防潮堤への市長の思いとは?チェック表を公開へ【一般質問の報告】

気仙沼市議会の定例会で2月28日、一般質問をしましたので報告します。

継続しているテーマが多く、目新しい成果はありませんでしたが、私的には十分な議論ができたと自己評価しています。

防潮堤問題については、箇所ごとに防潮堤の必要性などをまとめたチェック表を公表することになりました。工事の発注前に気仙沼市ホームページに公開します。これにより、たくさんの目で計画をチェックすることができ、後世にも説明できます。

レベル1津波の堤防高を巡る専門家の発言を通して、防潮堤に対する菅原市長の思いを聞き出すこともできました。市長だって真剣に悩みながら計画を進めていることを理解してほしいです。具体的な箇所を挙げての議論もしましたので、関心のある方はじっくり読み解いてください。

このほか、復興予算で整備する施設の管理、都市計画税の課税区域見直し、保育施設の在り方についても今後につながる議論ができました。さらに議論を深めるため、今回の質疑を急いで整理しました。PDFデータはこちらです⇒一般質問要旨2017.2.28

今川悟 一般質問の概要 2017.2.28

1.防潮堤計画の課題について

気仙沼市が計画している防潮堤は、新年度に次々と着工していく見込みだ。最終決断が求められる中、後世に疑問を残さないため、これまでの一般質問等で指摘してきた次の3点について市の考えを確認する。

【問1海岸ごとに防潮堤の必要性などをまとめたチェック表について、平成27年12月の一般質問で「将来にわたりチェック表として活用できるものを整理していきたい」と答弁した。その後、産業経済常任委員会に地区別調書として一部が示されたが、後から異論が出ないよう、工事発注前に市民へ向けてチェック表を公開することが必要だ。

◆菅原市長 海岸ごとのチェック表は、防潮堤計画箇所で地区別調書として早い段階から作成してきたが、時間の経過とともに地域の復興に変化が見られ、内容に差異が生じている箇所が見られる。防潮堤の設計が固まり、位置や構造が確定して発注準備が整った箇所から最新の地域の状況に合わせて修正している。

これまで防潮堤計画の地元説明会では、地区別調書の修正項目も含め、地域ごとに守るべき施設や防潮堤の必要性について説明し、同意を得ており、産業経済常任委員会へも工事発注予定箇所の説明として、それらを集約した地区別調書を示してきた。なお、地区別調書についてはすでに発注済みのものと合わせ、今後は発注前に逐次ホームページに上げていく。

◆今川 委員会に配布された地区別調書には事業費概算や防護面積、堤防高を決めた津波の記載がないので加えてほしい。宮城県はホームページに説明会資料とともに説明会の概要についても掲載しており、気仙沼市でも説明や質疑の概要などを公表してほしい。

◆村上・水産基盤整備課長 地区別調書の内容は指摘の部分も踏まえて再検討してから公表したい。説明会の後の報告書があるので、今後は説明会の資料と併せて添付するように努めたい。

【問2レベル1津波に対応した防潮堤整備の方針を決めた、中央防災会議の「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」の河田恵昭座長の発言を昨年2月の質疑で取り上げた。明治三陸地震津波をレベル1津波の対象としたことに、新聞インタビューで河田座長が「自治体が誤解か曲解をしたようだ。明治三陸は特別なケースで、モデルにすること自体が間違いだ」とコメントしたことに対し、市は「防潮堤整備を進める上できちんと整理しておく必要がある。現在、宮城県の見解を求めているが、今のところ十分な返答がない」と答弁した。その後、この発言についてどのように整理したのか。

◆菅原市長 河田座長の発言については、市としても整理が必要なことから宮城県の見解を求めた。県沿岸における海岸堤防高設定の設計対象津波は、地域海岸ごとに過去に発生した津波の実績高さ及びシミュレーションによって求めた津波高さを収集したうえで、限られたデータの中で津波の発生年と高さを整理し、原則として一定程度(数十年から百数十年の一度程度)内に到着すると想定される津波の集合を設計津波の水位設定のための対象津波群として選定した。明治三陸地震津波についても、津波高から過去の最大クラスの津波である貞観地震津波や今次津波と一線を画し、レベル1津波群に分類し、海岸保全施設の整備対象津波としている考え方が県から示された。これは中央防災会議の専門会議の専門調査会の中間報告を踏まえた国の通知に基づく適切な設定であるとしている。県内では、このような県の方針に基づき、県主催の宮城県沿岸域現地連絡調整会議で示された高さを基に各海岸管理者が防潮堤整備を進めており、本市においても同様に対応している。

