30年で人口半減、労働人口は1/3【気仙沼市の将来推計人口を分析】

気仙沼市の人口は30年後に半分になるという推計が発表されました。国の研究所が国勢調査をもとに5年ごとに発表している推計の結果です。5年前の推計よりも激減する予想のため、衝撃的な結果に見えますが、これが実態であることを解説します。やはり大きな課題は若年層の市外流出です。

国立社会保障・人口問題研究所が公表したのは「日本の地域別将来推計人口」。2015年の国勢調査と過去のデータを照らし合わせて、市町村ごとに今後30年間の人口推計をまとめました。

【若者の流出が課題】

推計方法を簡単に紹介すると、5年ごとに行われる国勢調査によって、市町村ごとに5歳階級別の生残率、純移動率を算出して将来人口を推計します。例えば2015年の男性の10～14歳は5年後の15～19歳になりますが、過去のデータによると21.3％減少します。純移動率は－21.3%になります。生残率は99.94%です。

これを計算式にすると、2737人（2015年の10～14歳男性の実数）×99.94%（生残率）×78.7%（100％－純移動率21.3%）＝2152人（2020年の15～19歳男性の推計）　となります。

純移動率は、10代後半の進学や就職の世代でマイナスの値が高く、20～30代はＵターンによってプラスになります。それ以外の世代ではほとんど動きはありません。

【2035年、3人に1人が75歳以上に】

一方、生残率は年齢が高くなるにつれて低下します。2015年から2010年の推計では、男性は70～74歳で75～79歳になるのは87％（女性は94％）、さらに5歳上がれるのは80％（同90％）、さらに5歳上がれるのは67％（81％）、さらに5歳となると40％（51％）です。

こうしたデータをもとに気仙沼市の2045年までの推計がまとめられました。人口は30年で半減し、労働人口が3分の1、高齢化率は50％を超えるという結果は表の通りです。人口は半分になるのに、75歳以上の人口は2015年で1万1844人、2045年で1万1702人とほぼ変わりません。だから、人口に対する75歳以上の割合は18％から35％へ倍増します。今から7年後の2035年には30.7%（県平均は20.1%）に達する見込みで、気仙沼は3人に1人が後期高齢者の「超高齢化社会」となります。

【年間出生数は126人程度へ】

少子化はさらに深刻です。2015年の0～4歳は1783人でしたが、2045年には630人になる見通しです。出生数の年間平均は357人が126人になってしまいます。

出生数は15～49歳の女性と0～4歳の子どもの割合をデータ化した「子ども女性比」などで予想します。2020年の気仙沼の子ども女性比は18.22%で、県平均の18.98%と遜色ありません。問題は、若い女性が減っていくことです。

2045年以降も前述した計算式を用いて同じように推計することができます。このままのペースだと、2045年に0～4歳の630人は30年後、25～29歳で307人になります。単純計算で今から60年後の年間出生数は40～50人ほどです。この流れを変えなければ、未来も変わらないのです。

移動がないと仮定した「封鎖人口」は2045年で4万3731人ですから、人口流出だけでなく少子化の問題が深刻なことが分かります。

【十代後半の流出率は県内ワースト2】

2010年の国勢調査をもとに2013年に公表された前回の将来推計人口で、気仙沼市の2040年の人口は4万2656人でした。それが今回の推計では3万8305人に下方修正されました。その原因は純移動率のデータの違いです。前回は被災地に配慮して、復興によって人口流出が改善されることを前提に推計しました。例えば2035年の15～19歳が2045年の20～24歳になる純移動率だと、前回は－21.0%と控えめでしたが、今回は－45.5%と現実的なデータとなっています。

同じ条件で仙台は＋15.8%です。県内で最も減少率が高いのは七ヶ宿町（2040年の人口909人）の－60.1％で、気仙沼はワースト2でした。南三陸町は－39.97%、隣の岩手県陸前高田市は－48.2%です。全国レベルで見ると、－80％という村もありますが、気仙沼は島根県の離島にある隠岐の島町（－45.25%）より減少率が高くなっています。