてポイントカードを持って貯めていった場合はどうだとか、繰り越した場合どうかとか、考えれば考えるほど難しい問題になっていることが見えてきましたので、この辺については世の中の動向を見ながら、ゆっくり考えていきたいと思っています。
今川 重ねて柔軟な対応をお願いします。