◆今川 今月21日の毎日新聞に再び河田さんのインタビューが掲載された。「レベル1の最高値で要塞都市を造れとは言っていない」「復興事業はそこに住む人たちに以前より良い生活をしてもらうためにする。防災だけのために町をつくっているのではない。その認識が行政には欠けている。国が認めたらなんでもいいって発想では意識が低すぎる」と発言している。この記事に対する感想は。

◆菅原市長 市でもチェックした。河田先生はいろいろ説明する方なので、要塞都市とか、防災だけのために町をつくっているのではないかとか、少し行き過ぎた発言もある。前回の明治三陸を対象にしたつもりはないという話と、今回の毎日新聞の発言は少し違っている。今回の発言は実は政府見解だと思う。防潮堤の高さをレベル1でやってくださいと政府は決めていないということを政府はずっと言っている。それは政府高官も言っているし、政務三役も言っている。しかしながら、実際的には各県で高さの設定の仕方は、この専門調査会の見解を受けて決めていかなければならなかった。

政府も河田先生も「住民の皆さんと話して決めればいい」と言いながら、それでは実際に海岸管理者にとって「この浜はレベル1×0.9にしようか。この浜は0.3でいい。この浜は1.2にしよう」ということが実際の運用でできるかというと、非常に難しいというのが結論だと思う。その結果として、宮城県や気仙沼市だけではなく、岩手県を含めてレベル1もしくは原形復旧、もしくは造らないという選択しかしていない。そういう運用しかできないというのが私たち現場の考え方だ。そのことは国に対しては言っている。いろんな混乱を招くことがあるので、国の皆さんも発言には気を付けてもらいたい。自分の立場ではこうだということでは無責任だという思いが私にはある。

河田先生の発言はレベル1の設定について言及しており、最も保守的に危険を見積もったうえでやることが良かったのかという提言については、私も当初から2011年の9月に宮城県の設定高を見たときに「これはえらいことになるな」「いろんな意味で建前は守りつつ様々な妥協をしない限り、市民に受け入れられないのではないか」と思ってきたし、実際そうなっている。県を中心にまだまだ合意に至らないところ、見通せないところがある。そういう意味で宮城県において明治三陸を基本とすることが良かったのか、0.8でもいいとか幅を持っても良かったのかという考え方もあるが、当時、震災直後で大勢の方が亡くなった中では、最も保守的な安全面を考えたということも一つの道理だと思っている。

いずれにしても、先ほど述べた県主催の会議に気仙沼市も呼ばれているが、オブザーバー参加のため、海岸管理者でありながら発言は認められなかった。レベル1は一つの理論ではあるので、私たちはそのことをベースに最大限さまざまな事情に考慮すること、また、前提を変えることができるのであれば防潮堤の高さを低くしていくことをこれからも可能な限り考えていきたい。

【問3市管理漁港で計画しているレベル1津波対応の防潮堤について、27年12月の一般質問で人家の孤立を防ぐために整備する4カ所、地域振興を目的とした1カ所が示された。国や県の指針では「住民の生命と財産の保護、地域経済活動の安定化」をレベル1津波に対応した防潮堤の整備要件としている。救援や復旧、地域経済への影響から幹線道路を守ることはまだ理解できるが、明治三陸級の津波から数軒の家の孤立を防ぐためだけの整備、地域振興を目的とした整備には慎重な議論が必要だ。災害危険区域内では新たな住宅建設が制限されるため、いずれは何のために整備したか分からなくなる恐れもある。孤立を防ぐために整備する防潮堤、地域振興のための防潮堤について、公費投入に理解が得られるよう市の考え方を示してほしい。

