【観光で稼ぐ】気仙沼版DMOとクルーカードとは?

きょうから気仙沼クルーカードの入会申し込みが始まりました。気仙沼版DMOを推進する気仙沼観光推進機構、その事務局となる一般社団法人気仙沼地域戦略も誕生しましたが、それぞれの目的と役割を紹介します。

【100円で1ポイント付与】

気仙沼クルーカードは、「気仙沼の未来をつくる市民証」として気仙沼観光推進機構が発行します。気仙沼を船に見立て、乗組員証(クルーカード)にするという思いを込めました。加盟店で提示すると100円の買い物で1ポイントがもらえて、貯まったポイントは1ポイント1円として利用できます。ポイントの利用は市内の加盟店に限定されます。

加盟店は、今のところ市内の小売店や飲食店、宿泊施設など46店です。加盟店で申し込めばカードが即時発行され、専用のウエブサイトから申し込むこともできます。市民でも市民以外でも大丈夫です。

買い物客にとってはポイントがもらえるメリットがありますが、加盟店もポイント効果とPR効果によって売り上げが増えるメリットがあります。顧客情報(住所や生年月日、メールアドレスなど)を得ることもできるので、ダイレクトメールなどによる効果的な販促活動も行えるのです。

【店の負担は売り上げの3%+端末代】

ただし、加盟店にはポイント代として売り上げの1%だけでなく、システム利用料として売り上げの2%を負担しなければななりません。さらにカードを読み込むための端末の初期費用が1台当たり2万1600円と、利用料月3240円、レンタル代月2700円がかかります。例えば月100万円の売り上げがあれば、初期費用を除いて3万6千円ほどがお店の負担です。利益に対する負担を考えると、小さくはない負担のため、加盟するか悩んでいる店もあります。

初年度は実証実験なので、加盟店はモニター扱いにして端末の初期費用と利用料は気仙沼観光推進機構が全額支援します。その費用は気仙沼市からの補助金です。機構にはポイントカード導入実証事業として1500万円を市が支出しており、その内訳はホームページに250万円、情報漏洩防止90万円、営業活動120万円、2万枚のカード発行(1枚324円)などです。財源は復興予算から配分された復興基金です。

【DMOで稼げる観光地に】

なぜ、復興予算を投入してまでポイントカードを発行するのでしょう。それは、「観光で稼げる地域経営」を目指す気仙沼版DMOのためです。

DMOとは、Destination(目的地) Management(最適化管理)またはMarketing(顧客ニーズ調査)Organization(組織)の略です。国が地方創生で取り上げている取り組みで、「観光に地域経営の視点を取り入れるための組織をつくろう」ということだそうです。このDMO組織は全国で134団体登録されています。

気仙沼市も2015年度からDMOの構築に向けた調査に乗り出し、気仙沼観光推進機構の立ち上げ準備とポイントカードだけでなく、新たな観光メニューの開発などにも取り組んできました。「ば!ば!ば!の場」や「ちょいのぞき気仙沼」のように成果を上げているものもあります。地域で観光に取り組むスイスのツェルマットにも視察団を派遣しました。

【カードで観光マーケティング】

ポイントカードは、観光のマーケティングを一番の目的にしています。観光客にカードを持ってもらうことで、どこから来た人がどの施設に泊まって、どこで買い物したのか、その消費額も知ることができます。何を買ったかまでは分かりませんが、集まったデータを分析して、対策を練ることで、気仙沼はさらに魅力のある観光地になるのです。

データ収集のために必要なのが加盟店の数です。観光に関連する多くの施設でカードを利用できなければ、有益な情報を得ることはできません。そこで、モニター店として初期コストを負担することにしました。

もう一つ重要なのがカードの配布と利用です。たくさんの人に持ってもらうことで、さまざまなデータが得られるのです。利用者を増やすためには、加盟店を増やす必要があります。そこで加盟店を増やすために、観光客だけでなく市民にも積極的にカードを配布することにしました。市は公共施設でもカードを利用してポイントがもらえるようにすることを検討しています。

公共施設だけ、観光施設だけ、商店街だけでポイントカード発行している例はありますが、地域全体でデータ収集を目指すのは初めてです。

 

【期待される失効ポイントだが】

気仙沼クルーカードは、サイモンズという会社のカードを採用しました。この会社は「ポイントの失効益」と顧客データを地域に還元してくれます。有効期限が切れたポイントをカード会社の利益にするのではなく、気仙沼市に寄付してくれるのです。サイモンズによると、ポイントの失効率は4割ほどもあり、気仙沼観光推進機構では、その失効ポイントを組織の運営に充てようと考えました。ポイントの有効期限は翌年末までですので、今年のポイントが2018年12月末に失効し、初めて寄付にまわります。

観光推進機構にはポイントカード導入実証事業をはじめ、事務局体制の確立、観光客へのアンケート調査、観光商品の開発などで市から計3642万円を交付します。今のところ事業費はすべて市が負担しています。これをポイントの失効益で補うためには、カードで約100億円の買い物をしてもらわなければなりません。

市町村民経済計算によると、気仙沼市のサービス業の総生産は285億円(2014年度)ですから、ハードルはずいぶん高いのが現実です。ポイントの失効率を40%に設定して100億円という結果になりましたが、大手カード会社のポイント失効率は5%程度という情報もあり、失効ポイントを期待しすぎないことが大切なようです。(そもそも、100億円の売り上げがあると、カード会社に2億円のシステム利用料が流れるので、それ以上の売り上げ増などの成果が求められます)

