気仙沼市役所はどこへ?【有識者会議で議論中です】

老朽化した気仙沼市役所の新築が検討されていますが、「現在地で建て替えるのか」「病院跡地へ移転するのか」などなど、市民の間にもさまざまな憶測が飛び交っています。そこで今回は、昨年11月に設置された新庁舎建設基本構想策定有識者会議の議論を整理して、現在の検討状況を報告します。

【合併特例債を主財源に60億円規模。平成37年度の完成を目指す】

まずは基本情報です。市役所の本庁舎は昭和35年の建設で築58年。平成15年に実施した耐震診断では「地震時に倒壊の危険性がある」との結果が出ていましたが、市内の学校や公共施設の多くが老朽化している中で、新市役所の整備はずっと検討課題のままでした。

東日本大震災後、災害時の拠点となる市役所が被災しては申し訳ないと、新庁舎建設を目指して平成27年から毎年1億円を積み立て始めました。そして被災地特例として、市町合併の特例債の利用期限が10年間延長されたことで、新庁舎整備がようやく動き出したのです(詳しくは平成27年12月のブログ)。完成目標は新市建設計画の最終年度である平成37年度です。

合併特例債によって事業費の95%を借金で用意でき、その返済額(元利償還金)の70%は国からの交付金によって賄われます。これまでの市の説明によると、合併特例債の残りの枠は約60億円です。庁舎建設基金の残高は平成29年度末で約4億5千万円で、本年度も1億円を積み増す予定です。合併特例債以外に用意しなければならない予算は8億円程度(市の負担分や引越費用など)で、今後も積立を続けていきます。

このように合併特例債に依存した計画のため、「平成37年度までの完成」「事業規模60億円程度」という大枠は決められています。この期限や費用を考えると、民有地の買収、大規模な造成は難しく、建設用地の条件が限られてしまうのです。合併特例債の期限はさらに5年延びて平成42年度になりましたが、気仙沼市の新市建設計画の期間は37年度のままとなっており、計画の変更が必要となります。

※新庁舎建設の流れは下表の通りです。

【有識者会議が基本構想を提言へ】

基本情報をおさらいしたところで、有識者会議について説明します。

この会議は気仙沼、本吉、唐桑の住民代表、商工会議所会頭、大学教授ら10人で構成。新庁舎の基本理念、機能・性能、建設位置、事業スケジュールなどを基本構想としてまとめ、市に提言書を提出します。

昨年11月に初会合が開かれましたが、市が示した事務局案に異議が続出し、今月3日に開かれた2回目の会議でようやく方向性が見えてきました。今のところ、あと3回の会議で最終案をまとめ、今年9月には基本構想が固まる予定ですが、市民の関心が高い建設候補地に議論が引っ張られており、スムーズに進むかどうかは不透明です。

事務局が示した基本方針案では、①市民の利便性の向上や協働空間を提供する庁舎②誰にでもやさしいユニバーサルデザインの庁舎③自然エネルギーの導入等による環境にやさしい庁舎④機能的で効率的な行政機能等を実現する庁舎⑤市民の安全・安心を支える防災機能が充実した庁舎―を設定しました。

※基本方針案については下表の通りですが、次の有識者会議で内容は議論されることになっています。

【候補地抽出の条件整理からスタート】

気仙沼市では、建設候補地の選定方法を①前提条件の整理②複数の候補地の抽出③評価④最終候補地の選定―とすることにしました。特定の候補地を設定せず、最良の場所を探し出す手法です。

事務局案では、建設候補地を絞り込むフィルターを二つに分けました。最初の条件は「人口重心5㎞圏内」「公有地」「敷地面積1ha以上」「津波の災害危険区域外」「用途地域内」、次に「幹線道路沿い」「平坦な土地」という条件を加えました。

「人口重心」という言葉は初めて聞きましたが、人口分布から割り出した中心点です。平成27年の国勢調査を基づいた人口重心は松岩中学校と松岩小学校の中間付近の松崎丸森地区(詳しくは最後に添付した資料参照)でした。用途地域内としたのは、できるだけ社会インフラが整った市街地にしたいという思いからです。

しかし、人口重心が用途地域の外にあり、その人口重心を決めた平成27年10月の国勢調査時点では約3000世帯が仮設住宅(みなしを含む)で暮らしているなど、あまりこだわると危険です。ただし、人口が市の南側に移っていることが裏付けられています。このことは平成27年5月のブログで説明した通り、唐桑と本吉の人口減少率の差となって表面化しています。

【事務局は市立病院跡地など4カ所の建設可能地を提案】

この条件から事務局が提案した建設可能地は、①現在地②旧市立病院跡地③反松公園④気仙沼公園―でした。旧気仙沼西高校は用途地域外のため1次抽出の段階で除外されました。可能地となった反松公園と気仙沼公園も都市公園の代替が必要となるため、現実的に難しいと思われます。

条南中学校は統廃合計画の対象となっていますが、まだ地域の合意を得ていないため、検討対象から外しました。

このまま進むと、4月26日に予定されている次の有識者会議で評価基準を設定して4カ所の候補地について評価したうえで、5月には中間案として市民に示して意見交換会などを開催することになります。しかし、2回目の有識者会議では市民への説明方法について再検討することとしたほか、肝心の議論の時間が不足して候補地抽出方法についても結論が出ていないためめ、事務局案通りに進むかどうかはまだ分かりません。

特に復興は沿岸を中心に進められており、市役所に近い内湾地区では飲食店が再建し、銀行も戻ってくる予定です。復興計画には市役所の移転は盛り込まれていないため、この段階となっての移転を心配する声が高まっています。

※下表は事務局案で示された候補地選定の流れ、そして建設可能地の一覧です。右側にある「会議回数」は有識者会議のことです。

【市街地活性化も評価基準に】

有識者会議の委員からは、建設地を巡って地域間の対立が生まれることを危惧する意見が相次ぎました。最終候補地を絞り込んでから市民の意見を聞くのか、それとも複数の候補地と客観的評価を並べたままの状態で市民に示して意見を聞くのか、難しい判断が求められます。

そこで重要なのが、候補地の評価基準です。事務局案では市民の利便性や防災拠点としての安全性だけでなく、市街地活性化なども評価項目に加えられています。何よりも期限と事業費に限界がある中、事業費や工期の評価が注目されます。有力候補である現在地で建て替える場合、市立病院跡地を利用する場合でも、それぞれ複数の事業手法で評価しなければ、市民の理解は得られないでしょう。

旧市立病院跡地を利用する場合の事業費は、病院跡地活用調査の中で試算済みで、老朽化した施設は解体して建物の一部を再利用すると60億円以内に収まることが分かっています。詳しくは昨年7月のブログをご覧ください。病院跡地に建設する場合は病院解体費まで合併特例債で手当てできるため、現在地での建て替えを選択する場合は、病院解体費をどうするかについても答えを出さなければなりません。

最後になりますが、一般市民の感情からすれば、市役所に行く機会は少なく、過剰な施設になることも避けなければなりません。また、建設候補地への関心が集まっていますが、市役所のこれからの役割、適正規模についてもしっかり議論していきたいです。高校を再利用した富山県氷見市のように、旧市立病院の活用についても前向きに考えていく視点も必要です。まずは今後も情報の整理と提供に努めていきます。

※下表は事務局案で示された建設候補地の評価の考え方、その下は人口重心の資料です。

 

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