菅原市長 孤立防止や地域振興のための防潮堤整備は、今次津波を経験したことで、地域によっては津波に対する考え方に大きな違いがあるのが現状で、孤立による不安感や恐怖感の払拭、さらには防潮堤と併せた地域振興を期待する地域もある。本市としては地域の実情を踏まえて防潮堤計画を進めてきた。しかし、議員の指摘通り、時間の経過とともに守るべき対象としての考え方にも変化が見られ、このような箇所での防潮堤建設に慎重な意見もあることから、市民からの理解が得られるように必要性や地域事情をさらに整理し、今後の防潮堤計画を進めていく。なお、その際、防潮堤を整備しないことによって想定される浸水区域が広がり、津波に対する危険度が増すとともに、将来的に土地利用に制限が加えられるとの認識も市民と共有しておく必要があると考えている。

◆今川 孤立防止のために整備するのは唐桑町の館、滝浜、宿浦、そして鶴ケ浦東部で、地域振興のための防潮堤は本吉町の前浜という説明だった。現場を調べてみたが、孤立の定義が分からない。レベル1津波が襲来した後に集落道を車で走行できなくなることが孤立なのか、高台へ歩けるだけの通路が別にあってもダメなのか。

◆村上・水産基盤整備課長 孤立について市としては、緊急時に生活がどういう風になるか、地元でどう考えているか重視して協議してきた。基本的には車での避難を考えている。

◆今川 レベル1津波より低いところに人家がないので、人家が被災しないことを前提にすると、津波襲来後の話なので避難というよりも生活のことだと思う。河田さんの発言にもあるように、レベル1津波に明治三陸を入れることでも過大だと指摘される中、生命や財産ではなく、津波直後に車が走行するための防潮堤整備は疑問がある。復興予算は被災地に優しく手配されたが、それは地元自治体でチェックするという信頼関係のもとで成り立っている。菅原市長の考えを聞きたい。

◆菅原市長 孤立については議員が指摘する通り、専門調査会のレベル1、レベル2の表示には出てこない。レベル1は命も財産も守る、レベル2は多重防御で命を守るという以上のことは出てこない。しかし、それだけで防潮堤の選択をできるほど簡単なことではない。場所によって孤立の意味が違ってくる。整理した方がいいということはよく分かるが、例えば市庁舎も津波によって孤立した。車の出入りはできなくなったが、線路を歩けば古町にも鹿折にも行けたという事実はあっても、これから津波地域づくり法を前提に庁舎の話をするときに、その問題は避けて通れないという事情もある。そういう意味でケースバイケースと思う。レベル1を基準とする以上、いろんな妥協みたいな解釈がないと全地域におさまっていかないということをはらんでいる。そのことがいま如実に出ている。河田先生や国の考え方からいうと、住民合意が一番大切ということも現実としてある。その中で基本的な基準を持つことは当然だが、100%完全にということはどこまでできるか、読みよう、取りよう、地域の皆さんの思い、将来の可能性も含めて判断をせざるを得ない。それが2年前と今とで多少違っていて、2年前に遡ってやり直すことが現実的かということもある。その中で、私たちはきょう、こういう議論をしたということを、すごく大きなこととして、その箇所箇所でそのときのベストを尽くして必要があると思っている。

◆今川 私も住民合意をできるだけ議会で覆したくないという思いはある。ただし、その住民合意がどれだけ正しい情報、十分な情報のもとで判断したのかということには若干疑問が残る。一つだけ例を示すが、今月11日に滝浜漁港の防潮堤説明会を傍聴してきた。地域は大筋で建設に合意したが、元々は意見が割れた地区だった。地元の中井交友会が25年9月に行ったアンケートでは、賛成46%、反対27%、どちらでもいい25%という結果が出て、最終的には「早く造ってほしい」ということで26年6月に気仙沼市へ要望した。問題なのは、このアンケートのために用意した資料が、「レベル1津波のうち最大の明治三陸地震津波を対象に整備を計画している」と説明していることだ。海抜11.3mの防潮堤で、明治三陸地震津波を完全に防げるという内容の説明資料を添付してアンケートを行っている。ところが、宮城県の堤防高設定の根拠を示す資料では、この浜の明治三陸津波のシミュレーションが14.5mになったため、明治三陸津波の計算値をレベル2津波に分類し、荒谷前の明治三陸津波のシミュレーション結果によって堤防高を決めている。つまり、シミュレーション上では、新しい防潮堤を整備してもこの浜では明治三陸津波を防げないことになっている。さらに、災害危険区域は無堤で津波シミュレーションをかけて設定した。レベル1の防潮堤を造れば、災害危険区域は変わる。そういう情報は住民に説明したのか。前回の説明会でそういう話はなかった。