気仙沼クルーカードは、市外にあるサイモンズの加盟店、インターネットでの買い物でもポイントが貯まります。自治体で先行導入した北海道鷹栖町では「ふるさとサポーターの会員証」として、市外の加盟店で買い物した失効ポイントを町に寄付する仕組みですが、会員1200人に対して失効ポイントは年間8000ポイント程度だそうです。鷹栖町では、町内にあった加盟店が「メリットがない」とすべて脱退してしまいました。北海道伊達市、青森県七戸町もサイモンズのポイントカードを導入してますが、いずれも失効ポイントは図書購入費など子どもたちのために使うことにしています。

地元購買も促進

観光データの収集、地元購買の促進を目的に始まったポイントカードですが、話題になることで加盟店の売り上げ増が期待されます。三陸道の延伸に伴い、市外への買い物客流出が心配される中、カードによる囲い込み効果も目的の一つなのです。しかし、売り上げ増だげが目的であれば、気仙沼市が事業費を全額負担する意味はありません。ポイントカードを発行する目的を整理して、観光客に利用してもらうためのPRに力を入れることが大切だと思っています。

ちなみに、気仙沼ファンクラブでは木札を会員証として配り、その会員証を持参すると5~10%の値引きサービスなどが受けられますが、あまり利用されていないそうです。観光客がわざわざ持って来たくなるカードにするには、たくさんの仕掛けが求められます。

【DMOの成功モデルへ絶賛の声】

気仙沼観光推進機構は、気仙沼市、気仙沼観光コンベンション協会、気仙沼商工会議所、本吉唐桑商工会、気仙沼地域戦略、宮城県気仙沼地方振興事務所、気仙沼漁協、県漁協気仙沼総合支所、気仙沼信用金庫、気仙沼市商店街連合会、気仙沼市物産振興協会、本吉町物産振興協会で構成し、菅原茂市長が代表を務めます。

機構は観光戦略の意思決定の場であり、気仙沼観光コンベンション協会は誘客営業や受入案内、気仙沼地域戦略はデータベースの構築と分析などを担います。DMOの実行部隊となる気仙沼地域戦略が自立できれば、「観光で稼げる地域」が実現したことになるのではないだしょうか。

24日の機構設立総会では、観光の専門家が「DMOの成功モデルになる」とことごとく絶賛しており、あまり心配しなくても大丈夫のようです。人材育成の成果も現れ始めています。しかし、ポイントカードは手段の一つであって目的ではありません。データ分析で判明する課題への対応など、「稼げる観光」を実現するためには、観光に対する市の公費負担の覚悟が問われることになりそうです。

【マーケティングレポートを公開】

ポイントカードによるマーケティングに先行して、観光客や観光施設へのアンケート調査をもとに気仙沼観光マーケティングレポートを作成しています。レポートは市のホームページで公開されていますが、宿泊客の復興関係者の割合、観光客がどこから来たのか、土産や飲食の平均使用額、観光客のリピート率が分かります。

このレポートだけでも十分な内容ですが、ポイントカードの利用データ分析による成果が期待されています。

【マイナンバー活用の動きも】

総務省はマイナンバーカードを活用した地域経済好循環システムの構築を目指しています。自治体が発行する図書館や体育館などの利用者カードを1枚にまとめ、子育て支援やボランティアなどのポイントを付与できるようにするとともに、大手カード会社のポイントを地域経済応援ポイントとして導入する仕組みを検討しています。詳しくは総務省のホームページをご覧ください。

まさに気仙沼市が目指そうとしている仕組みであり、国の動きも見逃せません。DMOは観光を切り口にスタートしましたが、地域経営そのものに広げていくためには、市役所側の縦割り行政を解消することが必要です。

 

 

 

 

 

 

 

2 Comments

  1. kさん

    正直、頭でっかちの方々の机上の空論ではないでしょうか?
    そもそも、加盟店側が受けるメリットが少なければ、加盟する店もなかなか増えない、せっかくクルーカードを持っていても使える店が少ないとなれば、北海道の二の舞です。
    震災から、外に目を向ける人が増えたことはいいけれど、実際に加盟する店が負担する3%って、消費税の値上がりを前にして、かなりでかい負担ですよ。
    実際、既に加盟している市内でも名の知れたオーナーさんも、「非常に不満ではあるし、飲食店へのゴリ押しとわかってはいるけれどつきあいで断れなかった」と嘆いていました。
    協力はしたいけれど、本当にこれって、正しいんですか?誰か都会の方に地方が騙されて搾取されてませんか??って、思います。
    どうも、納得いきません。

    Reply
  2. 今川 悟 (Post author)

    コメントありがとうございます。
    今月中に市議会産業経済常任委員会で実績報告を受ける予定ですので、最新の情報を報告できると思います。
    地域経済が低迷する中、何かしなければならないという思いで始まった事業ですが、ご指摘のような心配もあります。
    このまま続けていけば、市民の税金を投入する可能性もありますので、最初の目的だった観光客の購買データがどこまで得られるのか、加盟店の売れ上げアップにつながっているのか、しっかりチェックしていきたいと思います。

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