「頑張りすぎないで」惨事ストレスケア

阪神・淡路大震災で問題になった「惨事ストレス」は、被災者だけでなく、消防士や警察官、ボランティアなど救援者の心のケアが大切です。震災4年を前に、緑風出版の「惨事ストレス 救援者の〝心のケア〟」(『惨事ストレス』編集委員会編著)を読んで分かったことを紹介します。

・体調不良は災害という「異常な事態への正常な反応」です。そのことをお互いに理解し合うことで、惨事ストレスを小さくすることができます。

・震災当時に保育園児・幼稚園児だった子どものトラブルや不登校が顕著であるという報告があります。

・子どもたちをケアするためには、まずは保護者や教職員のケアが必要です。

・復興期に一番大切なのは自殺対策。立ち直りに個人差が出てくると、自分を責めながら燃え尽きが広がっていくことがあります。対策は見守りと発信です。

・自殺をタブー視せず、日ごろからオープンに話すことが予防になります。懐かしい人に会いに行く、見られたくないものを処分するなどの「別れの準備行動」が見られたら、切迫しているサインの可能性があります。

・被災者の心理は、震災直後の「茫然自失期」、互いに助け合って愛情にあふれる「ハネムーン期」、そして「幻滅期」の段階を経ます。災害後のストレスを放置すると、「燃え尽き症候群」が起きてしまいます。

・燃え尽きは、疲労感が蓄積して、無気力、うつ状態のために職務上の能率低下が起きてしまうことをいいます。諦め、自責感から自殺に至ることがあります。

・生真面目すぎるのは心の健康にとってマイナスです。頑張りすぎないで休んでほしいです。

・ストレス対策の要点は、「休息」、信頼できる人に弱音を吐き出す「表出促進」、同じ境遇にある人が励まし合う「体験共有」の三つです。孤立無援も危険です。孤立しがちな人には、「あなたのことを気にかけているよ」というメッセージを出し続けて下さい。

・軍隊では、休息をとらせ、熱いシャワーを浴びさせ、一息入れてから温かい食事をとらせ、そして眠らせることを最優先します。

・トラウマ治療で大切なのは、記憶を掘り起こすことではありません。「いま、ここで」の感情を表出させていくことが先決です。

・救援活動から戻った人たちに対して、送り出した職場や団体はまず感謝の意を表し、最善を尽くしたという言葉をかけて労をねぎらって迎え入れましょう。ただし、派手な歓迎は心の整理をできなくするので気を付けなければなりません。

・わけのわからない状況で、納得のできない任務を遂行していると、成果も達成感も享受できません。困難に遭遇した時ほど、意見をぶつけ合って一緒に突破口を探し出す努力が必要です。そのことを通して信頼感が作り出されます。

・自治体職員は「逃げない」「逃げられない」。自治体と管理職は自治体職員も被災者であることを認識し、他の被災者同様の対応をする必要があります。

・長期戦に備えて、体力気力を養うことが大切です。それが被災地の再生のためになります。

・人は話すことによって気持ちが落ち着き、心が平安になります。考えがまとまり、整理がつきます。そうすると生きる力と希望が湧いてきます。

・力を抜くときに抜かないと、力を入れるときにいれられない。

・「できないことはできない」と自分の心に言い聞かせることも大事です。完璧じゃなくていい。

・避け続けることが、結果としてつらい記憶をコントロールできない要因の一つにもなるものです。「回避」を尊重しつつ、それぞれのペースで少しずつ記憶に向き合うチャレンジをどのように進めていくかが、トラウマケアのポイントになります。

・心の災害も忘れたころにやってきます。

 

 

 

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