◆村上・水産基盤整備課長 滝浜は前回の説明会でその部分も含めて説明して同意を得て概略設計を進めてきた。津波の設定はたしかに唐桑半島東部については明治三陸津波の計算値が今次津波と同様の結果が出たので外すことを可能にした。昭和三陸津波と比較した場合、明治三陸津波の荒谷前海岸を採用してユニットを形成した。そういう部分があるので、明治三陸津波を使用してユニットの高さを決定していると解釈している。

◆今川 行政的にそういう解釈でいいのかもしれないが、そういう情報をしっかり説明しているかが大切だ。シミュレーション上は明治三陸津波がレベル1防潮堤を越えてくるということは説明したのか。

◆村上・水産基盤整備課長 そのような設定があったことは当初分からず、ユニットとして説明してきた。今後、その部分も含めて地元に説明して理解を得たいと思う。ただし、明治三陸津波ではないということも違う見解なので、そこはあらためて説明していきたい。

◆菅原市長 23年9月に県から示されたときにはユニット内の詳しい事情が書かれたペーパーは市に来ていない。あとから出てきて、根掘り葉掘り確認し、例えば神止浜とか鶴ケ浦で堤防高を下げられるチャンスを見つけた。県には早く公表するように求めた。そういう時間差があって説明が不十分になったと思うが、防潮堤を造るときに、本当に造っていいのだろうか、造るにしても100%正しいことなのか、科学的に十分なのかという疑問は常に持っている。そういう結果がこの地区に如実に表れている。住民の皆さんが興味を示す、示さないにかかわらず、後でもいいから示しておく必要があると思う。そういうことが、将来にわたって検証できるようにという話だと思う。

 滝浜について私には別な思いがある。滝浜という住所はなく欠浜である。急に下がっている地形なので、津波が来ない家がものすごく多いという中でアンケートを実施してどういう結果が出るのかということは非常に興味深かった。もちろん津波に遠いところだからといって浜に船を持っているかもしれず、いろいろと生活や仕事の形態があって一概にはいえないが、住民の合意形成の取り方をどうしたらいいのかという難しいことを勉強されられた浜でもある。道路を上げればいいという話もあった。利用頻度を含めて難しい中で、住民の皆さんから合意という話が出た。いずれにしても、滝浜に限らず、後から出た情報でも明確にしておくべきだということを私たちの仕事の責務として指示したい。

 

2.復興事業で整備する公共施設の運営主体について

復興事業で整備する公共施設の中に、運営主体が不明確なまま建設計画が先行している事例が目立つ。そうした中、復旧事業で4月にオープンする市民総合福祉センター「やすらぎ」は、指定管理者が決まらず市の直営で対応することになった。本吉と唐桑の三陸道パーキングに併設する地場産品販売施設、新設の大島ウエルカムターミナル、内湾で再建する勤労青少年ホームとエースポート、岩井崎プロムナードセンターを復旧する形で震災遺構に併設する伝承施設など、他の施設にも同様の不安がある。今後の議論のため、次の2点について市の考えを伺う。

【問1前述した施設の整備計画と並行して、施設の運営主体についても一緒に検討すべきと考える。着工前には運営方法の方針が決まり、運営主体の目途もついていることが望ましいと思うが、地場産品販売施設、ウエルカムターミナル、勤労青少年ホームとエースポート、岩井崎プロムナードセンターについてそれぞれの現状と市の考えの説明を。

