避難道整備のその後【気仙沼市】

気仙沼市内の津波避難道については、気仙沼復興レポート㉚過去のブログで紹介してきましたが、その後の状況を報告します。

【3万メートルの6割で着工済み】

気仙沼市議会東日本大震災調査特別委員会で配布された資料によると、現在の整備計画は68路線3万246mです。整備が終わったのは9.7%の2929mで、57.6%の1万7440mは工事中です。

路線ごとの状況は下表の通りです。工事中の路線については完了予定が示されていますが、未発注の路線は発注予定年度の提示にとどまっています。遅くても復興期間の平成32年度末までに終わらせることが目標です。

【復旧・復興事業を優先】

避難道としてまとめた68路線は、沿岸から高台に向かう路線です。このほか、災害復旧などの路線も多数あり、限られた人手の中で用地買収などの交渉や手続きに時間を要しています。復旧・復興事業の目途がつかないと、新たな市道整備に取り掛かれない実情となっています。

■市議会12月定例会一般質問(概要)

新たな市道整備に対する市の考えは、昨年12月の市議会定例会一般質問で議論しています。その内容をあらためて下記に記載します。

今川 11月に始まった市政懇談会では、市道整備に関する要望が多く、期待されていた住民参加のまちづくりへ向けた議論の時間が少なくなってしまった。市は道路整備でも復旧・復興事業を優先すると宣言しているが、その意味とそうしなければならない状況については市民に十分伝わっていないからではないか。市道整備計画が未策定のまま新規事業化している路線もあり、道路整備の優先度を決めるルールを市民と共有することが必要だ。市民の関心が高い市道整備について、次の6点について市の考えを問う。

菅原市長 本市の道路改良率、舗装率が県内最低レベルにある原因分析については、大震災前は企業会計への基準繰り出しも抑制するなど、財政調整基金も不十分な財政状況であったことを背景に、地形上、急峻な個所の改良工事に多額の事業費を要して整備延長が伸びないこと、認定している市道のうち2.5m以下で利用状況が低い路線で、改良・舗装計画が立てられない路線も多く含まれていること、現道舗装や水路整備などに対する国庫補助メニューがなく、一般財源による施工のため、これまで事業着手や整備完了まで時間を要していることなどが挙げられる。なお、復旧・復興事業の進捗によって今後は一定程度、改良率、舗装率は上がるものと考えている。

道路整備要望への対応は、現在は復旧・復興事業を優先しており、要望個所については現地を確認したうえで、これまでの経緯や緊急度などを考慮して対応していくが、整備できるまで当面の間は適切な維持管理によって通行に支障のないよう努めていく。

菅原市長 復旧・復興事業で整備する270路線74㎞を優先しなければならない理由だが、未曾有の災害により、沿岸部を中心に生活・産業の再建に欠かすことのできないインフラの根幹ともいえる道路の復旧・復興に全力を傾注して5年以上の歳月を費やしてきた。道路の復旧・復興は復興創生期間として平成32年度まで時限も切られている。しかしながら、計画通りに事業を推進するためには、プロパー職員や任期付き職員、派遣職員など現在の配置ではまだまだ人員が不足している。復旧・復興のために全国から職員の派遣してもらっている中で、何を優先すべきかも考慮すべき点だ。一方、復旧・復興事業以外の道路についても市民サービスの著しい低下とならないように配慮しながら、必要性や優先度などを踏まえ、平成27年度に道路舗装7路線1.1㎞と側溝・水路1.3㎞の修繕工事を行った。

今川 270路線74㎞に災害復旧事業の92㎞分が含まれていないのはなぜか。

庄司・土木課長 270路線74㎞は拡幅や改良がメーンで、災害復旧は原形復旧が原則となっているからである。

今川 原形復旧とはいえ盛土かさ上げが必要な個所も多いので説明を工夫してほしい。震災前の気仙沼市は年間2~5㎞の道路改良がやっとだった。復旧・復興事業は本当にあと5年で終わるのか。実際に23年度予算でスタートした路線でも工事に入っていないものがある。全体の進行管理計画はあるのか。

庄司課長 32年度まで終わらせるように邁進している。

村上・建設部長 各路線は社会資本整備総合交付金や復興交付金など計画を提出してそれぞれ事業採択されている。市街地の特に被災地で行っている事業は工事着手が少ない。用地所得、物件補償の交渉に時間を要しているためだが、一定程度の延長が確保されれば工事を始めたい。全体で一気に工事に出す手法にはならない。

