気仙沼市の大学進学率が、震災前と比べて飛躍的に伸びています。特に女子の進学率は震災直後に急低下したものの、落ち着きを取り戻すにつれて上昇を続け、26年度は男子を上回る結果となりました。
宮城県が毎年まとめている学校基本調査によると、26年度(25年度卒)の高校生は計709人のうち、268人が大学や短大へ進学しました。大学進学率は37.8%。前年度より2㌽低下したものの、22年度の30.9%に比べると急伸しています。
大学進学率の県平均は22年度47.7%、26年度48.3%と震災前後で大きな変化がないことを見ると、被災地である気仙沼の伸び率が際立ちます。震災後の学習環境が悪い中、高校生たちが勉強を頑張ったことはもちろんですが、大学生ボランティアによる学習支援、大学が用意した被災地枠や奨学金も進学率が伸びた要因と考えられます。地域の進学拠点校である気仙沼高校の対応も忘れてはなりません。
個人的には、大学生という存在が身近になったことも影響していると思います。気仙沼近郊には大学がないため、地元の子供たちは高校卒業とともに市外へ出て行ってしまいます。しかも、帰ってくるのは盆と正月ぐらいで、特に地域活動に関わるわけではありませんでした。ところが、震災後は市内出身者もそうでない学生もボランティアとして地域に関わってくれたことで、地元の子供たちが大学生に憧れるようになったのではないでしょうか。
~影響受けやすい女子~
統計をさらに分析すると、女子の大学進学率が変化していることが分かります。22年度は34.7%と男子より8㌽も高かったのですが、震災の年に卒業した23年度実績は26.8%に急落しました。その後、24年度に34.1%、25年度に34.7%、26年度に37.9%と伸びています。
震災が発生した23年の国立大学の入試は、3月11日の翌日以降に予定されていた後期試験が中止となり、センター試験の結果で合否を判定しました。しかし、被災地では家族の暮らしすらままならず、進学する子供たちのアパートを探したり、学費を確保したりすることは困難な状況だったのです。そんな混乱期ゆえに、女子を遠くに出す心配も膨らんだのではないでしょうか。
26年度大学進学率の全国平均は53.8%。半分以上が大学へ行く時代です。だから、震災から3年が過ぎた26年度の気仙沼市で、大学へ進む子供たちが増えていることは喜びたいと思います。大学進学が増えると、人口減少が進むジレンマはありますが、大学を出た後に就職できる職場を用意するとともに、若者の起業を応援する仕組みがあれば、気仙沼の未来は明るくなります。
~中学生の不登校率は宮城県が全国ワースト1位~
ちなみに、学校基本調査からは大学進学率以外にも注目しなければならないデータがあります。
一つは、宮城県の中学生の不登校率が、大分県と並んで全国ワースト1位ということです。県内の不登校率は3.17%で、32人に1人の計算です。つまり、1学級に1人が不登校という実態にあります。全国平均は2.69%でした。震災前より高いので私には原因が思いつきません。東北全体が高いわけでもありません。
もう一つ注目したいのは、特別支援学校に在籍する子供の増加です。
県内でも少子化が進み、小・中学校、高校とも児童・生徒が減り、学校を統廃合しなければならない事態となっています。ところが、特別支援学校の在籍数は増え続けていて、26年度は5年前より20%増の2558人でした。これは障害のある子供が増えているというより、発達障害という考え方が定着したからと考えられます。特別支援学校には、各小・中学校の特別支援学級に対する支援拠点という役割もあり、気仙沼でも機能や施設の充実が求められています。