◆菅原市長 本吉と唐桑の三陸沿岸道路の防災施設に隣接する地場産品販売施設は、基本計画の策定業務を実施している。施設整備の検討と併せ、民間での運営を前提として地元の産業団体などとその手法を協議している。大島ウエルカムターミナルは整備計画の策定業務を実施しており、地域の方々との懇談会を立ち上げ、ワークショップ形式の作業部会を重ねながら、施設の機能、配置、運営手法に至るまで、対話による計画の具現化を図っているところだ。この中で、施設の運営を担う民間の組織・団体についても議論している。勤労青少年ホーム、エースポートは南町海岸地区に合築によって整備することとし、現在、建築の実施設計を進めている。今後、想定される利用形態などを精査し、運営手法の検討を進めていく。岩井崎プロムナードセンターは現在、基本設計業務を実施中で、来年度は実施設計と併せ、整備検討会議などで運営手法の検討を行う予定だ。

いずれの施設においても、市の負担を軽減し、安定的かつ発展的に運営していくためには、適切な運営主体の選定が望ましく、運営主体が確実に見込まれることが施設整備の前提だと考えている。また、計画から設計へ進む段階では、運営主体の候補者も交えて協議することが適切であり、各施設ともその選定を急いでいく。

【問2新たな役割を持つ公共施設の整備に当たっては、整備費に復興予算が充当されるとはいえ、運営や維持管理に関して市が負担するトータルコストについて、長期的な視点とその情報の公開が必要だ。そのためにも、それぞれの施設の役割や使命、施策の中の位置づけを明確にすることが求められる。

菅原市長 本吉・唐桑の地場産品販売施設は新市基本計画、震災復興計画に位置付けられ、本市の南北の玄関口として、地場特産品の販売や観光情報の発信などの役割を担いながら、道路利用者の日常的ニーズにも対応できる施設を目指している。大島ウエルカムターミナルは、震災復興計画に位置付けられ、架橋後の大島地区のにぎわい再生、観光振興、地域振興の中核施設として、物販施設や観光・交流施設、駐車場などの整備を図る。勤労青少年ホームとエースポートは、勤労青少年のレクリエーションやサークル活動の機会提供と併せ、まち大学構想の拠点として市民が集い活動する各種スペースの確保や、気仙沼の海の玄関口として、観光客が立ち寄れる機能を有する施設を計画している。岩井崎プロムナードセンターは、震災復興計画に位置付けられ、震災遺構である旧気仙沼向洋高校と一体的な利用を行うことで、東日本大震災の被害などの伝承、防災・減災対策の重要性などを伝える教育の場と、波路上地区全体を震災遺構ととらえる周遊の出発点として、観光も融合させた拠点施設としての整備を検討している。

これらの公共施設は、施設整備の財源に復興交付金などの活用を予定しているが、維持管理の経費についても十分に精査し、効果的かつ効率的な運営を図り、市の負担軽減に努めていかなければならないと考えている。本市としては、運営主体の選定と併せて、運営に係る経費とその負担方法についても、後年の大きな負担とならないように今後詳細に検討する。

◆今川 ほとんどの施設は指定管理者制度の導入を考えていると思うが、指定管理による気仙沼市の施設は65施設あり、27年度で計1億7000万円の指定管理料を支払っている。指定管理制度が始まって10年以上経ち、各市町でガイドラインの策定や見直しが進んでおり、掛川市のように「管理」から「経営」に発想を転換し、指定管理期間を最大10年にしたケースもあるので、ぜひ参考にしてほしい。情報収集、制度の改善のためには担当部署が必要だ。どこが統括するのか。

◆菅原市長 私は原点に立ち返るべきだと思う。指定管理は分かりにくく、いまだに正確な定義がないと思う。だから指定管理の決算で施設ごとに違う話になってしまう。もともとその施設はなぜ必要なのか。銀座の真ん中にウエルカムターミナルはない。それは民間事業として成り立つからだ。しかし区役所はある。施設の性質や必要性からどういう管理が望ましいのか、どこまで行政が負担するべきかがあって、それでどういう管理が望ましいのかという順番だと思う。指定管理の応用編という前の、ものの考え方をきちんとしていくことが必要だと思っている。そういうことが「運営」から「経営」へということで、最初から公設民営というのはそういう目的であり、新しいことではないと思う。根本から筋立てて物事を判断していくが本市としてはする必要があると思うので、担当はそこを取り立てて中心にしているところがないので、基本的には全体として関わるのは企画だと思う。庁内で相談したい。

