黒潮町に学ぶ「カツオのまちづくり」【視察報告】

生鮮カツオの水揚げで、20年連続日本一達成が確実の気仙沼市。年1回の市議会産業経済常任委員会の行政視察は、カツオ一本釣り船の母港である高知県黒潮町を訪ねました。水揚げへの感謝を伝えるとともに、「高知県民のソウルフード」というカツオによるまちづくりも学んできました。

■カツオ一本釣り船の母港へ

日本一を続ける気仙沼市ですが、地元に生鮮カツオの漁船はなく、宮崎、高知、三重のカツオ一本釣り船に頼っています。近年は巻き網漁船の水揚げも加わり、三陸沖で漁獲されたカツオの水揚げ拠点となっています。

日本一とはいっても、カツオのまちとしての知名度はまだまだです。年々減り続けている資源への不安もあります。そこで、カツオで有名な高知県の中でも、特にカツオのまちづくりに力を入れている黒潮町を視察してきました。佐賀明神丸をはじめとする一本釣り船の母港でもあります。

黒潮町は四国の左下、四万十川のある四万十市の隣町です。気仙沼を朝6時に出発し、大船渡線、東北新幹線、羽田空港、高知空港、土讃線の特急などを乗り継いで黒潮町に到着したのは午後6時すぎ。そのまま黒潮町議会、町役場の方々との懇親会に参加しました。盃を空けて返杯する高知流の飲み方を教えてもらいながら、ざっくばらんな交流を楽しませてもらいました。

 

■南海トラフ地震の津波想定34メートル

黒潮町が気仙沼からの視察を歓迎してくれたのは、カツオ一本釣り船を通しての縁だけではありません。黒潮町は東日本大震災の1年後に発表された南海トラフ巨大地震の新想定によって、最大34メートルの津波が襲来すると予想されています。その対策のため、町議会は気仙沼市を3度も視察しています。「どうしたら津波から命を守れるのか」。議論は尽きませんでした。

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2日目は町役場で、町の取り組みの説明を受けました。津波想定が発表されたことで、住民には2つの諦めがあったそうです。一つは近くに高台がないので逃げても仕方がないという「避難放棄」、もう一つは津波リスクが高いまちを諦めるという反応です。町は高台への集団移転も検討しましたが、50世帯の移転だけで町の財政負担が8~10億円にもなることが分かり頓挫してしまいました。統計はなありませんが、リスクが高いまちから住民が転出してしまう「震災前過疎」が大きな問題となりました。

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■防災産業で地域おこし。町が缶詰製作所を設立!!

町から高知市までは2時間ほどかかり、気仙沼と同じように若者の流出が課題となっている地域です。推計では、2040年には町の人口が半減すると予測されています。町のためには、雇用を生み出す新たな産業が必要でした。

そこで、最悪の津波想定を逆手に取り、防災関連産業による町おこしを検討。災害時に向けた備蓄用の缶詰を開発・生産する「黒潮町缶詰製作所」を開設しました。工場の建設、運営に当たる第三セクターの設立など町の初期投資は約1億円です。気仙沼市などで聞き取り調査を行い、アレルギー対応の缶詰を開発しました。カツオ煮やブリ大根のほか、栗ぜんざい、四万十川のウナギなど、バラティーに富んだ商品を製造しています。

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まだ3年目のため、赤字経営ですが、着々と顧客を確保し、新たな工場の建設計画も進められています。黒潮町の備蓄として毎年1万8千食をストックし、3年の消費期限がきたものから入れ替えています。地元の食材にこだわっているため1缶400~500円と割高ですが、熊本地震への支援物資にもなりました。ふるさと納税の返礼品としても1割の人が選択しています。

■日本一高い津波避難タワー

南海トラフ地震による津波は、最短2分で到着する想定が注目されがちですが、50センチ以上の浸水までには20~30分の時間があるそうです。それでも、リアス式海岸と異なって沿岸に高台が少ないため、町内に5基の津波避難タワー(海抜18メートル程度)が整備されています。新たな整備しているタワーは地面からの高さが20メートルほどで、日本一高い津波避難タワーになります。

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下の写真は、カツオ一本釣り船の母港になっている佐賀漁港の近くにある津波避難タワーです。タワーの頂上から一望できる街並みが、津波で被害を受ける可能性があります。

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■カツオのたたきが一番人気。道の駅「なぶら」

佐賀漁港の近くにある道の駅「なぶら」は、2年半前にオープンしました。藁で焼いて見せるカツオのたたきをはじめ、カツオ丼、カツオバーガー、カツオコロッケ、カツオチップス、そしてカツオのキャラクターグッズなど、土産も飲食もカツオ一色です。

駅長はカツオ一本釣り船の船頭夫人。カツオのたたきは、脂ののったカツオを藁で焼くことにこだわり、焼き立てを提供しています。気仙沼では刺身が主流ですが、ひと手間加えることでストーリーができ、こだわりによる差別化もできるということを学びました。

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黒潮町は高知大学と連携してカツオの成分を調査し、疲労回復効果があることを明らかにしました。また、漁船の汽笛でスタートするカツオクロスカントリー、カツオのこいのぼり、戻りガツオ祭りなど、官民でカツオのまちづくりをPRしています。

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■船主を表敬訪問。これからのカツオ漁の課題は?

せっかくの機会ですので、カツオ一本釣り船の船主との意見交換を希望したところ、町役場で明神水産を紹介してもらいました。漁獲高日本一を続ける第83佐賀明神丸をはじめ、5隻の一本釣り船が所属し、カツオのたたきの加工、飲食店の展開、さらに藁を確保するため農業にまで進出した、6次化のお手本のような会社です。

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意見交換会には、火災に遭った第183佐賀明神丸の森下船頭も同席してくれました。船を復活させたいのですが、FRP(繊維強化プラスチック)で大きなカツオ船を造れる造船所が限られるために苦労しているそうです。カツオ船の多くが船齢20年前後で、丈夫なFRP船を確保しにくく、資源が減少していることで、高知県の一本釣り船は10年間で6隻減少して18隻になりました。しかも三陸沖に北上しない小型船が増えています。

森下さんは、被災地の人手不足を心配しながらも、魚市場の水揚げのスピード化を期待していました。漁期終盤に群れを探すことで、大切な戻りガツオの水揚げを少しでも続けるため、魚群探査への支援も提案されました。どのような方法が効果的で実現可能なのか、しっかり検討したいと思います。

3日目は農産物の「地産外商」に取り組む南国市でお話しを聞いて来ました。

 

 

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