公共施設更新で財政破綻の危機?【気仙沼市】

気仙沼市議会の全員協議会で27日、公共施設等総合管理計画案が説明されました。心公共施設の老朽化によって、改修や建て替えなどの更新費用として年間平均70億円もかかるという試算結果が示されました。何もしなければ、気仙沼市は財政破綻してしまいます。人口減少を受け、公共施設を「つくる時代」から「更新と再配置の時代」へと移行しなければなりません。

【新設から老朽化対策へ】

高度成長期に建設された建物や道路などの老朽化が問題となる中、総務省が指針を示し、各自治体へ公共施設の総合管理計画の策定を促していました。公共施設をつくるだけではなく、定期的な改修、将来の建て替えなどにかかる費用もちゃんと考えましょうということです。

この計画を策定することで、施設の長寿命化や集約化、除去費用などに地方債充当などの財政措置が受けられます。もしかしたら、老朽化した施設の対策をしないと、新規事業の補助金が受けられなくなることになるかもしれません。

【更新費用だけで年平均71億円】

気仙沼市も高度成長期に建設した施設が多く、ハコモノ456施設の4割に当たる194施設が耐用年数を超えています。

市の試算は、建設から30年後に大規模改修工事を行い、60年後に建て替える設定で2056年までの40年間の更新費用を推計しました。その結果、公営住宅を除いたハコモノ396施設だけで40年間の合計が1560億円(年平均39億円)になりました。

このほか、40年間の更新費用は道路で449億円、橋で33億円、上水道で442億円、下水道で184億円、ガスで8億円がかかります。ハコモノとの合計額は2826億円(年平均71億円)です。震災前の普通建設事業費と建設改良費は年間47億円ほどでしたから、現在の公共施設を維持するだけでも困難なことが分かります。

 

【40年後の人口は三分の一】

この試算は、建設から60年が過ぎた施設をすべて建て替え、道路は15年で路面を張り替えるという国のルールに基づいた設定ですので、現実的ではありません。ただし、施設の老朽化が進み、改修や建て替えの時期が迫っていることは現実の問題です。

しかも、これからの人口減少が進むと、市民1人当たりの負担はますます増えていきます。国の研究所の推計では、現在6万6000人の人口は、20年後に4万人台、40年後には2万人台となるのです。

この状況を踏まえて、計画では「思い切った対策が必要」「施設の統合・廃止を進めて更新費用を減少させる費用がある」と指摘しています。

下の図は、各市町村の人口に対する公共施設の延床面積です。気仙沼市は公営住宅の分を除いても高めの位置にあります。

 

【25%削減を意識】

市の基本的な考えも明記しました。①個別計画の策定②施設の長寿命化③時代に即した更新や新施設の整備④施設保有数と配置の適正化―です。

今回の試算は国のルールに合わせた概算であるため、ジャンル別に個別計画を策定し、施設の更新や再編の方針をまとめます。建て替えをできるだけ先送りするための施設の長寿命化に取り組むのです。

「施設の保有数と配置の適正化」では、現状の予算に対して更新費用が25%不足していることから、「全延床面積の少なくとも25%削減が必要です。今後の更新に当たっては、この数字を意識しながら、施設の保有数や規模を検討します」との方針も示されました。民間譲渡、近隣市町村の施設の活用も検討します。

この計画を推進するため、市役所内に(仮称)施設マネジメント検討委員会を設置します。

【具体的な対応はこれから】

公共施設の総合管理計画は、全国の市町村で策定しています。厳しい将来予測をもとに、新しい公共施設をつくらない宣言をしたり、具体的な統廃合計画を示したりした市町村もありました。

気仙沼市の場合は、復興の最中ということもあり、市民に必要以上の不安を与えないように配慮しています。これから広報などで周知していくことになりますが、復興事業以外の公共施設や道路整備のハードルが高くなることが想定されます。まずは2015年度までに策定する市道整備計画で、市の考え方がはっきりすると思います。

幸いなことに、公営住宅は家賃や国からのお金で解体費まで心配しなくてよくなりましたが、将来的な財政見通しを含めて、市民に分かりやすく発信していく能力が行政に求められています。先送りせず、問題にしっかり向き合って納得できる答えを出したいです。

 

 

 

 

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