 

3.一般質問等で指摘した課題のその後について

新年度に向けて、これまでの一般質問や代表質問で指摘した課題3点について、その後の対応状況を伺う。

【問1都市計画税の課税エリア見直しについて、昨年6月の定例会で「平成29年12月に条例改正を提案し、30年度から実施したい」「都市計画区域の用途地域を基本とした設定が現段階では妥当と考えている」と答弁した。現在の検討状況と今後のスケジュールは。

◆菅原市長 昨年6月の市議会定例会で答弁した通り、都市計画区域の用途地域を基本とした設定という方針で進めることで変更はない。課税区域の見直しに関するスケジュールは、答弁で「平成28年度末までに策定予定の次期総合計画の内容に照らし、速やかに都市計画税条例の改正を提案する」としていた。次期総合計画の完成時期を29年度末に変更したが、当初の方針に従って都市計画税の課税区域を変更することにした。具体的には29年12月に都市計画税条例の改正を提案し、30年度から課税区域を変更する予定としている。

◆今川 12月の条例提案へ向けた市民説明会などの手続きはどうなるのか。

◆小野寺・税務課長 29年度に入ったら早速作業に移る予定にしている。条例改正は庁内合意を得た後に12月定例会に提案したい。周知は市の広報などで行うことを考えている。ただし、今回で変更になる人たちは都市計画税がかからなくなることがほとんどだが、稀に課税になるケースも想定される。わずか数筆ではあるが、その部分は個別に周知したい。

◆今川 市民と議論が必要になるのは、用途地域とは何かということだ。市の資料では「用途地域は皆さんが建物を新築、増改築する場合の用途や形態、構造などの制限を都市計画で定めるものです」と説明している。用途地域で都市計画税を使って事業をするということにはなっていない。実際、都市計画税は下水道事業の償還にほとんど充てられている。用途地域の見直しを含めてしっかり議論する必要がある。課税区域の変更と一緒に議論する考えはないか。

◆小野寺・税務課長 今回の方針は都市計画税の課税地域を用途地域にするということなので考えていないが、今後の課題として必要になるときは検討していきたい。

◆今川 段階的に進めるということと理解したい。まずは用途地域に課税区域を縮小し、その後、用途地域の見直しがあればそれとセットで課税区域も変更されるということになる。用途地域とほぼ一緒だった下水道の計画区域が大幅に縮小され、用途地域とは何だろうという疑問がある。これからも議論を続けたい。

【問2保育所や幼稚園について、行政と民間の役割分担の議論を再三求めてきたが、今年1月に「気仙沼市就学前児童の教育・保育施設連絡会議」が設置された。昨年2月の質問に、「市としての在り方がこうあるべきだという基本を持って議論に巻き込むようにしたい」「本当に議論するという姿勢で臨まないとうまくいかない」と答弁した。市としての基本的なあり方、議論する姿勢について説明を求める。

◆菅原市長 市の基本姿勢は、少子化や低年齢児保育ニーズの増加などに対応するにあたり、特に地域の施策バランスの確保や、民間施設だけでは確保しきれない保育ニーズへの対応などを、公営施設としての重点的役割と捉え、市全体として民間を含めた安心で安定した保育サービスを確保していくことを基本的な在り方と考えている。1月に設置した連絡会議には、市内全ての就学前児童の教育・保育施設に参画してもらい、今後、それぞれの事業の運営方針なども含め、相互に本音で議論していくことを確認した。