菅原市長 道路に限らず32年度まで本当に終わるのかという議論はどこかで出てくるので、許してもらわなければならないところが実際は出てくると思う。その中でも本市の道路については他の市町よりもしんどいと考えておかなければならない。まちの形状を考えると、ずいぶん抱えているランクにある。リサーチをして、理由がつく遅れと理由が付きにくい遅れがあるとすればそのことも意識しなければならない。個別の土地の買い取りができなかったということはなかなか理由になりにくいが、ほかの行政機関の遅れによってというのは言いやすい。そういうことも見ながら、きっちり10分の10でやっていかないと、本当の市道整備に影響してしまう。それぞれ計画はあるものの、見通しをきっちり確認していくようにしたい。

今川 市民には「復旧・復興事業が終わるまで新しい整備計画は待ってくれ」と言っていることになるので、進捗状況はしっかり情報発信してほしい。270路線74㎞のうち現在はどのくらい完成しているのか。

庄司課長 それぞれの事業担当課があるので、事業種ごとの進捗状況は押さえていないが、今後は状況を見て押さえていきたい。

菅原市長 復興事業のボリュームや進捗を言えば言うほど、「そっちばかりやるのか」ということも同時にある。そこは説明の仕方を工夫したい。実際のスケジュールは、我々が遂行するうえでも明確にしなければいけないし、実際にそういう時期に入っている。また、市道整備計画策定時において、優先する道路の評価の仕方についてはさまざま研究する必要がある。ものすごく精緻なものをつくればうまくいくというものではないし、あまりにあやふやではいけない。そこは議会とも相談が必要だと思う。しかし、市民から見ればある程度つっこんでクリアなものが必要だということは認識している。

菅原市長 平成27年12月定例会では「市道整備計画の策定に向けて作業を行っている」と答弁した。1市2町の合併に伴い、平成23年1月に新市建設計画及び新市基本計画並びに請願等を基に、23年度から28年度までの6年間を計画期間とした新市の第一次市道整備計画案と震災に係る復旧・復興事業による沿岸地域の道路整備計画との調整のことだった。しかしながら、本市の復興のためには、災害公営住宅や防災集団移転団地内の道路、市道災害復旧事業、各種復旧・復興に伴う道路整備に伴う道路整備、震災前からの継続事業など約270路線74㎞を優先しなければならず、本年2月定例会で「新たな市道整備計画は復旧・復興事業が完了した後を計画期間として策定する」と答弁した。

繰り返しとなるが、現在進めている整備に関して、平成32年度を目標として邁進していることから、新たな市道整備計画は復旧・復興による道路整備の進捗状況、公共施設等総合管理計画を踏まえ、財源や計画期間等について検討しながら策定したいと考えている。

菅原市長 復旧・復興事業以外の道路整備の優先度の考え方だが、市道整備計画策定までの期間については、震災前から継続事業で整備してきた道路、震災復興事業に関連して速やかに整備しなければならない道路の事業化や、これまで整備計画があった道路で、補助事業等で事業化された道路等を優先的に整備していく。

菅原市長 上越市で行っている道路整備評価制度は、地元要望が年々多様化し、多くの要望に対応しきれない状況から、整備の優先路線を定め、着実に課題解決に向けた取り組みを行うことを目的にした制度で、体系的に上越市総合計画や行政改革大綱、推進計画の下位に位置づけられた個別計画で財政計画とも整合されている計画であると伺っている。

上越市の評価にあたっては「整備優先路線の明確化と平準化」「新たな道路整備から既存道路の維持への転換」「地域に合った整備と規模の適正化」の3つの視点を踏まえている。また、対象路線ごとに事故発生頻度、通学路指定などの「緊急性」、整備コスト、ネットワーク、通行頻度などの「効率性」、改良や整備などの「必要性」の3つの項目で評価している。さらに、全市的な視点に配慮し、各地域均衡を図るための「地域分類」、新たな道路整備から既存道路の維持への転換を図るための「工種分類」による調整、「道路整備方針」「整備熟度」を共通項目として加点評価している。これらの評価に基づき、5年間の事業期間中に実施する道路を公表した。

本市においても、地元要望が年々多様化し、多くの要望に対して限りある財源と人材を活用しながら、計画的な取り組みを行うことが課題となっている。本市では道路整備評価制度について、本年度に策定する公共施設等総合管理計画や平成29年度に策定する第二次総合計画を基に、本市の施策や財政等の実情に合った道路整備評価制度や評価手法を上越市の制度などを参考にしながら、導入について検討したい。

菅原市長 新たな市道整備計画は、すでに策定した橋梁長寿命化修繕計画等と同様に、現在、策定作業を進めている公共施設等総合管理計画の個別施設計画として位置付ける予定だ。市道整備計画の策定に際しては、中期財政見通しの普通建設事業費を基本に据え、喫緊の課題や他の個別計画との調整を図りながら進めていく。

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