◆今川 本音で議論するために、市として議論に挑む姿勢を考えてほしい。市の方針がいまいち飲み込めない。ようするに、民間の事業を優先するということなのではないか。

◆吉川・保健福祉部長 これまでの市の考え方と少し変わったと捉えていただいて結構だと思う。子ども子育て支援制度に移行するにあたり、これまでは市としては必要な保育を市の責任においてしっかり確保するということが基本的な考え方だったが、民間の多様な事業主体が参入できる仕組みができたので、市全体の保育サービスの量と質、何よりも安全をしっかり確保することを市の責務とした。そういった中で施設を整備するという考え方については、民間ができるところは民間にお願いし、地域の施設バランスで市が受け持たなければならないところは市がしっかりやっていく。あるいは、民間だけではカバーできない例えば低年齢児の保育ニーズが急激に変化しているといった部分はしっかりと市が対応していくということに重点を置いて、市全体として安心で安定した保育サービスを確保していくという考え方になったということを連絡会議で説明し、互いにしっかり議論していくことを確認した。

◆今川 連絡会議の設置は評価したいが、気仙沼市は少子化が急激に進み、保育所再編計画もスケジュールが迫っている。ゆっくり議論する時間はない。連絡会議の中で情報交換という話があったが、まずは民間がやりたいことを表明してもらうことが大切だ。そのためには、市としての支援策や促進策が示されないと本音の話し合いは難しいのではないか。特に認定こども園の整備計画がある地区では、市として結論を出す時期の目標が必要ではないか。

◆吉川・保健福祉部長 再編整備計画の中期計画になる部分をしっかり視野に入れながら、議論を深めていくことが大切だと思っている。具体的にいつまでということはないが、議論を急ぐ必要もある。

【問3ふるさと納税で具体的な事業への応援を選択できる「ガバメントクラウドファンディング」について、昨年2月の質問に「コンペなどの事業提案方法を含め、導入に向けて積極的に検討します」と答弁した。旧気仙沼向洋高校の震災遺構としての保存、津波伝承施設の整備に適した仕組みと考えるが、その後の対応について説明を求める。

◆菅原市長 自治体が特定の目的のために広くインターネットで寄付を募るガバメントクラウドファンディングは、行政的に財源確保が難しい事業や、地域外の多くの人に関わってもらうことに価値がある事業などを実施する手法の一つであり、ふるさと納税制度による活用は有効と捉えている。その対象としては、整備が行われるものや実施されることが寄付者にとって分かりやすく、行政としても対応しやすいものと考える。

震災遺構の保存費用は、まずは復興事業として復興交付金を最大限活用することとしており、そのうえで他財源の必要性を検討することになる。その際、他財源と併用することにおける寄付者にとっての分かりにくさの解決などを含め、ガバメントクラウドファンディングも選択肢の一つとして検討したいと考えている。なお、具体的な事業を示して寄付を募ることは、当該事業へのサポーターを集めることにもつながるため、遺構整備に限らず他の事業でもその活用を検討していく。

◆今川 震災遺構やモニュメントの整備には、ふるさと納税で市外からの応援を求めるだけでなく、神戸や広島のように市民も巻き込んでほしい。

◆菅原市長 最もそういうことにふさわしいのが「龍の松」だと思っていた。金額的にもちょうどよかった。階上地区の方に声掛けしたが、具体的動きが出なかった。朽ちていくスピードの方が早かったので、残念ながら寄付でもらっていたお金を使った。住民が主体となって、寄付者にとっても価値のあることだと思う。今後もそういうあて先を探していきたい。例えば、震災復興祈念公園のモニュメント的なものに限って分かりやすくすることが必要だと思う。今後、市民の皆さんの中でそういうことが出てくれば、私たちも応援していきたい。

◆今川 市民や事業所が主体の募金活動をぜひ実現したいと思う。気仙沼市のふるさと納税には、使い道として「復興」という選択肢がない。宮古市は田老の観光ホテルを震災遺構として維持管理していくための支援を選択肢として用意し、2年で2000万円近くの寄付を集めた。まずは「復興」という選択肢を用意することから検討してほしい。

◆小野寺・震災復興企画課長 使い道は分野で示してきた。分野を示すこととプラスして、個別の事業を訴えて寄付を募る手法もある。これまでは自治体間競争の中で物産品を多くするとかポイント制にするとか「仕組み」の方にこだわってきたが、プラスの効果を考えられる「仕掛け」も今後考えていきたい。

 

 

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